縄跳びダイエットで「床を押す」と考えると、脚を意識するより跳びやすいのか。縄跳びの初心者と熟練者を比べた実験を中心に、立ち幅跳びの研究との違いを読む。注意を向ける場所、声かけを変えた直後の失敗、跳べる回数と減量効果の区別から、自分に合う練習の手がかりを探る。
公園で縄を広げ、最初のひと跳びを試す。「膝を伸ばして」と考えると、今度は手が止まる。「床を押す」と考えれば解決するのだろうか。答えは、試す手がかりにはなるが、縄跳びで誰にでも優れる合言葉ではない、である。縄跳びを直接調べた実験では、初心者と熟練者で声かけへの反応が違っていた。[14]
立ち幅跳びでは、脚そのものより跳ぶ先へ注意を向けた条件で、平均距離が長かった研究がある。[17] しかし、前へ遠く跳ぶことと、その場で縄を回し続けることは同じ課題ではない。「縄跳びダイエット」の検索で見つけた動きの工夫を、そのまま脂肪が落ちる証拠として読むこともできない。[14][17]
この記事では、動作を学び、生活の中で運動を続けるための注意の置き方を探す。体型にかかわらず、動きやすさや練習の手応えを自分の目標にしてよい。縄に引っかかるたびに膝への指示を増やす前に、言葉が役立つ場面と、減らした方がよさそうな場面を分けてみたい。[6][14]

「脚を動かす」と「床を押す」は注意の置き場所が違う
内的注意とは、膝や腕など自分の体の動きに注意を向けること。外的注意とは、その動きが外界にもたらす結果へ注意を向けることだ。立ち幅跳びの実験でいえば、「膝を速く伸ばす」が前者、「出発線からできるだけ遠くへ跳ぶ」が後者に当たる。何を動かすかと、何を達成するかの違いである。[17]
「床を押す」は、床に働きかける結果を思い浮かべるなら外的注意に近い。ただし、同じ言葉でも頭の中で膝の角度を点検しているなら、体の動きを細かく操作する注意になりうる。思春期の女子サッカー選手が映像を使って動きを練習した観察研究でも、外側の情報を見ている間に、内的注意と外的注意が混ざる回答があった。競技中の成長期の選手の結果なので、18〜39歳の女性の日常の縄跳びへの適用には、年齢と課題の違いを考える必要がある。[1]
つまり、声かけの単語だけで注意の中身を決めつけない方がよい。「床」と言ったから成功、「膝」と言ったから失敗という採点ではない。練習する本人が何を思い浮かべ、そのとき実際の動きがどうなったかが論点になる。縄跳びの実験も、注意を上半身と下半身、内側と外側に分けて比較している。[14]
たとえば「縄の動きを思い浮かべる」と「腕の動きを確かめる」は、どちらも縄を回す場面で使えそうな案だ。だが、それぞれを優れた指示として先に固定するのは早い。研究から持ち帰るべきなのは外側というラベルより、同じ運動でも注意の向け先を比較できる、という見方である。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
立ち幅跳びでは外側への注意に利点があった
参加者120人を内的注意と外的注意の群に分けた実験では、各自が休息を挟みながら立ち幅跳びを5回行った。外的注意の群は、出発線を越えてできるだけ遠くへ跳ぶことに集中した。内的注意の群は、膝をできるだけ速く伸ばすことに集中している。同じ跳躍でも、実行前に渡された言葉が違ったのである。[17]
平均距離は外的注意群で187.37cm、内的注意群で177.33cmだった。差は約10cmで、統計的にも有意だった。ただし、これは群の平均の比較であり、読者が声かけを変えると自動的に10cm伸びるという予測値ではない。測られたのは立ち幅跳びの距離である。[17]
別の研究では、男子大学生の競技者38人が、体への注意、体に近い外側への注意、さらに遠い目標への注意、普段どおりの注意という条件で跳んだ。外側への注意では体への注意や普段どおりの条件より遠く跳び、外側同士でも遠い目標の条件が近い目標を上回った。同じ参加者が各条件を経験する比較で得られた結果だ。男子の競技者での結果であり、18〜39歳の女性の縄跳びに同じ利点が生じるかは別に確かめる必要がある。[16]
競技者の比較は、条件の順序による偏りを抑えるようにしながら、各条件で2回ずつ、合計8回の跳躍を同じ測定機会に行っている。[16] これは、何週間も遠い目標を使って練習した結果とは区別される。注意を変えたときの即時の反応を知る実験として読むと、練習期間の長い試験との役割の違いが分かる。
この結果を縄跳びへ置き換えて「なるべく遠くを見る」と勧めることはできない。研究で遠くしたのは、立ち幅跳びという目的に沿う注意の目標である。縄跳びのその場での連続動作には、遠くへ移動するという目標がない。外的注意という共通語があっても、何を達成したい運動かを飛ばしてはいけない。[14][16]
平均の周りのばらつきも見ておきたい。立ち幅跳びの標準偏差は、外的注意群で42.66cm、内的注意群で40.97cmだった。標準偏差とは、測定値が平均の周りにどれくらい散らばっているかを表す数字である。群の平均の差が認められても、全員の記録が同じように動いたという意味にはならない。[17]
また、外的注意群が比較された相手は「膝を速く伸ばす」と指示された群だった。[17] そのため、この実験だけで、普段の自分の跳び方より外的注意が優れると決めることはできない。何もしない場合との比較なのか、別の指示との比較なのか。検索結果に載る「外的注意で記録向上」という短い一文を読むときも、この相手を確認したい。

縄跳びの直接研究は「外側なら有利」とならなかった
縄跳びに最も近い根拠は、初心者と熟練者を合わせた30人が、速く跳ぶ縄跳びを行った実験である。上半身への内的注意と外的注意、下半身への内的注意と外的注意を比較し、跳んだ回数と失敗を記録した。声かけを加えない基準の試行も置いている。単発の跳躍距離ではなく、縄を扱いながら続ける動作を測った点が重要だ。[14]
初心者では、下半身の外側へ注意を向けた最初の試行で、基準の試行より跳ぶ回数が少なく、失敗が多かった。一方、その低下は一時的なものだった。外側へ注意を向けるという方法にも、導入直後にはうまく動けない条件があったことになる。最初に引っかかっただけで、運動が不得意だという結論を自分に出す必要はない。[14]
条件ごとの累積回数と累積失敗を見ると、初心者は上半身への内的注意で下半身への内的注意より回数が多く失敗が少なかった。外的注意同士でも、上半身へ向けた条件が下半身へ向けた条件を同じ方向で上回った。内側か外側かだけでなく、上半身か下半身かという分け方も結果に関わっていたのである。[14]
ここから「初心者は手首だけ見ればよい」とまでは言えない。実験の上半身という区分を、特定の関節への唯一の指示へ狭めてしまうからだ。実生活で試すなら、脚の操作ばかりを追加せず、縄を回す側に注意を置く案も比較対象にする、という程度が適切である。床を押すことだけを正解にしない読み方だ。[14]
熟練者では、上半身の内的注意、上半身の外的注意、下半身の内的注意の各試行で、基準の試行より跳ぶ回数が少なかった。基準と各試行の失敗回数には差が認められず、条件間でも回数や失敗の差は認められなかった。新しい注意の指示が、すでにできている速さを下げる場面もあったのである。[14]
その場で跳べたことと、練習後の変化を分ける
声をかけた直後の跳躍と、練習を重ねて生じる変化は別の読みどころだ。身体活動はしているが跳躍トレーニングには未習熟の男子大学生36人を無作為に分けた試験では、同じ9週間の跳躍練習を、外的注意、内的注意、特定の注意指示なしで行わせた。練習内容をそろえ、注意の違いを比較している。対象が男子大学生なので、18〜39歳の女性にも同じ改善が生じるかは、この試験だけでは判断できない。[6]
外的注意群は、立ち幅跳びの距離と、反動をつけて上へ跳ぶ跳躍の高さで、ほかの群より改善が大きかった。ところが、台から降りて跳び返すドロップジャンプの高さでは、外的注意群がほかの群より優れる結果ではなかった。同じ研究内の跳躍でも、課題が変われば利点の現れ方が変わる。[6]
縄跳びのためのヒントとして読むときにも、この分岐を残したい。練習した運動と縄跳びの違いに加え、その場の成績と翌日以降の定着も分けて読む必要がある。何をいつ測った研究なのかを確認することで、言葉の効果を大きく見積もりすぎずに済む。[6][14]
さらに9週間の試験では、ドロップジャンプで地面に接している時間が、外的注意群では増え、内的注意群と指示なしの群では減っていた。外的注意群は地面から受ける鉛直方向の力も、反動を使う跳躍とドロップジャンプでほかの群より大きかった。[6] 高さ以外の指標を見ると、単に全部の動きが速くなったという説明でもない。
このため「動きが効率的になる」を「必ず接地が短くなる」と読み替えない方がよい。高さ、距離、接地の時間、縄の失敗回数では、評価しているものが異なる。[6][14] 今日の目的が縄を止めずに回すことなら、遠くへ跳ぶ記録の話だけで練習を評価しない、という整理ができる。
数字で読む注意と跳躍
縄跳びの比較は30人。初心者と熟練者で、指示への反応が異なった。[14]
立ち幅跳びの実験は120人。測定対象は跳躍距離である。[17]
外的注意群の平均は187.37cm。内的注意群は177.33cmだった。[17]
跳躍練習の無作為化試験は36人、9週間。跳び方によって結果が異なった。[6]
競技者38人の立ち幅跳びでは、近い外的目標より遠い外的目標で距離が長かった。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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