学校でのヨガが成績を上げるかを、1年間かけて調べた試験があります。ニューヨーク市の公立高校で112名をクラス単位で無作為化し、ヨガか体育のどちらかを1学年分行いました。主要評価項目は年間の平均成績(GPA)です。
結果は、次の一文に要約されています。
「ヨガが学業成績を改善するという本研究の主要仮説は、intent-to-treat 解析によって支持されなかった。」
ただし、話はここで終わりません。参加回数を考慮すると、結果が変わります。

成績:主要仮説は支持されなかった
Hagins M, et al. Yoga Improves Academic Performance in Urban High School Students Compared to Physical Education: A Randomized Controlled Trial. Mind, Brain, and Education. 2016. DOI: 10.1111/mbe.12107
媒介要因として、自己調整、実行機能、well-being、マインドフルネスも測定されています。
| 解析 | 結果 |
|---|---|
| Intent-to-treat(割り付けどおりの解析) | 主要仮説は支持されなかった |
| クラス割り付け × クラス参加回数の交互作用 | 有意 |
| 参加回数が多い生徒(両群49回の参加時点) | ヨガ群の平均GPAが推定 2.70 高い(効果量 0.31) |
この結果の読み方には注意が必要です。参加回数は、無作為に割り付けられた変数ではありません。よく参加する生徒は、もともと意欲が高い、家庭環境が安定している、体調が良い——といった特性を持つ可能性があります。そうした生徒は、ヨガを受けなくても成績が良いかもしれません。
論文の題名は「ヨガは学業成績を改善する」ですが、無作為化の利点を保った解析では、そうなりませんでした。題名と主解析の結果が一致していない例です。
学校の運営指標では、何が動いたか
Frank JL, et al. Effectiveness of a School-Based Yoga Program on Adolescent Mental Health and School Performance: Findings from a Randomized Controlled Trial. Mindfulness. 2017. DOI: 10.1007/s12671-016-0628-3
都市部の学区の159名を、ヨガをベースにした社会情動的ウェルネス促進プログラム(Transformative Life Skills)と、通常どおりの対照条件に無作為化したものです。
| 動いたもの | 動かなかったもの |
|---|---|
| 無断欠席の有意な減少 | 学業成績(成績評価) |
| 居残り(detention)の有意な減少 | 停学 |
| 学校への関与(engagement)の増加 | 身体化(somatization) |
| 感情調整・肯定的思考・認知的再構成の増加 | 全般的な感情 |
無断欠席と居残りは減ったのに、停学は減らず、成績も変わりませんでした。
この分かれ方には、理解できる筋があります。無断欠席や居残りは日常的で頻度の高い行動、停学は重大で頻度の低い事象です。頻度の低い事象を動かすには、より大きな標本と長い期間が必要になります。
生徒による受容性の評価は良好で、多くの参加者が方略を社会的に妥当だと認識しました。
実行機能:効果量は小さい
Wilkin K, et al. The effects of school-based yoga on the executive functioning skills of children between three and seven years of age. A meta-analysis of existing research. Mental Health and Physical Activity. 2024. DOI: 10.1016/j.mhpa.2024.100643
3歳から7歳を対象に、対照群を置いた研究を集めた統合です。7研究・1,080名が基準を満たしました。
| アウトカム | 効果量 Cohen’s d(95%CI) | 判定 |
|---|---|---|
| 実行機能全体 | 0.24(0.10〜0.39)p < 0.001 | 小さい |
| ワーキングメモリ | 0.41(0.11〜0.70)p = 0.007 | 小さい |
| 抑制制御 | 0.18(0.01〜0.34)p = 0.033 | きわめて小さい |
| 認知的柔軟性 | データ不足で解析できず | |
抑制制御の信頼区間は 0.01〜0.34 で、下限がほぼゼロです。著者らも「この集団における学校ベースのヨガが実行機能に与える効果について決定的な結論を導く前に、さらに質の高い研究が必要であることを認める」としています。
より広く集めた総説では
1980年から2014年10月31日までを検索した総説では、9つの無作為化比較試験が基準を満たしました。効果量が認められたのは気分の指標、POMS 尺度の緊張と不安、自尊心、記憶です。著者らは「将来の研究には、ヨガ介入のより高い標準化と、子どもへの適合性が求められる」と結んでいます(Ferreira-Vorkapic ら, 2015, Evidence-based Complementary and Alternative Medicine)。
5歳から18歳を対象とした無作為化比較試験を7つのデータベースから集めた総説では、39試験が基準を満たしました。7か国で実施され、大半は米国、大半が白人中心の標本で、多くが学校で行われています。
「5つの研究を除くすべてにおいて、ヨガは3領域(心理・行動、認知、生理・身体機能)の少なくともひとつでアウトカムを改善した。」
著者らの提言には、「無効(null)あるいは有害(iatrogenic)な介入効果の報告」が含まれています(Miller ら, 2020, Mindfulness)。効果がなかった結果も報告すべきだ、という指摘が必要な状況だということです。
2008年1月から2022年5月までの21論文を対象とした総説も、「小さな標本サイズや介入に関する情報の乏しさといった方法論的欠陥」を指摘しつつ、「学校において、メンタルヘルス問題への予防的・治療的手段としてヨガ介入が実施されうる」としています(Khunti ら, 2022, Clinical Child Psychology and Psychiatry)。

体育と比べると、どうなるか
学校でヨガを行う場合、比較対象は「何もしない」ではなく「体育」です。直接比較した試験を見ます。
Telles S, et al. Effect of yoga or physical exercise on physical, cognitive and emotional measures in children: a randomized controlled trial. Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health. 2013;7:37. DOI: 10.1186/1753-2000-7-37
8歳から13歳の98名を、ヨガ群と運動群に49名ずつ無作為化しました。どちらも45分・週5日・3か月です。評価は盲検で行われました。
| 結果の種類 | 内容 |
|---|---|
| 群間で有意だった差 | 1つだけ。社会的自尊心が、ヨガより運動のほうが高かった(p < 0.05) |
| 両群とも改善 | BMI、腹筋運動の回数、ストループ課題の色・語・色語の呼称 |
| ヨガ群のみ改善 | プレートタッピング、全体的・一般的・親関連の自尊心 |
| 運動群のみ悪化 | バランス |
群間の有意差は1つだけで、しかも運動群に有利でした。他の変化はすべて「各群内での前後比較」です。前後比較は、時間経過や慣れの効果を含むため、群間比較より弱い証拠になります。
著者らの結論も控えめです——「ヨガと運動は、学校生活への有用な追加であり、運動は社会的自尊心を改善する。」
一方、より新しい試験では、体育に対するヨガの優位が報告されています。中国西部で131名の児童を、ヨガ群41名・体育群41名・対照群45名に無作為化し、40分・週2回・12週間行ったものです。指導者と評価を行う教師の双方が盲検化されています。
結果は、ヨガが体育と対照群の両方に対して注意に有意な正の影響を持ち、注意の配分・転換・範囲・安定性のいずれでも体育より優れていたというものでした(Yang ら, 2025, BMC Public Health)。
5歳児45名を対象とした試験でも、ヨガ群(15名)は体育群(15名)・対照群(15名)と比べ、Bonferroni-Holm 補正の後も、不注意と多動の行動に有意な正の影響を示しました。視覚運動精度では体育群より、視覚的注意では対照群より優れています(Jarraya ら, 2019, Frontiers in Psychology)。1群15名という規模です。
学業成績を主要アウトカムに置いた大規模な試験では差が出ず、注意や行動を主要アウトカムに置いた小規模な試験では差が出る——という構図が見えます。
インドで実施された大きめの試験
インドの2地域で200名の生徒を、ヨガ群と運動群に均等に無作為化した試験があります。評価には Strength and Difficulties Questionnaire と学業スコアが用いられました。
ヨガ群では、行動上の問題が臨床的リスク水準から正常水準へ移行したことが報告され、学業成績の向上、情緒問題・行為上の問題・多動・仲間関係の問題・全体的な困難症状の軽減においてヨガが運動を上回ったとされています(Pandey ら, 2024, Journal of Emotional and Behavioral Disorders)。
同じ研究グループによる300名・14週間の3群試験では、結果の構造が異なります。
| 群 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| A | ハタヨガ | C群と同程度の改善 |
| B | ハタヨガ+古代インドの学習原理 | すべての指標で最大の改善(p < .05) |
| C | 運動 | A群と同程度の改善 |
ヨガ単独(A群)と運動(C群)は同程度で、差をつけたのは学習原理を組み合わせたB群でした(Pandey ら, 2025, Improving Schools)。ヨガという身体実践そのものではなく、組み合わせた教育的要素が効いた可能性を示します。
学業成績の低い12〜14歳の女子89名を、ヨガ群45名と運動群44名に無作為化した試験では、両群とも文字抹消課題・逆唱・特性不安で有意に改善し、ヨガ群では状態不安を除くすべての測定項目が有意に改善しました。群×時間の交互作用が有意だったのは3項目です(Pradhan ら, 2022, Complementary Therapies in Clinical Practice)。ここでも、運動にも同様の改善が出ている点は見落とせません。
特別な支援を要する子ども
自閉スペクトラム症のある児童43名を4つの特別支援学校から集め、45分・12週間の構造化されたヨガを行った無作為化比較試験があります。
| 有意な変化があった項目 | p値 |
|---|---|
| 社会的応答性のうち社会的コミュニケーション | p = .021 |
| 問題行動のうち易刺激性 | p = .041 |
| 問題行動のうち社会的引きこもり | p = .047 |
3項目とも p = 0.02〜0.048 と、ぎりぎり有意の水準です。43名という規模で、2つの尺度の複数の下位項目を検定していることを考えると、慎重に読む必要があります(Shanker ら, 2022, Explore)。
5〜19歳の1,000名超のデータを含む16論文の統合的レビューは、精神症状の緩和、自己制御と行動の変化、認知機能の改善、弛緩の洗練、well-being の向上の5テーマで一貫して肯定的な結果を報告しています。ただし結論は「これらの知見をさらに検証し確固たるものにするために、より頑健なエビデンスを提供する将来の研究が切実に必要である」というものです(Kerekes ら, 2024, Journal of Psychiatric Research)。
実際の学校での実施
研究環境ではなく、実際の学校でどう機能するかを見た評価もあります。実施の忠実度が最も高かった学校の461名と、条件をそろえた比較校の420名を比べた非無作為化研究です。
介入校の子どもは感情調整、スペリング、算数で相対的な改善を示しました。著者らは「実生活の場における実施上の困難を特定することが不可欠である」とし、学校職員が実施できるよう訓練することが実施を促進するかもしれないと述べています(McCurdy ら, 2024, PLOS ONE)。
ここで注意すべきは、比較対象が「忠実度が最も高かった学校」に限られている点です。うまく実施できた学校だけを取り出せば、結果は良く出ます。
より大規模な実施例としては、スリランカ北部の4つの教育区で6か月間行われた非無作為化対照試験があります。8年生を対象に、ゆっくりした呼吸2種(5〜6分)、太陽礼拝(6〜8分)、マインドフルネス瞑想(5〜6分)というパッケージを実施しました。介入群584名、対照群499名です。
| 評価者 | 介入群(584名) | 対照群(499名) |
|---|---|---|
| 保護者 | 情緒的問題が減少、困難得点の合計も減少 | — |
| 教師 | 向社会的得点が改善 | 情緒的問題が増加、向社会的得点が低下 |
| 生徒本人 | 情緒的問題・仲間関係の問題が減少 | 情緒的問題が増加 |
対照群では悪化しています。紛争後の地域という背景を考えると、思春期の子どもの状態が6か月で悪化すること自体は不自然ではありません。ただし介入群の改善の一部は、対照群の悪化との相対差である可能性があります(Sivashankar ら, 2022, Globalization and Health)。なおこの研究は無作為化されていません。

いま言えること
- 1年間・112名の無作為化試験で、成績(GPA)についての主要仮説は intent-to-treat 解析で支持されなかった
- 参加回数が多い生徒ではヨガ群のGPAが高かったが、参加回数は無作為化された変数ではない
- 159名の試験で、無断欠席と居残りは減ったが、成績・停学・身体化・全般的感情は変わらなかった
- 3〜7歳7研究1,080名の統合で、実行機能全体の効果量は d = 0.24(小さい)。抑制制御は 0.18 で下限がほぼゼロ
- 認知的柔軟性はデータ不足で解析できなかった
- 98名を体育と直接比較した試験では、群間の有意差は1つだけで、しかも運動群に有利(社会的自尊心)
- 一方、131名の盲検化された試験では、ヨガが注意の4側面すべてで体育を上回った
- 300名の3群試験では、ヨガ単独と運動が同程度で、差をつけたのは学習原理を組み合わせた群だった
- 39試験を集めた総説の提言に「無効あるいは有害な介入効果の報告」が含まれている
- 実際の学校での評価は、実施の忠実度が最も高かった学校を対象としている
読み方をまとめます。
成績そのものは、動きにくい。主要アウトカムに置いた試験では支持されず、別の試験でも成績は変わりませんでした。
注意、感情調整、問題行動については、肯定的な結果が比較的多い。ただし効果量は小さく(d = 0.24)、試験規模も小さいものが目立ちます。
体育との比較では、結果が割れます。体育のほうが良かった項目もあれば、ヨガのほうが良かった項目もあります。
そして最大の論点は、「ヨガだから」なのか「体を動かすから」なのかが分けられていないことです。運動群にも同様の改善が出ている試験が複数あります。
実務的な意味は、次のようになります。
学校でヨガを行うことに、報告された害はありません。受容性の評価も良好で、子どもたちには概ね受け入れられています。学校の運営指標のうち、欠席や居残りといった日常的な行動には改善が見られます。
ただし成績向上を目的に導入するのは、根拠が弱い。効果を示した解析は、参加回数という無作為化されていない変数に依存しています。
そして体育の代替ではなく、追加として考えるのが妥当です。直接比較した試験では、体育のほうが優れた項目もありました。子どもの身体活動量という観点からも、置き換えには慎重であるべきです。
出典
- Hagins M, et al. Yoga Improves Academic Performance in Urban High School Students Compared to Physical Education: A Randomized Controlled Trial. Mind, Brain, and Education. 2016. DOI: 10.1111/mbe.12107
- Frank JL, et al. Effectiveness of a School-Based Yoga Program on Adolescent Mental Health and School Performance: Findings from a Randomized Controlled Trial. Mindfulness. 2017. DOI: 10.1007/s12671-016-0628-3
- Wilkin K, et al. The effects of school-based yoga on the executive functioning skills of children between three and seven years of age. A meta-analysis of existing research. Mental Health and Physical Activity. 2024. DOI: 10.1016/j.mhpa.2024.100643
- Ferreira-Vorkapic C, et al. Are There Benefits from Teaching Yoga at Schools? A Systematic Review of Randomized Control Trials of Yoga-Based Interventions. Evidence-based Complementary and Alternative Medicine. 2015. DOI: 10.1155/2015/345835
- Miller S, et al. Systematic Review of Randomized Controlled Trials Testing the Effects of Yoga with Youth. Mindfulness. 2020. DOI: 10.1007/s12671-019-01230-7
- Khunti K, et al. The effects of yoga on mental health in school-aged children: A Systematic Review and Narrative Synthesis of Randomised Control Trials. Clinical Child Psychology and Psychiatry. 2022. DOI: 10.1177/13591045221136016
- Telles S, et al. Effect of yoga or physical exercise on physical, cognitive and emotional measures in children: a randomized controlled trial. Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health. 2013. DOI: 10.1186/1753-2000-7-37
- Yang Q, et al. The impact of a 12-Week yoga intervention on attentional performance in school-aged children: a randomized controlled trial in Western China. BMC Public Health. 2025. DOI: 10.1186/s12889-025-25060-6
- Jarraya S, et al. 12 Weeks of Kindergarten-Based Yoga Practice Increases Visual Attention, Visual-Motor Precision and Decreases Behavior of Inattention and Hyperactivity in 5-Year-Old Children. Frontiers in Psychology. 2019. DOI: 10.3389/fpsyg.2019.00796
- Pandey M, et al. Effectiveness of Yoga and Physical Exercises on Emotional and Behavioral Problems and Academic Performance Among Indian Adolescents: A Randomized Trial. Journal of Emotional and Behavioral Disorders. 2024. DOI: 10.1177/10634266241301371
- Pandey M, et al. Effects of Yoga and Physical Exercise on Adolescent Development and Learning: A Randomized Trial. Improving Schools. 2025. DOI: 10.1177/13654802251403889
- Pradhan B, et al. Effect of yoga on cognitive functions and anxiety among female school children with low academic performance: A randomized control trial. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2022. DOI: 10.1016/j.ctcp.2022.101614
- Shanker S, et al. Effect of yoga on the social responsiveness and problem behaviors of children with ASD in special schools: A randomized controlled trial. Explore. 2022. DOI: 10.1016/j.explore.2022.12.004
- Kerekes N, et al. Yoga for children and adolescents: A decade-long integrative review on feasibility and efficacy in school-based and psychiatric care interventions. Journal of Psychiatric Research. 2024. DOI: 10.1016/j.jpsychires.2024.11.016
- McCurdy BH, et al. Program evaluation of a school-based mental health and wellness curriculum featuring yoga and mindfulness. PLOS ONE. 2024. DOI: 10.1371/journal.pone.0301028
- Sivashankar J, et al. Implementation of a non-randomized controlled trial of yoga-based intervention to reduce behavioural issues in early adolescent school-going children in Sri Lanka. Globalization and Health. 2022. DOI: 10.1186/s12992-022-00819-3
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。お子さんに発達上の心配や、注意・行動・情緒の持続的な困難がある場合は、学校のスクールカウンセラー、小児科、児童精神科など専門職に相談してください。ヨガは、必要な医療や教育的支援の代わりになるものではありません。子どもが行う場合は、成人向けのポーズをそのまま用いず、年齢に適した内容と指導が必要です。






