糖質制限中ならブラックコーヒーで血糖は気にしなくてよいのか。カフェイン入りとカフェイン除去を比べた試験から、糖を取った後の血糖とインスリン、砂糖やミルクを加えた条件、継続して飲む場合の違いを読む。短時間の反応を病気の予防効果へ広げず、普段の飲み方を考える記事である。
朝食のマグカップを前に、砂糖を入れなければ糖への反応も同じなのか、と迷う。これで食後の血糖の話は片づいた気がする。ところが、糖を取ったときの反応を調べた試験では、砂糖を入れないことと、カフェインの影響を除くことは同じではなかった。[5]
答えの芯は、無糖かどうかだけでは判断できない、である。カフェイン入りのコーヒーが糖への短時間の反応を悪化させた試験がある一方、カフェイン除去のコーヒーでも、水より血糖やインスリンが高くなった試験がある。さらに、飲んだ直後と、飲む習慣を続けた場合とでは結果が違う。[5][17][8][16]
ただし、ここで扱うのは主に糖を飲ませたり食事を組み合わせたりした試験だ。糖質制限中の人にそのまま当てはまる飲み方の処方箋ではない。既存記事「食欲を抑えるコーヒーはカフェイン次第?除いた飲料と空腹感の違いを研究で読む」には空腹感の話を譲り、こちらでは血糖とインスリンの動きを追う。

無糖でも、糖を取った後の反応は変わりうる
健康だが過体重の男性10人を対象とする無作為化二重盲検クロスオーバー試験では、インスタントのカフェイン除去コーヒーにカフェインを加え、ブドウ糖と一緒に飲んだ。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を替えて比較する試験の組み方である。コーヒーだけを飲んだ後の血糖を見た実験とは区別したい。男性の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、性別と体格の違いを踏まえて読む。[5]
試験の前半では、コーヒー粉末2、4、8 gに合わせてカフェインを100、200、400 mgと変え、いずれも水400 mLとブドウ糖50 gを使った。水を対照とすると、粉末2 gと4 gの条件で血糖反応が高かった。著者らは標準的な1回分に相当する条件でも糖代謝への影響が現れたとしたが、量に比例して影響が強くなる結果ではなかった。[5]
後半ではカフェインを100 mgに固定してコーヒー粉末だけを増やしたが、粉末量による血糖反応の違いはなかった。この組み方は「コーヒー成分を多くすればカフェインの影響を打ち消せるか」という読み方にも関わる。少なくともこの短期試験では、粉を増やした分だけ有利になるという結果は得られていない。[5]
この結果から、店頭で買うあらゆるコーヒーを同じ強さで評価することはできない。比較されたのは、成分量と糖の負荷を決めた飲料である。「ブラック」という注文だけでは、試験のカフェイン量や糖を取る条件までそろわない。レシートにはブラックと書けても、実験条件までは印字されない。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
血糖とインスリンは、同じ方向の点数ではない
糖質制限とインスリンを一緒に検索すると、インスリンが増えたかどうかだけで飲料を採点したくなる。だが、血糖とインスリンは別々に読む必要がある。健康な男性10人を調べた無作為化クロスオーバー試験では、カフェイン入りコーヒーを食事と一緒に取った後、次に糖を取った場面で、インスリン反応が大きいのに血糖反応も大きかった。健康な男性の試験であり、18〜39歳の女性でも同じ大きさの反応になるかは別途検証が必要だ。[10]
この試験では、カフェインを体重当たり5 mg含むコーヒー、カフェイン除去コーヒー、水のいずれかを、高い血糖反応を起こしやすいシリアルと一緒に取った。その3時間後にブドウ糖75 gを飲む検査を行った。最初の食事の後には、インスリン反応とインスリン感受性の指標に条件間の差がなかった。[10]
ところが次の糖負荷では、カフェイン入り条件のインスリン反応はカフェイン除去条件より49%、水より57%大きく、血糖反応も両条件より大きかった。インスリン感受性の指標にも低下が見られる。ここでいう感受性とは、インスリンの働きへの反応のしやすさとして読む指標である。分泌の多さと糖の処理の良好さは、別の評価である。[10]
測り方にも目を向けたい。この研究で使う曲線下面積は、時間に沿った血中濃度の動きを面積にして比べる値で、ある瞬間の濃度そのものとは違う。次の糖負荷における血糖の曲線下面積は、カフェイン入り217、カフェイン除去126、水55 mmol/L×2時間だった。検査の期間を含む数値なので、そのまま日常の血糖値の目盛りには置けない。[10]
昼食後の眠気を感じた場面で、この数字を思い出しても、眠気の原因をコーヒーだと決める材料にはならない。この試験が実際に比較したのは血液の指標である。生活へ持ち帰れる問いは、体感を病名に翻訳することではなく、食事と飲料をどの順序で取っていたか、という条件の確認だ。[10]

カフェイン除去の評価は、比較相手で変わる
健康な男性17人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、通常のコーヒー、砂糖入りの通常コーヒー、カフェイン除去コーヒーなどを比較し、飲んだ1時間後に糖負荷検査を行った。カフェイン除去コーヒーでは、水より高いインスリン感受性が観察された。一方で、血糖、インスリンや腸管ホルモンなどの濃度には、水との有意差を認めていない。対象は男性なので、18〜39歳の女性への適用には性別の違いが残る。[2]
ここを「血糖が下がった」と言い換えると、測ったものが入れ替わる。感受性の改善という結果と、血糖濃度に有意差がないという結果は、同じ試験の中に並んでいる。好ましく見える指標だけを抜き出すと、飲料全体の成績を実際より良く読んでしまう。[2]
別の、若い男性11人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、カフェイン除去コーヒーを飲んだ後、糖負荷検査の最初の1時間に血糖とインスリンがプラセボより高かった。検査全体でもインスリンは高いという結果である。ただしカフェイン単独との比較では、血糖が低く、インスリン感受性の指標が高いという違いを示した。若い対象でも男性の結果であり、18〜39歳の女性に同じ反応を保証するものではない。[17]
水などの対照よりよいか、カフェイン単独よりよいか。この比較相手の違いで、同じ飲料の説明は変わる。「カフェインより影響が小さい」という文章は、「影響がない」の言い換えではない。カフェイン除去という名前だけで有利な結果を約束する読み方は、この試験と合わない。[17]
こうした不一致は、好みでどちらかを捨てて解決するものではない。男性17人と11人という小規模な試験で、飲料や検査の条件も含めた結果として受け止めるべきだ。カフェイン除去へ替えることを考える際も、「これなら血糖は必ず下がる」という期待は置かず、選べる飲料の違いとして考えたい。[2][17]
砂糖とミルクを加えた試験は、何と比べたのか
一見すると意外なのが、健康な成人21人を対象にした無作為化クロスオーバーの食事試験だ。血糖反応を起こしやすい食事の前に、エスプレッソ、インスタント、煮出し、カフェイン除去の各コーヒーを、いずれもミルクと砂糖入りで飲んだ。水と比べて血糖の増分曲線下面積が有意に小さかったのは、カフェイン除去コーヒーだけで、差は14%だった。健康な成人を対象とした結果として読み、18〜39歳の女性に絞った効果とは区別する。[1]
参加者のうち10人は、追加でブラックコーヒーの条件も試した。ブラックとの比較では、ミルクと砂糖入りの各コーヒーで血糖の増分曲線下面積が12〜35%小さかった。これは「砂糖を取れば取るほどよい」という結果ではなく、決められた飲料を食事の前に取った組み合わせの比較である。[1]
読み違えやすいのは、比較の軸が途中で変わる点だ。水との比較で有意だったのはカフェイン除去の条件であり、ブラックとの比較ではミルクと砂糖入りの条件が有利だった。どのコーヒーでも水より良かった、と広げてはいけない。また、ミルクと砂糖を一緒に加えているため、砂糖だけの働きとして説明することもできない。[1]
この結果は、糖質制限をもっと厳しくする理由にも、砂糖を積極的に足す理由にも直結しない。研究の面白さは、材料名への印象よりも食事全体の組み合わせが重要な比較条件になるところにある。砂糖を抜いたかどうかという台所の問いと、食後の血中濃度がどう動いたかという検査の問いを、丁寧につなぐ必要がある。[1]
数字で読むコーヒーと糖への反応
男性10人:カフェイン量と粉末量を変え、糖と一緒に取った短期試験の人数である。[5]
49%と57%:次の糖負荷で、カフェイン入り条件のインスリン反応が比較条件より大きかった。[10]
14%:食前のミルク・砂糖入りカフェイン除去コーヒーで、水より小さかった血糖の増分曲線下面積の差を指す。[1]
8週間:継続摂取の試験で糖代謝指標に群間の有意差がなかった期間として読む。[8]
16週間:別の継続試験で、糖負荷後の反応を調べた介入期間である。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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