ダイエットの魚は肉より消化しやすい?筋トレの日のたんぱく源を選ぶ視点

ダイエット中、筋トレの日には肉より魚を選ぶべきなのか。消化の速さ、胃の軽さ、たんぱく質の利用、体重の変化を分けて考える。女性の食事試験や大規模な観察研究、魚の成分分析を読み、魚なら何でも同じという思い込みをほどきながら、普段の献立で確かめたい条件を示す。

筋トレ用の着替えを用意してから、夕食の焼き魚を箸でほぐす。肉より簡単に身が崩れるのを見ると、胃の中でも早く消化されそうに思える。このあと筋トレをするなら、肉のおかずより魚を選ぶべきなのだろうか。検索すると「魚は消化がよい」「ダイエットには白身魚」と並ぶ。けれど、ほぐれやすい身と、体内でたんぱく質が利用される速さは、同じ物差しではない。

答えの芯は、魚をたんぱく源の選択肢にできても、「肉より速く消化されるから筋トレの日に優れる」と一律には決められない、ということだ。閉経前の女性で白身魚に置き換えた試験は血中脂質を、乳幼児に魚由来のたんぱく質を与えた試験は成長を評価している。乳幼児の成長の結果は、18〜39歳の女性の運動前の食事へそのまま当てはめられない。これらが評価したのは血中脂質と成長であり、消化時間の順位ではない。[4][8]

また、魚の脂質量は魚種によって異なる。養殖淡水魚の成分分析では、魚種によってたんぱく質と脂質の含有量に幅があった。[12] 献立を選ぶときには、食材の名前、調理された料理、食べたあとの感覚を別々に見る。そのほうが、魚に期待を全部背負わせずに済む。

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「消化しやすい」で何を知りたいのか

「消化しやすい魚を食べたい」と思うとき、本当に困っていることを言葉にしてみたい。運動中に胃が重く感じるのか、食後の満腹感が長く続くのか、それとも筋肉のためにたんぱく質を無駄なく食べたいのか。この問いの違いを残したまま、食材の順位だけ探しても献立は決めにくい。

胃が軽いという感覚を知りたいなら、必要なのは食後の体感の比較である。たんぱく質が利用される程度を知りたいなら、それを測った比較が必要になる。体重の変化を知りたいなら、体重を追った研究を見る。研究の結果には宛先がある。別の宛先の結果を持ってきても、同じ答えにはならない。

たとえば魚由来のたんぱく質を含む食事と通常の食事を比べた乳幼児の試験では、成長に有意な差がなかった。[4] 乳幼児の成長を比較した結果であり、18〜39歳の女性の食後の胃の感覚にはそのまま当てはめられない。[4] これは、魚由来のたんぱく質を食事に利用できるという話にはつながる。しかし「魚のほうが胃から早く出る」「運動前の不快感が少ない」という話へは飛べない。評価したのは成長であり、運動前の胃の感覚ではないからだ。

この区別は細かすぎるようで、実際の買い物では役に立つ。「今日は胃の重さが気になる」と「今日はたんぱく源を用意したい」では、確認したいことが違う。前者なら食べる場面を振り返り、後者なら献立に何を入れるかを考える。魚か肉かを決める前に、解きたい問題を絞るのである。

筋トレ向けの粉末たんぱく質の比較は、既存記事「女性の筋トレにソイプロテインは向いている?乳由来との比較で選ぶ前に読む」に譲る。また、必要な量の基準は隣の記事「女性の筋トレのタンパク質量は体重だけで決める?減量中の基準を読み解く」の問いである。ここでは、普段のおかずとして魚を選ぶ判断に焦点を置く。

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同じ魚でも、同じ栄養のまとまりではない

カンボジアで販売される養殖淡水魚を調べた研究では、10魚種について成分を分析した。たんぱく質は魚100gあたり16.08〜21.91g、脂質は1.60〜17.82gだった。[12] これは食材を分析した研究であり、人に食べてもらって消化や運動の成績を比べた試験ではない。

それでも、「魚なら栄養の構成はだいたい同じ」という考えを点検するには役立つ。たんぱく質の範囲と脂質の範囲は別々に示されている。脂質の少なさを選びたいのか、たんぱく源として食べたいのかを混ぜると、どちらの数字を見ているのか曖昧になる。魚という売り場の区分は、栄養成分表の代わりにはならない。[12]

この数値を、そのまま日本のすべての魚に当てはめることも避けたい。研究の対象はカンボジアの養殖淡水魚である。[12] 自分が買おうとしている海の魚や加工されたおかずについては、その料理の表示や内容を確認するほうが直接的だ。研究で得た範囲は、特定の食材集団の姿を示している。

また、魚の切り身を選ぶ場面と、完成した魚料理を選ぶ場面は違う。献立メモには「魚」とだけ書かず、焼き魚、煮魚、揚げた魚など、実際に食べた料理名を残したい。これは調理法ごとの消化の順位をつけるためではない。あとで自分の食事を振り返るとき、何を食べたのかを同じ条件で思い出すためだ。

脂質の少ない魚を食べた日はよい日、脂質を含む魚を食べた日は悪い日、という採点も要らない。ここでの成分分析は、脂質の多い魚を禁止する試験ではない。[12] 数字は食材の違いを知る道具であり、食事の善悪を判定する札ではない。食べられるものの候補を減らす前に、選ぶ目的を確認したい。

女性の置き換え試験は、魚の圧勝ではなかった

閉経前の女性14人を対象としたクロスオーバー試験では、脂質の少ない白身魚と、牛肉・豚肉・子牛肉・卵・乳製品を含む食事を比べた。クロスオーバーとは、同じ参加者が異なる食事条件を経験する比較方法である。食事のエネルギーをそろえ、たんぱく質20%、炭水化物50%、脂質30%の構成で評価している。[8]

ここで大事なのは、魚の追加ではなく、たんぱく源の置き換えを比べた点だ。食事全体を組み、他の動物性食品を白身魚に置き換えている。[8] 仕事帰りにおかずを買う場面でも、「いつもの食事に魚を足す」のか「いつもの主菜を魚に替える」のかを分けて考えると、研究との距離が見えやすい。

試験では、魚以外の動物性食品を含む食事で、試験前と比べて血中の総コレステロールなどが低下した。一方、白身魚の食事では同じ反応はみられなかった。白身魚の食事は比較食に対して、超低密度リポたんぱくに含まれる中性脂肪が低く、低密度リポたんぱくに含まれる中性脂肪やアポたんぱくBは高いなど、指標によって方向が異なった。[8]

リポたんぱくとは、ここでは血液中の脂質を運ぶ粒子のことである。この試験の結論は、条件をそろえた食事で白身魚に置き換えた際の、血中脂質の構成の改善は小さいというものだった。[8] 「魚に替えれば血液の数字は全部よくなる」という単純な筋書きには合わない。小さな試験であり、閉経前の女性という対象も添えて読む必要がある。

魚由来のたんぱく質と血中脂質を扱うレビューでも、ウサギの実験では一緒に与えた脂質の由来によって結果が変わり、人の比較では閉経前と閉経後の女性について異なる反応が紹介されている。[9] ウサギや閉経後の女性の反応は、18〜39歳の女性にそのまま当てはめられない。[9] たんぱく源だけを抜き出すと、食事全体の条件を見落とす。

この結果は「肉を選ぶべき」という逆向きの判定でもない。血中脂質の指標がすべて同じ方向には動かなかった、という具体的な話である。[8][9] 消化の速さ、筋トレ後の回復、体脂肪の減少を、この試験の結論として受け取ることはできない。魚を選ぶ理由は持てるが、その理由を研究が測ったものとそろえたい。

試験の食事条件には、脂質の種類の比率も含まれていた。魚以外の動物性食品を含む食事で4週間後にみられた変化について、研究者は脂質の構成の変化が関係した可能性を挙げている。[8] したがって、食材の交換だけを切り抜いて読むより、交換と一緒にそろえられた条件を確認したい。肉から魚への矢印だけを書いた図では、その部分が消えてしまう。

普段の食事を思い浮かべるなら、比較の相手も具体的にする必要がある。この試験で白身魚の相手になったのは、肉だけでなく卵や乳製品を含む食事だった。[8] 「魚対肉」という短い表現は検索には便利でも、試験の比較そのものより狭い。自分が替えようとしている主菜と、研究が替えた食品群が同じかを考えると、結果をそのまま借りすぎずに済む。

さらに、特定の指標で差が出たことと、食事全体として大きな改善があったことも分けたい。白身魚への交換でみられた血中脂質の変化を、研究は全体として小さな改善と評価している。[8] 好ましい向きの結果だけを目立たせると、この評価を取り落とす。数字の大小に目を奪われる前に、研究が比べた全体の姿を読む姿勢が必要になる。

数字で読む魚のたんぱく源研究

10魚種:カンボジアの養殖淡水魚を対象にした成分分析である。[12]

16.08〜21.91g/100g:その魚種群で測定されたたんぱく質量の範囲である。[12]

1.60〜17.82g/100g:同じ分析の脂質量の範囲で、消化時間の数字ではない。[12]

14人:閉経前の女性を対象とした白身魚への置き換え試験の参加者数である。[8]

441人・6か月:魚由来の分離たんぱく質と通常食を比較した乳幼児試験の対象人数と期間である。[4]

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