糖質制限のじゃがいもは小さく切ってゆでる?糖とは別に失うカリウムを読む

糖質制限の食材選びで、じゃがいもを細かく切ってゆでればよいと思っていないだろうか。調理実験で減ったカリウムの割合、浸水だけでは結果がそろわない理由、食品の含有量と消化後に利用できる量の違いを研究から読む。栄養を残したい人と、医師から制限を受けている人で異なる調理の目的も整理する。

夕食のじゃがいもを刻み、水を張ったボウルへ入れる。「糖質制限中だから、抜けるものは抜いておこう」。ところが、その下ごしらえを評価した研究で測っているものが、糖ではなくカリウムだったらどうだろう。小さくしてゆでる操作にはカリウムを減らす働きがあるが、その数字を糖質の減少率として読むことはできない。[10]

じゃがいもはでんぷんを含む食品であり、同時にカリウムなどの微量栄養素や食物繊維の供給源でもある。栄養に関するレビューは、ゆで調理で水に溶ける栄養素が流出することを指摘している。「抜けた」という言葉だけでは、食事の何が変わったのかは分からない。[2]

答えの芯は、切り方を決める前に目的を決めることにある。小さく切ってゆで、ゆで汁を捨てる処理は、医療上カリウム制限が必要な人の食事管理に役立てる方法である。健康な人が減量のためにカリウムを抜く方法として勧める根拠にはならない。[10] 鍋を火にかける前に、何を残し、何を減らす料理なのかを確認したい。

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小さく切ってゆでると、何が減ったのか

食品を使った実験で、BethkeとJanskyは、じゃがいもの浸水とゆで調理がカリウムや他のミネラルに与える影響を調べた。角切りをゆでるとカリウムは50%、細切りをゆでると75%減った。これは調理した試料のミネラル分析であり、人が食べて体重の変化を調べた試験ではない。18〜39歳の女性に同じ調理で減量効果があるかは、この食品実験の評価対象から外れる。[10]

数字の主語を見失わないことが大切だ。「75%減少」の横に必要なのは「カリウム」であって、「糖質」でも「食後血糖」でもない。研究で測った成分と、食事で変えたいものが一致して初めて、その結果を選択の材料にできる。細切りが角切りより大きな減少を示した結果は、カリウムの調理損失を考える根拠になる。[10]

同じ実験では、ゆでたあとにリン、マグネシウム、硫黄、亜鉛、マンガン、鉄の量も減っていた。複数のミネラルが同時に失われる。食品に含まれるミネラルをできるだけ残したい人には、損失を抑える調理が目的に合う。[10]

ここでいう「溶出」は、じゃがいもにあった成分が周囲の水へ移ることである。別の食品実験は、じゃがいもから水へのカリウムの移動を数理モデルで扱っている。[9] 鍋の中で成分が移動する話と、食べた人の体で成分が使われる話は、つながってはいても同じ測定ではない。この距離を省くと、台所の操作がそのまま健康効果の宣伝に変わってしまう。

たとえば夕食のポテトサラダ用に細かく切ったとする。切りやすさや仕上がりを理由に選ぶことと、「糖質を大きく減らせるはず」と期待して選ぶことは別である。カリウムの分析結果を根拠に後者を約束することはできない。[10] 包丁は料理を作る道具である。測っていない成分の減少まで保証する道具にはならない。

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水にさらすだけなら、同じ結果になるのか

ゆでる前に水へさらす作業と、加熱しながらゆでる作業は、ひと続きに見えやすい。しかし先の食品実験では、浸水だけでカリウムや他のミネラルが有意に減る結果は得られなかった。また、浸水してからゆでる処理と、ゆでるだけの処理との間にも差はなかった。この実験では、前もって水にさらす手間を加えても、追加の減少は認められなかったのである。[10]

一方、慢性腎不全の子どもが食べたいと挙げた食品を対象にしたPicqらの成分分析では、じゃがいものカリウムは浸水で16%、多量の水でのゆで調理で73%減少した。子どもにその料理を食べてもらって症状の変化を確かめた試験ではなく、食事の献立づくりを支える食品分析である。慢性腎不全の子どもの献立を想定した結果を、18〜39歳の健康な女性がカリウムを減らす必要性へそのまま当てはめることはできない。[13]

浸水だけでは有意な減少がなかった実験と、16%の減少があった実験がある。[10][13] ここから「必ず抜ける」「まったく抜けない」のどちらかへ決めつけるのは早い。研究ごとの処理条件をそろえずに、浸水という名前だけで同じ効果を期待しない、という読み方が適切だ。少なくとも、ボウルへ入れたという事実だけで、完成した料理のカリウム量を確定させることはできない。

この食い違いを平均して、家庭用の減少率を作るのも避けたい。16%と、別の実験の「有意な減少なし」は、計算して折半するための数字ではない。[10][13] 食品の分析結果は、それぞれの処理を受けた試料の結果である。自宅の鍋、切り方、手順へ持ち帰るときには、研究の数字そのものと、料理の実測値を区別する必要がある。

仕事帰りに下ごしらえの工程を増やすなら、その工程の目的を言葉にしておく。「食感のため」「献立上の都合」「医療者から教わった処理」のように整理できればよい。根拠がカリウムの研究なのに「糖質のため」と書き換えると、手間と目的がずれてしまう。浸水と加熱を分けて考えることは、そのずれを見つける入口になる。[10][13]

温度と品種も変わるので、割合を固定しない

カリウムが水へ移る過程を調べたAdu-Pokuらは、Estimaという品種の立方体と球状の試料を用い、温度と攪拌を制御できる装置で実験した。80℃の予備加熱と、20〜80℃の温度条件での溶出を扱い、予備加熱によって抽出が速くなる結果を得ている。[9]

これは温度の影響を具体的に示す食品工学の実験だ。加熱条件によってカリウムの移動のしかたが変わるため、単に「水に入れたじゃがいも」を共通の状態として扱うのは粗い。[9] 冷たいボウルの中と、温度を制御した実験装置の中は同じ台所の延長に見えても、比較の条件は異なる。装置で良好に説明できたモデルを、そのまま家庭の調理時間の指示にする必要もない。

もともとの含有量も一定ではない。BurrowesとRamerは、生のじゃがいも6品種を分析し、通常の調理と二重調理を比較した。生の試料では、カリウム量の平均が最も高い品種で100g当たり448.1mg、最も低い品種で295mgだった。添えられたばらつきはそれぞれ標準偏差60.5mg、15.7mgであり、同じ「じゃがいも」という名前の中にも幅があった。[14]

この実験では二重調理の方が通常調理よりカリウムを減らすのに有効だったが、処理後にも相応の量が残っていた。[14] 「減らす工程を通った食品」と「カリウムがなくなった食品」は同義ではない。医療上の制限がある場合に、下ごしらえをしたから量を気にしなくてよい、と判断できない理由でもある。

品種差の評価にも幅がある。Bethkeらの実験は、北米の6品種でミネラル量に有意な差を認めた一方、その差は栄養上重要といえるほど大きくないと評価している。[10] 別の研究で含有量に幅が出たことと併せて読むと、品種名だけを食事選びの決定打にせず、調理条件も含めて考える必要がある。[10][14] 統計的な違いがあることと、献立を変えるほど重要であることも、分けておきたい。

食品工学の実験をもう少し見ると、予備加熱の影響は単なる温かさの違いとしてではなく、移動を説明する指標の変化として現れている。立方体の試料では、カリウムの移動に関わる活性化エネルギーが92から25.02kJ/molへ、球状の試料では75.02から13.40kJ/molへ低下した。著者らは、でんぷんが加熱で変化する温度域で、移動を表す指標の傾きも変わることを報告している。[9]

活性化エネルギーは、この場合、温度によって移動の速さがどう変わるかを表すための指標である。これらの数値は、人が使うエネルギーや食品のカロリーではない。[9] 食事の検索で見つかる「エネルギー」という同じ言葉にも、何を説明しているかの違いがある。研究の単位や測定対象を確かめると、加熱でカリウムが移りやすくなるという話を、食べたときのエネルギーが減るという話へ取り違えずに済む。切り方と温度を調べる理由は、こうした食品内部の変化を整理することにもある。[9]

数字で読むじゃがいもとカリウム

角切りをゆでた試料ではカリウムが50%減少。糖質の減少率ではない。[10]

細切りをゆでた試料ではカリウムが75%減少。同じ研究の角切りとの違いである。[10]

別の食品分析では浸水で16%減少。浸水だけでは有意な減少がなかった実験もある。[13][10]

多量の水でゆでたじゃがいもでは73%減少。その実験の処理条件に対応する値である。[13]

生の6品種の比較では、カリウム量が最大の品種で平均448.1mg、最小の品種で295mg/100gだった。[14]

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