残業後の夕食は、同じ量でも太りやすいのか。食事量や睡眠をそろえた比較試験、夜食と肥満を追った観察研究から、空腹感、脂肪の利用、体重の変化を読み分ける。早い時間に食べても代謝が改善しなかった結果も取り上げ、体内時計と生活の都合を踏まえて、食事時刻を見直す手がかりを示す。
帰宅してようやく夕食を温めたところで、時計を見る。食べたい気持ちと「この時間に食べたら太るのでは」という気持ちが、同じ食卓につく。昼間と同じ献立でも、夜になると皿に言い訳まで載せたくなる。
食事の時刻を調べた研究には、遅い食事で空腹感や代謝が変わった試験がある一方、早い時間帯に食べても代謝指標の改善を確認できなかった試験もある。[6][8] 問いは、夜の食事が善か悪かではない。どんな人が、何を同じにして、どの時刻へ動かしたとき、何が変わったかである。
間食の回数や外食の選び方は、この特集の別の記事に譲る。ここでは食べる量と時刻をできる限り分け、夕食、眠る時間、体の内側の時計の関係を読む。帰りの電車を早められない日にも、研究の読み方までは他人任せにする必要はない。

「遅い」は腕時計と体内時計で意味が違う
体内時計とは、体の働きに日内のリズムをつくる仕組みである。エネルギー代謝と食欲に関わるホルモンにも概日リズム、つまり日々繰り返す時間の波があり、睡眠や食事などの行動とその波が合わなくなる状態を、概日リズムのずれと呼ぶ。食事時刻を扱ったレビューでは、夜間勤務だけでなく、日常生活の睡眠や食事時刻のずれも、この問題に関わると整理されている。[1]
レビューは、各人の内側のリズムに合う早い食事を、今後の介入試験で検証すべき候補として挙げている。「夜は代謝が止まる」という説明とは異なり、行動と体内時計の対応が論点である。[1]
それを具体的に示したのが、18〜22歳の110人を対象にした横断研究である。横断研究は、ある期間の生活と体の状態の関連を調べる方法で、食事を遅くした結果として脂肪が増えるかを実験するものではない。研究では普段の食事を7日間、時刻付きの写真で記録し、体脂肪と、メラトニンというホルモンが出始める時点を調べた。[5]
メラトニンの分泌開始は、この研究で生物学的な夜の始まりを捉える目印に使われた。体脂肪の多い群は少ない群に比べ、摂取エネルギーの大部分を、この目印に1.1時間近い時点でとっていた。ところが腕時計上の食事時刻には、群の間で有意な違いがなかった。体脂肪との関連が見えたのは、時計の数字よりも、体内時計に対していつ食べたかだった。[5]
同じ時刻の夕食でも、普段早く眠る人と夜型の人では、内側の夜との位置関係が違う可能性がある。この研究は若い成人の日常生活を30日間調べたもので、結果はその対象での関連として読む。[5]
朝型と夜型の違いを扱った系統的レビューでは、健康な成人を対象とする24研究が採用され、夜型は朝型より過体重や肥満、好ましくない代謝状態を伴いやすいと整理された。総エネルギーや主要な栄養素の摂取量は似ていても、夜型では摂取が夜へ偏る傾向があり、食行動や食品選択の違いも重なっていた。[7]
このレビューでは、夜型の人の食事時刻と食品選択が重なっている。時刻、食べ物、生活の制約が同時に動いているため、それぞれの影響を切り分けることが研究上の課題になる。[7] 自分の生活を見直す際にも「夕食が遅い」の横に、起床と就寝、昼の食事を置いて眺めたい。時刻を記す目的は、生活の組み合わせを見えるようにすることである。
この横断研究では、性別を調整した分析でも、メラトニンの分泌開始に対する食事時刻が体脂肪率とBMIに関連していた。一方、腕時計上の食事時刻、摂取エネルギー量、栄養素の構成、活動や運動の水準、睡眠時間は、これらの体格指標と関連しなかった。食事の写真と実験室での測定を組み合わせ、普段の暮らしの時刻と体の内側の時刻を照合した点が、この研究の特徴である。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
同じ食事を遅らせると、空腹と夜の代謝は変わるか
時刻そのものに近づくには、食べる量などをそろえて比べる必要がある。過体重・肥満の成人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、栄養摂取、身体活動、睡眠、光への曝露を厳密に管理し、早い食事と遅い食事を比較した。無作為化は条件の順番などを偶然に割り振ること、クロスオーバーは同じ参加者が両方の条件を経験する方法である。[6]
遅い食事では空腹感が増え、食欲を調節するホルモンの関係が変化した。起きている間のエネルギー消費と、日内の深部体温も低下した。脂肪組織の遺伝子の働き方には、脂肪の分解が減り、脂肪を蓄える方向と整合する変化があった。[6] 食事の量だけでは説明しきれない経路を、人の管理下の実験で探った結果である。
この研究の要約では、空腹感や消費エネルギーの変化量は報告されていない。調べたのは空腹、消費、脂肪組織の反応であり、長期の体重増加は測定の対象から分けて読む。[6]
夕食に絞った別の無作為化クロスオーバー試験には、健康な男女20人が参加した。平均年齢は26歳で、夕食を18:00または22:00にとり、睡眠時間帯は23:00〜7:00に固定した。食事のエネルギーと栄養素の構成は両条件でそろえられた。[12]
22:00の夕食では、食後の血糖が高くなり、血中の中性脂肪が頂点に達する時点が遅れ、食事由来の脂肪酸の酸化が低下した。酸化とは、ここでは脂肪をエネルギー源として利用する過程を指す。これらの変化は、普段早く眠る参加者でより目立った。睡眠の構造には影響がなかったが、血中コルチゾールは増えたと報告されている。[12]
この試験は、寝る直前に食べるという現実の場面を考える材料になる。夕食を遅らせれば、食後の時間帯と眠る時間帯も重なる。比較した18:00と22:00は、睡眠時間帯を固定した実験の条件である。[12]
この試験の著者らは、こうした代謝の変化が慢性的に繰り返されれば肥満を促す可能性を示している。実際に測ったのは夜間の反応であり、食後の血糖、脂肪の利用、長期の体重を区別する必要がある。[12]
脂肪の利用と、消費カロリーと、体重は分けて読む
食事時刻を遅らせた管理下の試験でも、すべての代謝指標が同じ方向に動くわけではない。20〜49歳の成人を対象にした無作為化クロスオーバー試験では、平均BMIが30.4の成人7人(男性3人、女性4人)が完了した。BMIは体重を身長の2乗で割った体格の指標である。平均年齢は約37歳で、食べる時間帯を9:00〜19:00と13:00〜23:00に分けた。両条件の食事可能な時間幅は同じで、就寝時間帯も固定されていた。[17]
食事を4時間遅らせると、夕食後の脂肪酸化が減り、糖質の利用へ寄る変化が見られた。一方、24時間のエネルギー消費には条件間の違いがなかった。[17] 「脂肪を使う割合が少なくなる」と「使うエネルギーの総量が減る」は、同じ文にまとめられない結果である。
この違いは、食事時刻の情報を読むときの大事な分岐になる。先ほどの試験は起きている間の消費を調べ、こちらは24時間の消費を比べた。[6][17] 測った時間帯も参加者も違うため、起きている間の消費と、睡眠を含む総消費の結果を、それぞれの条件に沿って読む。むしろ、同じ「代謝」という見出しの下で、何を測ったかを確認する価値がある。
さらに、この試験を完了した人数は7人である。[17] 精密に測った実験は仕組みを探る力を持つが、年齢、性別、生活時間の異なる大勢にどれくらいの効果があるかを決めるには小さい。食後に使われた燃料の変化を、長期の減量の保証へ変えるには、測定の対象を飛び越えてしまう。
この試験の就寝時間帯は23:30〜8:00だった。各条件の3・4日目と14・15日目に、代謝を測る部屋で23時間の測定を行い、24時間の指標と食後の指標を解析している。夕食と間食の後には、呼吸から推定する糖質と脂肪の利用の比が糖質側へ動き、糖質の酸化は両方の食後で増えた。脂肪の酸化が低下したのは夕食後だった。食後の変化を細かく見ることと、1日の総消費を評価することを併せた設計である。[17]
数字で読む食事時刻の研究
110人:体内時計に対する食事時刻と体脂肪の関連を調べた若い成人の横断研究。[5]
1.1時間:体脂肪の多い群で、主な摂取が生物学的な夜の始まりに近かった差。[5]
18:00と22:00:健康な20人で比較した夕食時刻。長期の体重差を表す数字ではない。[12]
7人:食事を4時間遅らせた代謝試験の完了者。24時間の消費エネルギーには差がなかった。[17]
−0.26kg:12週間の時間制限食試験での群間体重差。95%信頼区間は−1.30〜0.78kgで、有意差なし。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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