有酸素運動のクロストレーナーは逆回しでも同じ?膝の曲がりと負担を研究で読む

クロストレーナーを逆回しにすると、膝への負担も軽くなるのか。大学生年代の参加者を調べた研究から、膝の曲がりと内側への傾きが別々に変わる点を読む。傾斜や機器の違い、筋活動と有酸素運動の強度の見分け方を整理し、正逆回転で変わる動作と、筋肉の働きの捉え方を考える。

クロストレーナーのペダルをいつもと逆へ動かすと、膝の曲がり方も、太ももに感じる力も変わった気がする。回す向きを変えただけで、脚のどこがどう動くのだろうか。横から見る膝の曲がりと、正面から見る膝の傾きを分けると、研究の答えが見えてくる。

答えの芯は、逆回しで膝の動きは変わるが、膝の曲がりと内側への傾きが異なる方向に変わる、ということだ。大学生年代の参加者を調べた実験では、逆回しで膝の曲がる角度は減った一方、低い傾斜では膝が内側に入る角度が増えていた。同じ膝で、別の変化が同時に起きている。[19]

また、運動中の酸素消費や脂肪の利用を調べる研究と、関節の角度を調べる研究は、答えている問いが違う。逆回しの角度差だけから、心肺への刺激の大小は決められない。ここでは回す向きによる膝の動きに焦点を絞り、有酸素運動としての強度は別に読む。[18][19]

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逆回しの研究は、どんな機械で比べたのか

中心になるのは、大学生年代の24人がクロストレーナーを前向きと逆向きに回した比較実験である。傾斜は6°、12°、25°、35°。同じ参加者が方向と傾斜を変えて運動し、脚の関節が空間の中でどう動くかを立体的に測定した。体重を長期間追った試験でも、痛みの治療成績を比べた試験でもなく、その場の動作を比較した研究だ。大学生年代の参加者を対象にした結果なので、18〜39歳の女性全体に同じ角度差が生じるかは、別に確かめる必要がある。[19]

ここで見落としたくないのが機器の特徴である。使われたのは、左右のペダルの間隔を狭め、足の軌道が近づくように変更したクロストレーナーだった。研究の結果には、回す方向だけでなく、この足元の設計という条件も付いている。ジムにある機械を見て、研究と同じ条件だと決めつけないことが出発点になる。[19]

前回しと逆回しを比べるとき、つい「脚を前へ出すか、後ろへ出すか」だけを思い浮かべる。しかし実験では傾斜も組み合わせている。逆向きという言葉だけを残し、傾斜を切り落として読むと、どの場面で差があったかが分からなくなる。方向と傾斜は、研究結果を読むための組になっている。[19]

たとえば仕事帰りに初めて使う機械と、休日に通い慣れた場所の機械を比べたとする。そこで感じた違いをすべて逆回しのせいにする前に、機種、傾斜、足の位置が同じだったかを確認したい。これは効果を増やす裏技ではなく、自分の比較にどんな条件が混ざっているかを整理するための視点だ。実験が機器と傾斜を具体的に定めた意味もそこにある。[19][20]

既存記事「有酸素運動の自転車は逆にこいでもよい?回す方向と脚の働きを研究で読み解く」では自転車の回転方向を扱っている。こちらはクロストレーナー上の膝の角度を問う記事であり、自転車での話をそのまま答えにしない。

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膝は浅く曲がるが、内側への傾きは増えた

実験では、逆回しのほうが膝を最も深く曲げたときの角度が小さくなった。この傾向は調べたすべての傾斜で認められた。膝の屈曲とは、膝を曲げる動きのことだ。逆回しにすると最大の曲がり方が変わる、という点では、いつもの方向と同じ運動ではなかった。[19]

一方で、膝の外反も調べられている。ここでは膝が内側へ入る方向の角度として考えると読みやすい。逆回しで外反の最大角度が大きかったのは、傾斜6°と12°の条件である。前回しとの差はそれぞれ1.35°と2.41°だった。膝の曲がりが浅くなることと、内側への傾きが小さくなることは、この実験では同じ結果にならなかった。[19]

この違いは、横から撮った動作と正面から見た動作を思い浮かべると理解しやすい。横からは膝の曲げ伸ばしに目が向く。正面からは左右への位置関係に目が向く。研究は立体的に動作を測り、別々の方向の角度を報告している。「膝の角度」というひとつの言葉で扱うと、肝心の違いが消えてしまう。[19]

股関節にも変化があった。脚が外側へ開く股関節外転の最大角度は、逆回しのほうが傾斜6°で2.86°、12°で2.91°大きかった。膝だけが単独で向きを変えたわけではなく、股関節の動きも同時に変わっていたのである。膝の向きだけを自分で矯正しようとする前に、脚全体の動きを見る理由になる。[19]

差の数字は、そのまま危険の点数ではない。外反角度の差について示された効果量は、6°で0.31、12°で0.55だった。効果量とは差の大きさを共通の尺度で表す値であり、けがの起こる確率ではない。角度の平均差と効果量が分かっても、目の前の人が痛くなるかどうかを数値から読み取ることはできない。[19]

角度が変わったという発見は具体的だが、使い道を急がないほうがよい。膝を深く曲げたくないという関心と、膝が内側へ動くのを気にしているという関心では、注目する結果が異なる。「負担を減らしたい」という願いを、どんな動きを確認したいのかに言い直すと、同じ実験をより正確に読める。[19]

著者の推奨を、個人の治療手順にしない

研究の著者らは、変形性膝関節症や膝前面の痛みがある人には、低い傾斜での逆回しを推奨している。また、前回しへの変更や傾斜の増加は、大腿四頭筋の筋力向上に役立つ可能性があると論じている。大腿四頭筋は太ももの前側にある筋群だ。著者の提案は、膝の状態と運動の目的に応じて方向を選ぶというものだ。[19]

ただし、この推奨と、実際に測った結果は区別して受け取る必要がある。対象は大学生年代の参加者で、比較した中心は運動中の関節角度だった。ここから、膝に痛みのある人が逆回しを続ければ痛みが何割減る、といった治療の効果量は出せない。著者の臨床への提案を紹介することと、読者の治療方法を決めることは別である。[19]

低い傾斜で逆回しをすると外反角度が増えたという結果と、低い傾斜での逆回しを著者が勧めたという記述は、片方を隠さず一緒に読む。膝の曲がり方に注目するのか、内側への動きに注目するのかで、評価する内容が変わるからだ。ひとつの角度だけを選んで「安全と証明された」と言い切る読み方は避けたい。[19]

痛みがある日に、前回しと逆回しを我慢比べにする必要はない。病気や術後の状態に合う方向・傾斜については医師に相談する。検索結果の推奨を見つけたことを、自分の膝で試す許可の代わりにしない。研究の推奨には対象と測定項目が付いている、という点を持ち帰るほうが、日常では役に立つ。[19]

また、傾斜が大きい条件で外反角度の増加が同じ形で報告されなかったからといって、高い傾斜の安全性が確定することにはならない。実験で差が出た条件を示すことと、すべての条件に安全の順位を付けることは違う。方向を変える目的を決めずに、傾斜まで一緒に上げる根拠にはしない。[19]

研究では同じ参加者が異なる条件を行っている。そのため、前回しをした集団と逆回しをした集団の体格や経験がたまたま違った、という比較ではない。本人の中で方向を変えたときの差を見る設計だ。それでも、ある機器で得た平均的な角度差を、機種も使う人も違う場所へそのまま移すことはできない。条件をそろえる工夫と、結果を広げられる範囲は分けて考える。[19]

最大角度という指標にも目を向けたい。これは動作の途中で最も大きくなった角度を捉えており、運動中ずっと膝がその角度で止まっていたという意味ではない。逆回しで最大の外反角度が増えたと聞いて、運動の最初から最後まで同じ姿勢になると想像するのは正確ではない。動きの中のどの特徴を数字にしたのかを確かめるだけでも、結果の印象は変わる。[19]

また、膝の曲がりの減少は調べたすべての傾斜で報告されたが、外反と股関節外転の増加は低い傾斜の条件で示された。この条件ごとの違いを残して読むことが大切だ。家族や友人に伝えるときにも「逆回しで膝が楽になるらしい」より、「曲がり方と内側への動きが別々に変わる研究がある」と言うほうが、結果に近い説明になる。[19]

数字で読む逆回しと膝の動き

24人:方向と傾斜を比較した大学生年代の参加者数。長期の治療成績を示す人数ではない。[19]

6°・12°・25°・35°:実験で使われた傾斜。機器の段階表示と同じ意味だと決めつけない。[19]

1.35°:傾斜6°で、逆回しの膝外反の最大角度が前回しより大きかった平均差。[19]

2.41°:傾斜12°での膝外反の平均差。痛みの増加率を表す数字ではない。[19]

2.86°・2.91°:傾斜6°・12°における股関節外転の平均差。膝以外の動きも変化した。[19]

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