「男性と女性で、筋トレの効果は違うのか」——この問いには、いま明確な答えがあります。
どちらの数字を見るかによって、結論が逆になります。
30研究1,410名(男性651名、女性759名)を統合した解析が、この構造をそのまま示しています。
| アウトカム | 結果 | どちらが有利か |
|---|---|---|
| 相対的な下肢筋力 | g = −0.21(−0.33〜−0.10、p = .0003) | 女性 |
| 相対的な上肢筋力 | −0.29(−0.62〜0.04、p = .08) | 有意差なし |
| 相対的な筋サイズ | 0.10(−0.04〜0.23、p = .16) | 有意差なし |
| 絶対的な上肢筋力 | 0.48(0.09〜0.88、p = .016) | 男性 |
| 絶対的な下肢筋力 | 0.33(0.19〜0.47、p < .0001) | 男性 |
| 絶対的な筋サイズ | 0.45(0.23〜0.66、p < .0001) | 男性 |
著者らは、これを隠さずに書いています。
「我々の結果は、高齢者においてレジスタンストレーニングへの適応に性差が明らかであることを示す。しかしながら、レジスタンストレーニングへの性依存的な適応の解釈は、結果を絶対的な文脈で示すか相対的な文脈で示すかによって、大きく影響を受けることが明らかである。」
(Jones ら, 2020, Sports Medicine)

「絶対」と「相対」の違い
| 表し方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 絶対的な変化 | 何kg増えたか | 男性 +20 kg、女性 +12 kg |
| 相対的な変化 | 元の何%増えたか | 男性 +20%、女性 +24% |
もともとの筋力・筋量が大きい男性は、同じ割合で伸びても、絶対値では大きく伸びます。逆に女性は、絶対値では小さくても割合では同等かそれ以上になることがある。
どちらも正しい記述です。ただし「女性のほうが伸びる」「男性のほうが伸びる」という見出しは、どちらも片方の数字だけを取っています。
若年〜中年では、ほぼ差がない
18〜45歳を対象にした解析では、状況がさらにはっきりします。
Roberts BM, et al. Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2020. DOI: 10.1519/jsc.0000000000003521
| アウトカム | 効果量 | 判定 |
|---|---|---|
| 筋肥大(10研究12アウトカム) | 0.07 ± 0.06(p = .31、I² = 0) | 有意差なし |
| 上肢筋力(17研究19アウトカム) | −0.60 ± 0.16(p = .002、I² = 72.1) | 女性が有利 |
| 下肢筋力(23研究23アウトカム) | −0.21 ± 0.16(p = .20、I² = 74.7) | 有意差なし |
筋肥大の異質性はI² = 0——研究間のばらつきがまったくありません。これは珍しいほど揃った結果です。
著者らは「未訓練の女性は、男性より上肢筋力を増やす能力が高い可能性がある。この差がなぜ起きるのかを明らかにするには、さらなる研究が必要である」と述べています。
29研究を対象にしたベイズ統合も、同じ形です。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 絶対的な筋サイズの増加 | 0.19(95%最高密度区間 0.11〜0.28)=男性がわずかに有利、方向の確率100% |
| 相対的な筋サイズの増加 | 0.69%(−1.50%〜2.88%)=性差なし |
| 上肢の絶対的肥大 | 男性が有利 |
| 下肢の絶対的肥大 | 男性の有利は見られない |
| I型筋線維の肥大 | 男性がわずかに有利 |
| II型筋線維の肥大 | 性差なし |
結論は「我々の所見は、女性が男性と同様の筋肥大を起こす潜在能力を持つという理解を補強する(とくにベースラインからの相対的なサイズの増加を考慮した場合)」(Refalo ら, 2025, PeerJ)。
訓練経験の有無は、結果に影響しませんでした。

高齢者でも、構造は同じ
60歳以上に絞った36研究(男性602名、女性703名)の解析も、同じ「絶対 vs 相対」の分かれ方を示します。
| 指標 | 効果量 | 有利 |
|---|---|---|
| 絶対的な上肢筋力 | 0.81(0.54〜1.09、p < .001) | 男性 |
| 絶対的な下肢筋力 | 0.40(0.24〜0.56、p < .001) | 男性 |
| 絶対的な全身の除脂肪量 | 0.18(0.04〜0.33、p < .05) | 男性 |
| 相対的な上肢筋力 | −0.46(−0.77〜−0.14、p < .01) | 女性 |
| 相対的な下肢筋力 | −0.24(−0.42〜−0.06、p < .01) | 女性 |
| 四肢の筋サイズ、筋線維サイズ、身体パフォーマンス | 絶対・相対とも性差なし | |
(Hawley ら, 2023, Ageing Research Reviews)
身体パフォーマンス(歩行速度、立ち上がりなど)には、どちらの表し方でも差がありません。実生活に近い指標ほど、性差が消えるという構図です。
個別の試験でも確認されている
未訓練の男女18名に、7週間のバイセップスカールとスクワット(週2日、1RMの60〜70%、3〜4セット、休息120秒、限界まで)を行わせた試験があります。
| 所見 | 結果 |
|---|---|
| 絶対的な筋力向上 | 男性が大きい傾向(上肢 p = .055、下肢 p = .098)=いずれも有意に届かず |
| 相対的な変化 | すべての検査変数で性特異的な差なし |
| 筋肥大 | 中間広筋(女性群、p = .076)を除き、すべての筋で有意 |
| 筋の収縮特性(Dm) | 上腕二頭筋が男性12%・女性13.1%低下、大腿直筋が男性19.2%・女性12.3%低下(いずれも有意) |
結論は「レジスタンストレーニング後の初期の形態的・機能的・収縮的変化は男女で同様であり、上肢にも下肢にも性特異的な適応は存在しない」(Kojić ら, 2021, Scientific Reports)。

女性だけを対象にした統合
女性のみを対象にした初の統合が、2019年に公表されています。24研究が対象です。
| アウトカム | 効果量 | 出版バイアス補正後 |
|---|---|---|
| 上肢筋力 | g = 1.70(p < .001)=大 | g = 1.07=依然として大 |
| 下肢筋力 | g = 1.40(p < .001)=大 | g = 0.52=中程度に縮小 |
| 筋肥大 | g = 0.52(p = .002)=中 | — |
下肢筋力は、出版バイアスを補正すると1.40から0.52へ大きく縮みます。
調整変数の解析では——下肢筋力は「頻度」と「量」に有意に影響される(p < .001)、上肢筋力は「頻度」と「1種目あたりのセット数」に影響される(p < .01)、筋肥大にはいずれの調整変数も有意な影響なし。さらに監督つきのトレーニングは、監督なしより下肢筋力の適応に大きな影響を持つ(p = .05)という所見もあります(Hagstrom ら, 2019, Sports Medicine)。
なぜ「相対値」を見る意味があるのか
絶対値のほうが実感に近い、と感じる人は多いはずです。実際、スポーツの勝敗や日常で持てる荷物の重さは、絶対値で決まります。
では相対値を見る意味はどこにあるのか。「同じトレーニングに、身体が同じように反応しているか」を知りたいときです。
もともと筋量が多い人は、同じ割合で増えても絶対量が大きくなります。だから絶対値の差は「適応能力の差」ではなく「出発点の差」を反映している可能性があります。相対値はその影響を取り除いた比較になります。
この区別が実務で効いてくるのは、たとえば次のような場面です。
| 問い | 見るべき数字 |
|---|---|
| この人はトレーニングに反応しているか | 相対値 |
| 階段を上がれるようになるか、荷物を持てるようになるか | 絶対値 |
| 男女で指導法を変えるべきか | 相対値(適応の仕方が同じかを問うため) |
そして身体パフォーマンスの指標(歩行速度、椅子からの立ち上がりなど)では、絶対値でも相対値でも性差が出ていません。これは、実生活に近い動作ほど「筋力の絶対量」だけで決まらないことを示しています。
差があるとすれば、どこか
259回引用されているナラティブレビューが、性差の全体像を整理しています。
| 項目 | 所見 |
|---|---|
| 筋力差が明確になる時期 | 15歳前後 |
| 差が大きい部位・様式 | 下肢より上肢、伸張性より短縮性 |
| 差の原因 | 随意的な筋活性化の差ではなく、筋量とII型線維面積の差 |
| 筋損傷後 | 筋力低下と筋痛に性差なし |
| 傷害率 | 男性のほうが高い |
| 筋トレ後の変化 | 年齢と筋群によっては、女性のほうが相対的な筋力向上が大きい |
同じレビューは、行動面の差も報告しています——男性は挑戦・競争・社会的承認・筋量増大への意欲に動機づけられやすく、高強度と上肢の種目を好む。女性は魅力の向上・引き締め・体重管理に動機づけられやすく、監督つきと下肢の種目を好む(Nuzzo, 2022, Journal of Strength and Conditioning Research)。
2026年のナラティブレビューも同じ整理です——「男性は典型的に、より多い筋量とII型線維の割合の高さのため、より大きな絶対筋力を示す。しかしながら、相対的な筋力向上と筋肥大の反応は、性別間で概ね同等である」。加えて「女性は男性より疲労耐性が高く、とくに等尺性収縮で顕著。I型線維の割合が高いことが、持久能力の優位を部分的に説明する」(Cidrais ら, 2026, Sport Sciences for Health)。
著者らは、時間経過についての空白を指摘しています——「慢性適応の時間経過は、とくに女性において十分に研究されておらず、両性が時間をかけて同じ速度で進歩するかどうかは不明である」。
有酸素運動と組み合わせると
筋力トレーニングと持久系トレーニングを併用したときの「干渉効果」には、性差が見つかっています。59研究1,346名の統合です。
| アウトカム | 男性 | 女性 | 群間差 |
|---|---|---|---|
| 下肢筋力 | −0.43(−0.64〜−0.22)=干渉あり | 0.08(−0.34〜0.49)=干渉なし | p = .03 |
| 上肢筋力 | 性差なし | p = .67 | |
| パワー | 性差なし | p = .37 | |
| 最大酸素摂取量 | 性差なし | p = .13 | |
「有酸素をやると筋力が伸びにくくなる」という現象は、男性では確認され、女性では確認されていません。筋肥大については、データが不足していて結論が出せませんでした(Huiberts, 2023, Sports Medicine)。
種目別の効果を男女で比べた解析もあります——レッグプレスの筋力向上は、男性では併用トレーニング、女性ではレジスタンストレーニングで最大。ベンチプレスは男女とも併用が最大。脂肪量は、男性では持久系と併用で有意に減少したが、女性ではいずれの種目でも有意な変化なし。ただし著者らは「解析に含めた研究標本の少なさと、運動方法・参加者の年齢・運動期間の違いのため、これらの結果を裏づけることは困難である」と明記しています(Noh ら, 2024, Medicina)。
研究の歴史そのものに偏りがある
この分野の総説は、前提となる事情に触れています——「歴史的に、レジスタンストレーニングの研究は男性優位であり、女性特有の適応の理解に空白を生んできた」(Cidrais ら, 2026)。
2025年の総説も同様で、「歴史を通じて、文化的規範とステレオタイプが女性のレジスタンストレーニングを妨げてきた」と述べたうえで、機序を整理しています——「女性におけるレジスタンストレーニングへの生理学的適応は、男性と同様に主として神経内分泌系と免疫系によって媒介される。ただし、エストロゲン、テストステロン、成長ホルモン、IGF-Iといった性ホルモンを含む、いくつかの異なる主要経路を介する」。
そして推奨については「男性と女性へのレジスタンストレーニングの推奨は非常に似ており、目標に依存する。ただし女性において扱うべき特有の留意点がいくつかある」としています(Kraemer ら, 2025, Sports Medicine and Health Science)。
いま言えること
- 結論は「絶対値で見るか、相対値で見るか」で逆転する。統合の著者自身がそう書いている
- 絶対値では、男性が上肢筋力・下肢筋力・筋サイズのすべてで有利
- 相対値では、女性が上肢・下肢の筋力で有利、または同等
- 18〜45歳では、筋肥大に性差なし(0.07、I² = 0)
- 相対的な筋サイズの増加も性差なし(0.69%)
- II型筋線維の肥大には性差がない。I型では男性がわずかに有利
- 身体パフォーマンス(歩行速度など)には、どちらの表し方でも性差がない
- 筋力差の原因は、筋の活性化能力ではなく筋量とII型線維面積
- 筋損傷後の筋力低下と筋痛には、性差がない
- 女性は疲労耐性が高い。とくに等尺性収縮で顕著
- 併用トレーニングの干渉効果は、男性では確認され(−0.43)、女性では確認されていない
- 女性のみの統合では、下肢筋力が出版バイアス補正で1.40→0.52に縮む
実務的な結論は、単純です。
男女でプログラムを変える科学的な根拠は、ほとんどありません。負荷・量・頻度の原則は共通です。
「女性は軽い重量で回数を多く」という指導に、根拠はありません。筋肥大も筋力も、同じ原則で反応します。
数字の見せ方には注意してください。「男性のほうが伸びる」も「女性のほうが伸びる」も、同じデータから作れます。
そして、性別より個人差のほうがはるかに大きいのが実情です。2026年のレビューは「レジスタンストレーニングへの反応の実質的な変動の大きさを考えると、一般化された性別に基づく処方よりも、個別化されたトレーニングのアプローチが必要である」と結論しています。
出典
- Jones MD, et al. Sex Differences in Adaptations in Muscle Strength and Size Following Resistance Training in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. 2020. DOI: 10.1007/s40279-020-01388-4
- Roberts BM, et al. Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2020. DOI: 10.1519/jsc.0000000000003521
- Refalo MC, et al. Sex differences in absolute and relative changes in muscle size following resistance training in healthy adults: a systematic review with Bayesian meta-analysis. PeerJ. 2025. DOI: 10.7717/peerj.19042
- Hawley SE, et al. Evaluation of sex-based differences in resistance exercise training-induced changes in muscle mass, strength, and physical performance in healthy older (≥60 y) adults: a systematic review and meta-analysis. Ageing Research Reviews. 2023. DOI: 10.1016/j.arr.2023.102023
- Kojić F, et al. Resistance training induces similar adaptations of upper and lower-body muscles between sexes. Scientific Reports. 2021. DOI: 10.1038/s41598-021-02867-y
- Hagstrom AD, et al. The Effect of Resistance Training in Women on Dynamic Strength and Muscular Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Medicine. 2019. DOI: 10.1007/s40279-019-01247-x
- Nuzzo JL. Narrative Review of Sex Differences in Muscle Strength, Endurance, Activation, Size, Fiber Type, and Strength Training Participation Rates, Preferences, Motivations, Injuries, and Neuromuscular Adaptations. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022. DOI: 10.1519/jsc.0000000000004329
- Cidrais M, et al. Sex differences in resistance training: a brief narrative review. Sport Sciences for Health. 2026. DOI: 10.1007/s11332-026-01650-8
- Huiberts RO. Concurrent Strength and Endurance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis on the Impact of Sex and Training Status. Sports Medicine. 2023. DOI: 10.1007/s40279-023-01943-9
- Noh K, et al. Effects of Exercise Type on Muscle Strength and Body Composition in Men and Women: A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicina. 2024. DOI: 10.3390/medicina60071186
- Kraemer W, et al. Evolution of resistance training in women: History and mechanisms for health and performance. Sports Medicine and Health Science. 2025. DOI: 10.1016/j.smhs.2025.01.005
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。効果量は集団の平均であり、個人への当てはまりを保証するものではありません。統合された研究の多くは健常者を対象としています。妊娠中・産後の方、骨粗鬆症や関節疾患のある方、高血圧や心疾患の既往がある方は、運動の内容と量について主治医にご相談ください。過度な減量や月経が止まった状態での高強度トレーニングは、骨と将来の妊よう性に影響します。月経が3か月以上ない場合は婦人科を受診してください。






