運動後にゆっくり呼吸すると、疲労回復も早まるのだろうか。スクワットの休憩、短距離の反復運動、水泳の研究を読み、心拍の戻り、回復した感覚、次の運動の出力を区別する。立川でヨガや運動を続ける人へ、呼吸の回数だけを正解にせず、休み方を選ぶための見方を示す。
スクワットのセットを終え、重りを戻して休憩に入る。脚はまだ重いのに、時計の心拍は下がり始めた。ここで息をゆっくりにすれば、次のセットも楽になるのだろうか。休憩の過ごし方を決めるには、脈の数字だけでは足りない。
呼吸法は、運動後の心拍の戻りに影響することがある。しかし、心拍が戻ることと、次の運動で力を出せることは同じではない。筋トレ経験のある大学生年代の男性18人がスクワットの休憩中に呼吸法を行った試験では、一部のセット後で心拍の戻りが大きくなった一方、出力や動作速度は改善しなかった。18〜39歳の女性でも同じ結果になるかは、別に検証する必要がある。[15]
疲労回復のために必ず行うべき手順、とまではいえない。強い反復運動に呼吸法を加えた試験でも、運動能力や生理的な回復への上乗せ効果は認められていない。[2] まずは「何が戻ったら回復と呼ぶのか」を分けると、呼吸法への期待を置く場所が見えてくる。

心拍が戻ることと、筋肉が戻ることは別である
運動後の回復には、心拍の変化、疲れたという感覚、次に発揮する力など、異なる測り方がある。実際、スクワットの比較試験は心拍だけでなく、血圧、主観的なきつさ、回復感、出力、重りを動かす速度を別々に測っている。そして、呼吸法による違いが現れた項目と、現れなかった項目が分かれた。[15]
この区別は、生活の中でも役立つ。運動後に「落ち着いた」と感じた日の記録には、気分が落ち着いたのか、脚が動かしやすくなったのかを書き分けたい。同じ「楽になった」でも中身は違う。青年期の全国レベルの競泳選手の研究では、回復感や練習への手応えに変化がありながら、心拍や心拍変動には有意な効果がなかった。18〜39歳の女性の日常的な運動に適用できるかは、競技生活との違いを考慮する必要がある。[13]
心拍変動とは、心臓が打つ間隔の揺らぎのことである。単に心拍数が高いか低いかとは異なる指標で、呼吸法やストレスを扱う研究で測られる。[9] 時計に表示される心拍数が下がることと、心拍変動の値が変わることも、一緒くたにはできない。研究の結果を読む際は、どちらを測ったのかに目を向けたい。[9,15]
さらに、運動直後の短い休憩を調べた実験と、練習を続けた期間全体を調べた実験では、答えている問いが異なる。セットの間に脈が戻りやすいかという問いは、数週間後に運動能力がより伸びるかという問いの代わりにはならない。[2,15] 目の前の数字は、翌日の脚の状態をすべて代表する通知表ではない。
既存記事「ヨガのクールダウンはすぐ座ってよい?運動後の脚と血液の戻り方を読む」は、運動後の姿勢を選ぶ問いに譲る。ここで確かめるのは、休憩中の呼吸を変えると、回復のどの側面に違いが出るかである。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
スクワットでは脈の戻りが変わっても出力は同じだった
筋力トレーニングの場面を直接扱ったのが、健康で筋トレ経験のある大学生年代の男性18人による無作為化クロスオーバー試験である。同じ参加者が条件を変えて行う方式で、普段どおりの呼吸と、4・7・8方式のゆっくりした呼吸を比べた。対象の平均年齢は20.7歳、筋トレ経験は平均4.5年だった。18〜39歳の女性についての直接の検証ではなく、経験のある男性での結果として読む必要がある。[15]
運動はバーベルを使うスクワットで、3回ずつを5セット実施した。呼吸法はセット間の3分の休憩中に行った。呼吸だけを比べているようで、運動の種類、参加者の経験、休憩の長さもそろえた比較である。[15] 初めてヨガをした日の女性や、帰宅後に疲れを感じる人と、そのまま同じ条件ではない。
心拍の戻りは、第2セット後で呼吸法の条件が51.0拍/分、通常呼吸が44.5拍/分、第3セット後ではそれぞれ48.3拍/分と37.7拍/分だった。ここでいう数字は休憩時の心拍数そのものではなく、研究で評価した心拍の回復量である。呼吸法の条件で、これらのセット後の戻りが有意に大きかった。[15]
一方、最大出力、平均出力、重りの移動速度、収縮期血圧の戻り、主観的なきつさ、回復感には、条件間の有意差がなかった。[15] 脈の結果だけを見れば有望に見えるが、次のセットの質という別の物差しを置くと、話はそこで止まる。時計は落ち着いても、バーベルが軽くなったわけではなかった。
実際に休憩へ取り入れるかを考えるなら、先に休憩の枠を確保したい。この試験では、呼吸法の条件でも通常呼吸の条件でも休憩は3分だった。[15] 数を合わせることに気を取られ、次のセットの準備を急ぐのでは、研究で比べた条件から離れてしまう。呼吸に取り組んだ時間と、休んだ時間を同じものとして扱うと、記録も読みやすい。
4・7・8という名前を見て、その数字だけを休憩へ移すのも早計である。この試験が比較したのは、決まったスクワットとセット間休憩を組み合わせた方法だった。[15] 日常ではまず、普段の呼吸で休んだときの過ごし方を振り返る。息の数を数えるのが落ち着くのか、それとも次の動作への焦りが増すのか。これは効果を保証する手順ではなく、自分が続けられる休み方を選ぶための観察である。
強い反復運動の後に加えても上乗せ効果はなかった
短距離の全力に近い運動を繰り返す練習では、どうだろうか。34人を介入群と対照群に無作為に分けた試験では、両群が4週間の監督付きスプリント・インターバル・トレーニングを行った。介入群だけが、各練習の後と、毎晩の就寝前にゆっくりした呼吸を加えた。[2]
調べたのは、走る能力、心拍変動のうち心臓の迷走神経活動に関わる指標、睡眠に関する指標である。迷走神経は自律神経の調節に関わる神経で、この試験では心拍の間隔からその働きに関係する変化を評価した。[2] 心拍数だけの比較より、回復を多面的に捉えようとした設計といえる。
それでも、呼吸法を加えたことで、運動能力や生理的な利益が追加されたとは認められなかった。著者らは、この強度の高い反復運動の後に行う10分のゆっくりした呼吸について、能力向上や回復支援への価値は限定的だと結論している。[2] 「少し落ち着くかもしれない」という期待を、「続ければ練習の成果が増す」という期待へ膨らませないことが大切だ。
介入群では、夜間の心拍数が対照群に比べて経時的にわずかに増え、その変化は毎分3.1拍、95%信頼区間は0.47〜5.72拍だった。[2] 信頼区間は推定の不確かさを表す幅である。この結果から呼吸法一般を危険だと決めるのではなく、少なくとも「呼吸法を続ければ夜の心拍も必ず下がる」という予想どおりではなかったと読むべきである。
この試験は運動後だけでなく就寝前にも呼吸法を加えている。[2] したがって、運動直後に短く試す行為のすべてを否定した実験ではない。一方で、継続して取り入れれば必ず上乗せがある、という主張を支える結果でもない。日々の習慣として選ぶ際には、その手間と、自分が求める変化が釣り合うかを考える余地がある。
比較相手にも注目したい。スクワットの試験は、呼吸法をする休憩と、通常の呼吸で過ごす休憩を比べている。[15] 休みを取らずに頑張り続ける場合との比較ではない。したがって、その結果から「呼吸法をしない休憩では回復できない」と考える必要はない。選択肢は、特別な方法か何もしないか、という二択ではなく、普段の休み方へ何を加えるかという話になる。
同じ人が両方の条件を経験するスクワットの試験と、人を別々の群に分けて練習期間を追う反復運動の試験では、比較の組み立ても異なる。[2,15] 前者はその場の条件差を見る手掛かりになり、後者は継続した際の追加効果を検討している。短い実験の良い数字と、継続した試験の差がない結果は、必ずしも矛盾ではない。問うている時間の幅も、確かめた運動も異なるからだ。
休憩場所での姿勢についても、呼吸の研究から好みの答えを引き出さないようにしたい。ここで扱うスクワット試験は呼吸条件の比較であり、立つか座るかの優劣を確かめた試験ではない。[15] 姿勢まで同時に変えて楽になった場合は、何が違ったのかを切り分けにくい。普段の休憩との比較を残したいなら、呼吸を変えたこと、姿勢を変えたことを記録で分けるとよい。運動直後の姿勢そのものは、先に挙げたクールダウンの記事で扱う問いである。
数字で読む運動後の呼吸と回復
18人:筋トレ経験のある若い男性を対象にしたスクワットの比較試験である。[15]
3分:その試験では、セット間のこの休憩時間に呼吸法を行った。[15]
51.0対44.5拍/分:第2セット後の心拍回復量で、呼吸法と通常呼吸の比較である。[15]
34人・4週間:この規模と期間の無作為化試験で、強い反復運動への呼吸法の追加を調べた。[2]
13人・7週間:回復感と心拍の結果が分かれた、若い競泳選手の研究の規模と期間である。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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