間食の豆を冷やすと、消化されにくいでんぷんは増えるのか。いんげん豆やひよこ豆の成分分析、ササゲのでんぷん実験、豆粉入りパンの研究を読み比べる。冷却と温め直しで変わる成分、粒の構造が持つ意味、推定の血糖指標と人の反応の違いを整理し、低カロリーという言葉だけに頼らない選び方を考える。
煮豆を冷ましてサラダにする日、温かいままスープに入れる日。昨日の温かい煮豆より消化されにくくなっているのだろうか。答えの芯は、冷却や温め直しによって、豆の中の消化されにくいでんぷんが増える場合はある、ということだ。いんげん豆とひよこ豆を調べた食品の成分分析が、その変化を捉えている。[5]
ただし、冷やした豆をそのまま「低カロリーのおやつ」と呼ぶところまでは進めない。食品に含まれる成分の測定、実験室での消化の試験、人が食べたときの反応は、それぞれ確かめているものが違う。ササゲのでんぷんで下がった血糖関連の指標も、人の血糖値を直接測った数字ではなく、実験から推定した値である。対象は人ではなく取り出したでんぷんなので、18〜39歳の女性の食後反応にそのまま当てはめるには、人での検証が必要だ。[4]
既存記事「間食のおにぎりは冷やして温め直すと違う?でんぷんの変化と消化を研究で読む」では米を扱った。こちらでは豆に焦点を絞る。豆のでんぷん自体の性質に加え、それを包む細胞の構造も消化に関わるため、冷えた食品という共通点だけで同じ説明にしてしまわないことが大切だ。[7]

冷やす前から、豆のでんぷんには包まれ方がある
レジスタントスターチとは、でんぷんを分解する酵素の作用に抵抗するでんぷんと、その分解産物を指す。日本語では難消化性でんぷんと呼ぶ。食品の全部が消化されなくなるという意味ではない。同じ食品の中に、分解されやすさの異なる部分があると考えると分かりやすい。[6]
豆類の炭水化物を論じた研究では、ゆっくり消化される性質に、でんぷん自体の特性と、子葉の細胞の微細な構造が関係すると整理されている。子葉とは、ここでは豆の種子の内部にある組織である。でんぷんを取り出して測るときと、組織の中に収まったまま測るときでは、酵素が届く条件が違ってくる。[7]
この整理で扱われた消化されにくいでんぷんには、加熱した豆を冷やす過程でできる成分と、物理的に酵素が届きにくい成分が含まれる。後者は、消化されにくいでんぷんの最大40%を占めうるとされる。この40%は豆全体の重さに対する割合ではない。「何のうちの割合か」を外すと、豆の半分近くが吸収されないという別の話になってしまう。[7]
つまり、冷やすことだけが豆の消化を決めるわけではない。もともとの構造があり、そこへ熱や機械的な加工が加わる。豆類のゆっくり消化される特徴は、そうした加工の影響を受けやすいと論じられている。粒の豆、粉にした豆、豆粉を混ぜて焼いたパンを、同じ「豆入り」の欄でひとまとめにしない理由がここにある。[7]
間食を探すときは、原料名に目が向きやすい。ひよこ豆が入っているか、えんどう豆なのか。それに加えて、どんな形で食べる食品なのかも問いに入れたい。これは粒なら必ず有利だという順位付けではない。原料の特徴と加工後の食品の特徴を、別々に確かめるための視点である。[3][7]
冷蔵庫は食品の温度を変えるが、豆を原料名だけの存在に戻すわけではない。煮たか、粉にしたか、ほかの材料と混ぜたかという来歴も残っている。冷却による変化を読むなら、その手前の調理まで含めて食品を見る必要がある。[3][5][7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
冷却と温め直しで、増える成分と減る成分がある
調理に近い変化を調べたのが、いんげん豆の7つの市場区分と、ひよこ豆の2つの市場区分を対象にした成分分析である。調べたのは、加熱、冷却、再加熱による炭水化物の種類と濃度の変化だ。加工によって食品の中身がどう変わるかを追った研究である。対象は豆そのものであり、18〜39歳の女性が食べた場合の変化を直接示す結果ではない。[5]
いんげん豆では、100g当たりの難消化性でんぷんが2.6〜3.9gと報告された。冷却や温め直しによって、多くの場合、難消化性でんぷんとフラクトオリゴ糖、糖アルコールが増え、ラフィノース系オリゴ糖が減った。炭水化物が一様に増減したわけではなく、種類ごとに動く方向が違ったのである。[5]
ここで登場するオリゴ糖や糖アルコールは、研究が測った炭水化物の区分だ。名前が長いため全部を覚える必要はない。大事なのは、冷やすという操作の結果を、難消化性でんぷんだけの増減として切り取らないことだ。同じ豆の中で、別の炭水化物も同時に変化している。[5]
ひよこ豆では、90℃で4時間加熱した条件の100g当たりで、難消化性でんぷんは3.6〜5.3gと報告された。冷却や温め直しに伴い、フラクトオリゴ糖、難消化性でんぷん、アミロースの濃度が増え、糖アルコールとラフィノース系オリゴ糖は減った。いんげん豆とは、糖アルコールの変化の向きも同じではなかった。[5]
この加熱温度と時間は、実験条件を見分けるための情報である。家庭でひよこ豆を用意する際の推奨レシピとして読み替えない。市販の調理済み豆に同じ増加量が起きるとも決めない。対象となった豆と加工条件を残したまま結果を受け取るほうが、数字の意味を保てる。[5]
また、いんげん豆の2.6〜3.9gと、ひよこ豆の3.6〜5.3gを並べて、ひよこ豆のほうが間食として優秀だと判定するのも急ぎすぎる。ここで比較されているのは研究条件下の成分濃度であり、食べやすさや空腹感、日々の食事の代わりになるかを評価した順位ではない。[5]
夕方に温かい豆のスープを選びたい日もあるだろう。温め直したら冷却による変化が全部消える、と考える必要はない。再加熱まで含めた加工で、難消化性でんぷんが増える方向の結果も得られている。冷たいまま我慢して食べることを、この研究の結論に足す理由はない。[5]
実験の「増えた」は、食べた人の変化と分ける
変化の幅を見るうえで参考になるのが、豆類、穀類、いも類を加熱と冷却に繰り返しかけた比較研究だ。豆類の難消化性でんぷんの平均は、調理直後の4.18%から、加熱・冷却を3回繰り返した後には8.16%へ増えた。この割合は水分を除いた乾物を基準にした値である。[6]
水分を除いた基準は、食品の中の成分を比べるために役立つ。しかし、汁気のある煮豆を皿に盛ったときの重さとは違う。前の研究の100g当たりのグラム数と、そのまま横並びにして増加量を計算してはいけない。同じ難消化性でんぷんでも、分母が違えば数字の使い道が変わる。[5][6]
繰り返し処理後の増加率は、えんどう豆で最大114.8%、さつまいもで最小62.1%だった。これは食品の種類によって変化の幅が違ったことを示す。えんどう豆の数字を見て、すべての豆が同じ割合で増えるとも、食べられるエネルギーが同じ割合で減るとも言えない。[6]
ササゲから取り出したでんぷんを使った研究では、高圧の加熱処理と冷却を組み合わせている。比較したのは処理を1回、3回、5回行う条件で、物性、実験室での消化、推定の血糖指標が評価された。家庭で煮た丸ごとの豆とは、試料も装置も異なる実験である。[4]
この研究の推定血糖指数は、47.94±0.45から41.46±0.06へ低下した。論文は単回の高圧加熱・冷却を、熱に対する安定性が高く、推定の指標が低い難消化性でんぷんを作る方法の候補としている。処理を何度も増やすほど生活上の利益も大きい、と受け取る結果ではない。[4]
この数字を読む際は、比較の出発点にも目を向けたい。ササゲの研究では未処理のでんぷんも処理後のでんぷんも、難消化性でんぷんを多く含む材料として位置付けられている。処理前にはなかった性質が冷却によって突然生まれた、という構図ではない。もともと持つ性質が、加工によってさらに変化した実験なのである。[4]
また、豆類の繰り返し加熱・冷却の研究では、難消化性でんぷんの量とアミロースの量に正の相関があった。関連があったという結果と、家庭で特定の豆を選べば一定量が増えるという予測は分けたい。材料の違いまで含めて変化を調べた点に、この比較研究の意味がある。[6]
数字で読む豆の冷却と消化
いんげん豆の7区分、ひよこ豆の2区分:加熱・冷却・再加熱で成分濃度を比較した食品研究の対象である。[5]
2.6〜3.9g:いんげん豆100g当たりに報告された難消化性でんぷんの量である。[5]
3.6〜5.3g:90℃で4時間加熱したひよこ豆100g当たりの難消化性でんぷんの量である。[5]
4.18%から8.16%:加熱・冷却を3回繰り返した豆類の平均値で、乾物を基準とする。[6]
47.94±0.45から41.46±0.06:ササゲのでんぷん処理に伴う推定血糖指数の変化で、人の血糖値そのものではない。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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