連載「その常識、研究では?」全10回の第2回です。

翌日や翌々日に来る筋肉痛を、効いた証拠として受け取っている方は多いと思います。逆に「今日は痛くならなかったから甘かったのだろう」と考えることもあります。この感覚は身体の実感に基づくぶん、手放しにくいものです。

けれども研究に当たってみると、この指標は思っていたよりもずっと当てにならないことが分かります。結論を先に書きます。遅発性筋痛の強さは、筋の損傷の大きさすら正確には反映しておらず、筋肥大の大きさを予測する指標としても使えない。痛みは「慣れていない動作をした」ことの目印であって、「効いた」ことの目印ではない——これが現時点での要約です。

第1回で扱った超回復と同じく、ここでも「実測された現象」と「その現象に後から付けられた意味」を分けて読む必要があります。

その常識研究では 第2回 筋肉痛は効いた証拠か遅発性筋痛と筋肥大の関係|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

「痛くならないと効いていない」という感覚

遅発性筋痛(delayed onset muscle soreness、以下DOMS)は、慣れない運動、とくに筋肉が引き伸ばされながら力を出す局面(エキセントリック収縮)の多い運動のあと、数時間から1日ほど遅れて現れ、2〜3日でピークに達し、おおむね数日で軽快する痛みです。

この痛みが「効いた証拠」として語られる背景には、二つの前提があります。ひとつは、痛みの強さが筋の損傷の大きさを表しているという前提。もうひとつは、その損傷が修復されることで筋肉が太くなるという前提です。前者は測定の問題、後者は機序の問題で、どちらも実際に検証されています。そして結果は、いずれも前提を支持していません。

出自——乳酸説から微小損傷説へ

20世紀のあいだ、DOMSの原因としてまず広まったのは乳酸の蓄積という説明でした。しかし乳酸は運動後おおむね1時間以内に元の水準へ戻るため、1日以上遅れて現れる痛みの原因としては時間が合いません。この説明は現在では否定されています。

代わって定着したのが、筋線維の微細な損傷とそれに続く炎症という説明です。実際、慣れない運動のあとには筋力の低下、可動域の減少、血中クレアチンキナーゼの上昇といった変化が起きます。ここまでは観察された事実です。問題は、この「損傷」と「痛み」と「筋肥大」の三者が、それぞれ別々に測れるにもかかわらず、ひとつながりの物語として語られてきたことにあります。

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痛みは損傷の大きさを反映していない

この三者を切り離して測った研究のうち、規模の大きいものを見てみます。

Nosaka K, Newton M, Sacco P. Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2002;12(6):337-346.

男子学生110名が、肘を曲げる筋群に対して最大エキセントリック収縮を12回、24回、または60回行いました。回数を増やせば損傷は大きくなるはずで、実際そうなりました。24回と60回の群は、12回の群より最大等尺性筋力の低下も、肘関節角度の変化も、血漿クレアチンキナーゼ活性の上昇も大きく、回復も遅れました(P<0.05)。

ところが痛みのほうは、そうなりませんでした。筋を押したときの痛みと、肘を曲げたときの痛みについては、12回の群と24回の群、12回の群と60回の群のあいだに有意差がありませんでした。つまり5倍の量をこなしても、痛みは比例して強くならなかったということです。痛みと他の損傷指標との相関も、統計的に有意なものはあったものの弱く(r<0.32)、押したときの痛みに至ってはどの指標とも有意な相関を示しませんでした。著者らは、DOMSは筋損傷と炎症の程度を示す指標としては不良であると結論づけています。

Chen TC, Yang TJ, Huang MJ, et al. Damage and the repeated bout effect of arm, leg, and trunk muscles induced by eccentric resistance exercises. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2019;29(5):725-735.

部位ごとの食い違いを示した試験もあります。運動習慣のない男性15名(20〜25歳)が、腕・脚・体幹の9種目について、最大筋力の80%の負荷で10回×5セットのエキセントリック運動を1回のセッションで行いました。最大等尺性筋力は翌日に16〜57%低下し、4日後も13〜49%低下したままでした。重要なのは順位の食い違いです。筋力低下が最も大きかったのは肘の屈筋群・伸筋群と大胸筋でしたが、痛みが最も強かったのは肘の屈筋群・伸筋群と脊柱起立筋でした。脊柱起立筋は、強く痛んだにもかかわらず筋力低下は相対的に小さかったということです。

この試験では血中クレアチンキナーゼのピーク値が23,238〜207,304 IU/Lという極端な範囲に及びました。これは運動習慣のない人が慣れない最大エキセントリック運動を全身9種目まとめて行った、実験室でしか起きない条件による値で、日常のトレーニングで到達するものではありません。そして、この値が「よく効いた」ことを意味しない点にも注意が要ります。クレアチンキナーゼは筋細胞から血中へ漏れ出た酵素の量で、個人差が極端に大きく、筋肥大とは結びついていません。

痛みはどこから来ているのか

近年は、痛みの発生源そのものを問い直す議論も出ています。筋肉を包む筋膜などの結合組織は、筋線維そのものより痛みの受容器が豊富で、刺激したときの痛みも強いことが知られています。Wilke らは解剖学・組織学・実験的知見を整理し、DOMSが筋そのものではなく筋に付随する結合組織に由来する可能性を提示しました。

Tenberg S, Nosaka K, Wilke J. The Relationship Between Acute Exercise-Induced Changes in Extramuscular Connective Tissue Thickness and Delayed Onset Muscle Soreness in Healthy Participants. Sports Medicine – Open. 2022;8(1):57.

健常者11名が、一方の腕でエキセントリック運動、もう一方でコンセントリック運動(筋が縮みながら力を出す局面)を行った交差試験です。上腕二頭筋を覆う結合組織の厚みは、エキセントリック側で運動48時間後に17%、72時間後に14%、96時間後に15%増加しました(p<.05)。そして96時間後の厚みの増加は、触診時の痛みと相関していました(r=0.68、p<.05)。

参加者11名という小さな試験であり、これだけで痛みの起源が確定するわけではありません。ただ、「痛い=筋線維が壊れている」という直感的な対応づけが、測定の上では必ずしも成り立たないことを示す材料が、複数の方向から出てきているのは確かです。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

損傷は筋肥大に必要なのか

より重要なのは二つ目の前提、損傷と筋肥大の関係です。第1回でも触れた研究陣が、この点を10週間にわたって追跡しています。筋原線維タンパク質の合成が最も大きく上がるのは訓練の初期で、それは筋損傷が最大の時期と一致します。ところがその初期の合成量は、10週後の筋線維断面積の増加とは関連しませんでした。関連が見られたのは、損傷が収まったあとの合成量のほうでした(Damas らの2016年の報告)。

Damas F, Libardi CA, Ugrinowitsch C. The development of skeletal muscle hypertrophy through resistance training: the role of muscle damage and muscle protein synthesis. European Journal of Applied Physiology. 2018;118(3):485-500.

この総説は、一連の知見をこう整理しています。訓練開始から4セッション程度までの筋横断面積の増加は、損傷による腫脹が主である。10セッション程度でわずかな肥大が生じ、18セッション程度を経て「本当の肥大」が観察される。そして、初期の損傷を大きく起こさない方法でも、起こす方法と同程度の筋肥大と筋力向上が得られる。著者らは、筋損傷は筋肥大を仲介する過程でも増強する過程でもない、と結論づけています。

関連して、運動直後の筋の腫れ(一時的な張り)と、6週間後の筋肥大との関係を調べた研究もあります。若い男性22名が週3回、6週間の膝伸展トレーニング(80%1RMで3セット8回)を行った結果、初回直後の筋厚は8.3 ± 3.2%増加し、6週間後の筋厚は2.9 ± 2.6%増加しました(いずれもp<0.001)。両者には統計的に有意な正の相関がありましたが、その強さはρ=0.443(p=0.039)で、中程度にとどまります(Hirono らの報告)。運動直後の張りも、その後の肥大を言い当てる指標としては弱いということです。

慣れると痛まなくなる——反復効果

DOMSが指標として使いにくい理由はもうひとつあります。同じ運動を繰り返すと、2回目以降は痛みも損傷指標も大きく減る、という頑健な現象です。反復効果(repeated bout effect)と呼ばれます。

McHugh MP. Recent advances in the understanding of the repeated bout effect: the protective effect against muscle damage from a single bout of eccentric exercise. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2003;13(2):88-97.

この総説は、反復効果の機序として神経系・機械的性質・細胞レベルの適応を挙げ、いずれか一つでは説明しきれないと述べています。統合研究でも、この現象の一貫性は確かめられています。

Doma K, Matoso B, Protzen G, Singh U, Boullosa D. The Repeated Bout Effect of Multiarticular Exercises on Muscle Damage Markers and Physical Performances. Journal of Strength and Conditioning Research. 2023;37(12):2504-2515.

指標1回目と2回目の差(24〜48時間後)標準化平均差
筋肉痛・クレアチンキナーゼ2回目のほうが有意に小さい(p<0.001)0.51〜1.23
筋力・垂直跳び2回目のほうが有意に高い(p≦0.05)-0.27〜-0.40
酸素摂取量・主観的運動強度2回目のほうが有意に低い(p<0.05)0.28〜0.65

20件の研究を統合した結果です。ここで問題が生じます。トレーニングを続けている人ほど痛みは出にくくなるのに、筋肥大が止まるわけではありません。痛みを基準にすると、上達するほど「効いていない」という誤った読み取りになります。逆に、種目や角度を頻繁に変えて痛みを出し続けることは可能ですが、それは新しい動作に慣れていないことの表れであって、より大きな成長の証拠ではありません。エキセントリック局面そのものの扱いについてはエキセントリックとコンセントリックの比較を、筋肥大の中心的な過程については筋タンパク質の合成を扱った記事があります。

では痛みは何の指標なのか

痛みを和らげる介入の研究は、この問いに間接的な答えを与えてくれます。

Zainuddin Z, Newton M, Sacco P, Nosaka K. Effects of massage on delayed-onset muscle soreness, swelling, and recovery of muscle function. Journal of Athletic Training. 2005;40(3):174-180.

健常者10名(男性5名・女性5名)が、両腕で最大エキセントリック収縮を10セット×6回行い、片腕にだけ運動の3時間後に10分間のマッサージを受けました。結果、マッサージ側では痛みがおよそ30%軽減し、腫れも小さく、クレアチンキナーゼのピーク値も低くなりました(P<.05)。しかし筋力と可動域の回復には有意な効果がありませんでした。

痛みだけを動かして、機能の回復は動かせる場合と動かせない場合がある。この解離は重要です。痛みは筋で起きている物理的な事象そのものではなく、その事象を神経系がどう解釈したかの出力だと考えるほうが、データとの整合が取れます。

現在どこまで言えるか

  1. DOMSの強さは筋損傷の大きさを正確には反映しない。運動量を5倍にしても痛みは比例して増えなかった。
  2. 痛みの発生源は筋線維そのものではなく、筋を包む結合組織である可能性が指摘されている。ただし小規模な研究に基づく段階である。
  3. 筋損傷は筋肥大を仲介していない。損傷が小さくなってからのほうが、合成と肥大の関連は強い。損傷を大きく起こさない方法でも同程度の肥大が得られる。
  4. 同じ運動を繰り返すと痛みは大きく減る。続けている人ほど痛みが出にくくなるため、痛みを効果の指標にすると上達を過小評価する。
  5. 痛みだけを軽減しても、筋力や可動域の回復が伴うとは限らない。

研究の限界も書いておきます。ここで挙げた研究の多くは、若い健常者を対象とし、肘や膝の単関節運動を用い、数週間から10週間程度の期間で行われています。高齢者、長年鍛えている人、全身のトレーニングに同じ結果が当てはまるかは別に確かめる必要があります。また筋肥大の測定法(超音波・生検・画像)によって得られる数値も揺れます。とくに超音波は探触子を押し当てる圧で値が変わり、測定者の技量に左右されます。

出版バイアスにも触れておきます。一般に「差が出た」研究のほうが発表されやすく、その向きは「関連あり」を過大に見せる方向に働くはずです。それにもかかわらず、痛みと損傷・肥大の関連を否定する結果が主要誌に繰り返し掲載されているのですから、結論の向きは頑健だと考えてよいでしょう。

それでも実務的な読み替えははっきりしています。痛みが出たかどうかで前回の内容を評価しないこと。評価するなら、扱えた重量と回数、次の回にどれだけ動けるか、数か月単位での変化を見るほうが理にかなっています。強い痛みが出たときは、慣れない動作をしたという情報として受け取り、その部位の次の高強度は無理をしない。それ以上の意味を読み込む根拠は、現時点ではありません。

次回予告

第3回は「プロテインは運動後30分以内か——アナボリックウィンドウ」を扱います。運動直後の限られた時間だけタンパク質の吸収が高まる、という有名な話がどこから来て、直接比較した試験では何が起きたのかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「超回復」は本当にあるのか
  2. 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大(この記事)
  3. 第3回|プロテインは運動後30分以内か
  4. 第4回|重い重量でなければ筋肥大しないのか
  5. 第5回|限界まで追い込む必要はあるか
  6. 第6回|有酸素運動は筋肉を減らすのか——干渉効果
  7. 第7回|フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復
  8. 第8回|マシンとフリーウエイト、どちらが優れているのか
  9. 第9回|サプリメントは必要か——証拠水準を並べる
  10. 第10回|「効かせる」とは何か——意識の向け方と総括

出典

  1. Nosaka K, Newton M, Sacco P. Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2002;12(6):337-346.
  2. Chen TC, Yang TJ, Huang MJ, et al. Damage and the repeated bout effect of arm, leg, and trunk muscles induced by eccentric resistance exercises. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2019;29(5):725-735.
  3. Wilke J, Behringer M. Is “Delayed Onset Muscle Soreness” a False Friend? The Potential Implication of the Fascial Connective Tissue in Post-Exercise Discomfort. International Journal of Molecular Sciences. 2021;22(17):9482.
  4. Tenberg S, Nosaka K, Wilke J. The Relationship Between Acute Exercise-Induced Changes in Extramuscular Connective Tissue Thickness and Delayed Onset Muscle Soreness in Healthy Participants: A Randomized Controlled Crossover Trial. Sports Medicine – Open. 2022;8(1):57.
  5. Damas F, Phillips SM, Libardi CA, et al. Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophy only after attenuation of muscle damage. The Journal of Physiology. 2016;594(18):5209-5222.
  6. Damas F, Libardi CA, Ugrinowitsch C. The development of skeletal muscle hypertrophy through resistance training: the role of muscle damage and muscle protein synthesis. European Journal of Applied Physiology. 2018;118(3):485-500.
  7. Hirono T, Ikezoe T, Taniguchi M, et al. Relationship Between Muscle Swelling and Hypertrophy Induced by Resistance Training. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022;36(2):359-364.
  8. McHugh MP. Recent advances in the understanding of the repeated bout effect: the protective effect against muscle damage from a single bout of eccentric exercise. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2003;13(2):88-97.
  9. Doma K, Matoso B, Protzen G, Singh U, Boullosa D. The Repeated Bout Effect of Multiarticular Exercises on Muscle Damage Markers and Physical Performances: A Systematic Review and Meta-Analyses. Journal of Strength and Conditioning Research. 2023;37(12):2504-2515.
  10. Zainuddin Z, Newton M, Sacco P, Nosaka K. Effects of massage on delayed-onset muscle soreness, swelling, and recovery of muscle function. Journal of Athletic Training. 2005;40(3):174-180.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動後の痛みが1週間以上続く場合、痛みに加えて著しい腫れ・尿の色の濃い変化・強い脱力を伴う場合は、横紋筋融解症などの可能性があるため医療機関にご相談ください。

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