間食に腹持ちのよい低カロリーのスープを選ぶなら、とろみは目印になるのか。大麦βグルカンを使った比較試験から、胃から出る速度、満腹感、次の食事量の違いを読む。材料や加工で変わる粘度も確かめ、飲む速さまで決めつけず、夕方の空腹に合う一杯を考えるための視点を整理する。
カップの底に残ったスープを、スプーンですくう。さらさらのものより、スプーンに残るものの方が夕食まで持ちそうだ。売り場ではそんな印象で手が伸びるが、選ぶ目印になるのは、とろみを作った材料と、実際に食欲を調べた結果だ。実際、大麦由来の成分で粘度を変えたスープの試験では、満腹感にも食事量にも有意差がなかった。[1]
とろみが胃の動きに関わらない、という意味でもない。別の小規模な無作為化試験では、粘度の高い条件で、食べ物が胃から出ていく速度が遅くなった。[2] 胃に残ること、満腹と感じること、その後に食べる量。このつながりを途中で省くと、「とろみがあれば腹持ちする」という答えができてしまう。
ここで扱うのは、スープのとろみと腹持ちの関係である。果肉をこす加工や粒の問題は既存記事「間食のスムージーはこすと変わる?果肉の粒と食物繊維、とろみの違いを読む」に譲る。低カロリーという表示に加えて何を見ればよいか、まずは胃の測定と食欲の測定を別々に追ってみたい。

とろみの強さだけでは腹持ちは決まらない
直接この問いに答えるのは、健康な男性23人を対象にした無作為化比較クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる条件を試して比較する方法だ。研究では標準化した朝食の後、大麦βグルカン入りのスープを食べ、その後の食欲と昼食の摂取量を調べた。男性の結果なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは別に検証する必要がある。[1]
βグルカンは、この研究でとろみの条件を変えるために用いられた大麦由来の成分である。試験では分子量の高いものと低いものを使い、いずれも約3gを含ませた。分子量は分子の大きさを表す指標だ。利用可能な炭水化物を25gにそろえたスープで、粘度は高分子量の条件が350Pa·s、低分子量の条件が100Pa·sだった。[1]
この比較のよいところは、「とろみのあるスープを選ぶ人」と「選ばない人」の生活を比べたのではない点だ。同じ人が異なるスープを試すので、もともとの食欲の違いを抑えながら、条件による変化を見やすい。ただし、確かめているのはこの材料、この量、この食事の流れでの反応である。[1]
結果は、βグルカンを含まない対照も含めた条件間で、自由に食べられる昼食の摂取量に有意差がなかった。その後の当日の摂取量にも有意差はなく、空腹感、満腹感、食べたい気持ち、食べられそうな量の評価にも有意差がなかった。[1] スプーンにまとわりつく強さが違っても、食欲の成績表には違いが出なかったのである。
ここで注目したいのは、βグルカンの量を増やしてとろみを変えた比較ではないことだ。高分子量でも低分子量でも約3gで、利用可能な炭水化物も25gにそろえてある。成分名と量が共通でも、分子量という材料の性質が違えば、出来上がるスープの粘度は異なった。そのうえで食欲への影響を調べた点に、この試験の意味がある。[1]
対照はβグルカンを含まないスープだった。高分子量と低分子量の比較だけでなく、加えない条件も置いているため、材料を入れたことによる違いと、その分子量による違いの両方を検討できる。結果は、今回の量と粘度では食欲評価にも摂取量にも有意差なしだった。少人数での短期の比較であり、長く食べ続けたときの体重変化を確かめた試験ではない。[1]
買い物では、こうした条件のそろった比較と、まったく別の商品の比較が混ざりやすい。とろみのあるスープと澄んだスープで原材料も内容量も違えば、感じた差を粘度だけに割り当てることはできない。研究の条件を家庭で再現する必要はないが、「とろみだけが違う比較なのか」という問いは持っておける。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
胃から出る速度は、食欲とは別に測る
胃排出とは、胃の中身が次の消化の場所へ送り出されることだ。健康な15人を対象にした別の無作為化試験では、参加者が一晩の絶食後に、高分子量βグルカン入り、低分子量βグルカン入り、βグルカンなしのスープを別々の機会に試した。胃排出、食後の血糖反応、食事によって増えるエネルギー消費が測定された。健康な参加者の小規模試験であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この結果だけでは判断できない。[2]
胃排出は呼気を使う検査で調べられ、血糖は指先から採った血液で測られた。食事後のエネルギー消費は間接熱量測定という方法で評価された。研究者は「お腹にたまった気がする」という感想だけで胃の動きを判定したわけではない。[2] 家で感じる腹持ちと、検査室で追う胃の動きには、最初から異なる物差しがある。
この試験では、高分子量βグルカンの条件で胃排出が最も遅かった。血糖反応を時間に沿って合計した指標は、食後60分までではスープ間に差があり、対照と低分子量の条件の方が高分子量の条件より大きかった。一方、120分までの比較では差がなかった。[2] 「血糖反応が低かった」とだけ抜き出すと、どの時間幅の結果なのかが消えてしまう。
食事によるエネルギー消費の増加も、高分子量の条件で最も小さかった。[2] ここから代謝がよくなるスープ、消費が増えるスープという話に持っていくのは逆向きである。胃から出る速度、血糖反応、エネルギー消費は、それぞれの測定結果として受け止めたい。どれかが変わったことを、そのまま望ましい体型の変化に置き換える必要はない。
先ほどの食欲の試験と、この胃排出の試験は同じ実験ではない。対象人数も、食べる前の条件も、中心となる測定も異なる。[1][2] 並べる価値は、「胃の動きが変わる可能性」と「満腹感や摂取量が変わるか」は別の問いだと分かる点にある。この違いを押さえると、朝食後の間食を調べた試験と、絶食後の朝食を調べた試験を整理できる。
とくに間食では、朝食として絶食後に摂った試験と、すでに食事を済ませた後の試験を混同しないことが大切だ。午前の検査結果を、そのまま帰宅前の空腹に当てはめない。自分の場面へ移す際には、材料だけでなく、何を食べた後なのかも違っていると考える余地を残しておく。[1][2]
飲む速さを、とろみから逆算しない
とろみが強ければゆっくり飲むはずだ、と考えたくなる。しかし、スープ自体の流れ方と、人が食べ終えるまでの速さは同じ測定ではない。ひよこ豆粉を使った即席スープの食品研究では、比較対象のでんぷん入りスープと似た粘度に達していても、力が加わったときの流れ方は違っていた。[16]
この研究で見られたのが、力を加えると流れやすくなる性質である。ひよこ豆粉入りの方でこの性質が強く、比較的大きな粒子や、粒子の集まりが力によって崩れることが関係していた。[16] カップに静かに入っているときの姿だけでは、かき混ぜたり口に運んだりするときの状態を読み切れない。
似た粘度でも、材料の微細な構造には違いがある。研究では香りの成分にも違いがあり、ひよこ豆粉の成分との相互作用や、新たに加わる揮発成分が調べられている。[16] 食品としての口当たりを比べる際にも、「粘度が似ている」という共通点だけで、食べる経験全体を同一視しない方がよい。
ただし、これは人の飲む速度や満腹感を比べた試験ではない。[16] 「流れ方が違う」から「ゆっくり食べる」、さらに「食事量が減る」へと段階を飛ばさないことが肝心だ。飲む速さが気になるなら、理屈から所要時間を決めるより、自分がカップを置いて食べたのか、歩く支度をしながら流し込んだのかを振り返る方が、場面を具体的に捉えられる。
胃排出の試験で検討された仕組みは、高分子量βグルカンによる粘度の上昇が胃排出を遅らせ、食後の血糖反応や食事によるエネルギー消費に影響する、という流れだ。実際に高分子量の条件では胃排出が最も遅く、初期の胃排出時間と血糖反応に相関が見られた。相関とは、測定値どうしに関連があることをいう。研究者は、粘度という物理的性質から食後の反応を説明している。[2]
ただし、血糖反応を合計する時間幅を延ばすと、見える結果も変わる。60分までの差が120分まででは見られなかったことは、食後の早い時間帯の反応を一日全体の変化へ広げずに読む理由になる。初期の動きを捉えた測定と、長い時間幅でまとめた測定を同列に扱わず、何分までの結果かを添えることが必要だ。[2]
数字で読むスープのとろみ
23人:満腹感と摂取量を比較した、健康な男性の無作為化クロスオーバー試験の対象人数である。[1]
約3g:その試験で各βグルカンスープに含まれたβグルカンの量だ。家庭で追加する推奨量ではない。[1]
350Pa·sと100Pa·s:高分子量と低分子量の条件の粘度。違いがあっても食欲評価には有意差がなかった。[1]
15人:胃排出や食後の血糖反応を調べた、別の無作為化試験の対象人数である。[2]
60分と120分:血糖反応の合計で、スープ間の差があった時間幅と、差がなかった時間幅である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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