連載「アーサナの力学」全10回の第4回です。

座位ねじりや立位のねじりは、クラスで「腰を回す」「仙腸関節を動かす」と説明されがちです。見た目は腰椎が大きく回っているように見え、触診で仙腸関節の「ずれ」を感じ取る、という語りも現場では珍しくありません。力学の測定は、その見え方と語りをかなり小さくします。

結論から書きます。体幹の大きな回旋のうち腰椎の分節寄与は小さく、胸椎と骨盤の寄与が大きく、仙腸関節そのものの動きは度とミリの桁にとどまります。ヨガのねじりが仙腸関節を「動かす」とも「治す」とも、現時点の一次データは言えません。

この回では、腰椎の分節回旋、胸椎・骨盤の分担、姿勢による胸椎回旋の変化、仙腸関節のラジオステレオメトリ(RSA)と系統的レビュー、触診の臨床的意味を順に見ます。第2回の前屈・第3回の後屈と同じく、主題は「からだに何がかかっているか」であり、疾患の治療断定には踏み込みません。

立川ヨガ 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

ねじりで何が起きているか

立位や座位で体幹を左右に回す動作は、胸椎の軸回旋、腰椎の軸回旋、骨盤の回旋、そしてごく小さな仙腸関節の相対運動が重なった合成です。肩や視線の回転まで含めれば、見かけの「ねじり角度」はさらに大きくなります。ポーズ名(座位ねじり、リボルビングトライアングルなど)は、その合成の最終形を指すラベルであり、どの関節が何度動いたかを指定しません。

したがって、「腰をねじる」という日常語は力学の単位に対応しません。腰に手を当てて皮膚と筋が動く感覚は、分節の骨運動そのものではありません。仙腸関節の触診も同様で、骨盤帯の軟部組織と測定誤差が混ざります。以下では、画像や慣性センサ、遺体標本、金属マーカを用いた測定で確認できた数値だけを使います。ヨガのねじりポーズを条件に揃えた椎間板内圧や仙腸関節RSAは、調べた範囲では乏しく、その欠落は後で明示します。

腰椎の分節回旋は何度か

健常男性ボランティアの生体で、腰椎の能動的な軸回旋と側屈を三次元X線で測った古典的研究があります。

Pearcy MJ, Tibrewal SB. Axial rotation and lateral bending in the normal lumbar spine measured by three-dimensional radiography. Spine. 1984;9(6):582-587.

抄録によれば、各椎間の軸回旋はおよそ 2 degrees で、L3-4 と L4-5 がやや大きい、とあります。側屈は上位三椎間でおよそ 10 degrees、L4-5 で 6 degrees、L5-S1 で 3 degrees と、下方ほど小さくなります。上位腰椎では右への軸回旋に左への側屈が伴い、L5-S1 では同方向に伴うことが多く、L4-5 は移行域でした。単純な機械的カップリングだけでは説明できず、前弯の形状と筋制御が主従関係を決める、と著者らは述べています。

遺体腰椎に純モーメントを加えた in vitro でも、軸回旋の分節可動域は同程度の小ささです。Yamamoto I, Panjabi MM, Crisco T, Oxland T(Spine. 1989;14(11):1256-1260)は、新鮮遺体標本10体(L1から仙骨または腸骨まで)に最大 10 N-m の純モーメントを段階的に加えました。片側の軸トルクに対する可動域(range of motion)は、L1-2 で 2.3 degrees、L2-3 と L3-4 で各 2.6 degrees、L4-5 で 2.2 degrees、L5-S1 で 1.4 degrees でした。中立帯(neutral zone)の軸トルク側は各椎間 0.4〜0.9 degrees とさらに小さい。つまり「腰椎全体で大きく回っている」ように見えても、椎間ごとの骨運動は数度前後に散らばっています。

仰卧位で体幹を他動回旋させ、CTで分節運動を再構成した生体研究も、同じ方向を指します。

Ochia RS, Inoue N, Renner SM, Lorenz EP, Lim TH, Andersson GB, An HS. Three-dimensional in vivo measurement of lumbar spine segmental motion. Spine. 2006;31(18):2073-2078.

無症状ボランティア15名で、分節運動は小さく(< 4 degrees または 6 mm)、最大は軸回旋で range 0.6 degrees to 2.2 degrees、側屈は -3.6 degrees to 3.0 degrees でした。最も大きかったのは L1-L2 から L3-L4 です。Pearcyの能動運動、Yamamotoの純モーメント、Ochiaの他動CTは条件が違いますが、腰椎分節の軸回旋がおおむね 1〜3 degrees 前後という像は揃っています。統計的有意差の語は、単一群の記述研究にはそのまま当てはまりません。臨床的重要性——何度増えたら痛みが減るか——も、これらの研究は測っていません。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

体幹回旋の大半は胸椎と骨盤が担う

では、立位で大きく見えるねじりの本体はどこか。慣性センサで胸椎・腰椎・骨盤の一次可動域を同時に測った研究が、分担を数値で示します。

Narimani M, Arjmand N. Three-dimensional primary and coupled range of motions and movement coordination of the pelvis, lumbar and thoracic spine in standing posture using inertial tracking device. Journal of Biomechanics. 2018;69:169-174.

健常22名の立位で、左右の軸回旋の一次可動域は、胸椎(T1-T12)が 33.5 ± 10.0° / 37.1 ± 11.7°、骨盤が 31.6 ± 12.5° / 27.2 ± 12.0°、腰椎(T12-S1)が 7.5 ± 4.5° / 9.2 ± 7.3° でした。同じ被験者の屈曲では腰椎 55.4 ± 12.4°、骨盤 42.8 ± 21.6°、胸椎 19.9 ± 6.4° と、平面ごとに分担が入れ替わります。軸回旋平面に限れば、胸椎と骨盤が大きく、腰椎は相対的に小さい——「腰を回している」感覚と、センサ上の腰椎寄与は一致しません。

この数字は強力ですが、確実性の評価は控えめになります。標本は健常22名で、盲検はなく、追跡もありません。皮膚上の慣性センサは軟部組織のアーチファクトを含みうる。ヨガの座位ねじりや拘束の強い立位ねじりを再現した条件でもありません。効果量の「統計的有意」より先に、「臨床的に意味のある最小変化量(MCID)」がねじり可動域について定まっていない点を押さえる必要があります。何度胸椎が動けば症状や機能が変わるのかは、このデータセットの外です。

部位(Narimani 2018)左/右の軸回旋(平均±SD)読み方の注意
胸椎 T1-T1233.5±10.0° / 37.1±11.7°立位の一次回旋で最大級
骨盤31.6±12.5° / 27.2±12.0°腰椎より大きい
腰椎 T12-S17.5±4.5° / 9.2±7.3°見かけの「腰ねじり」より小さい

胸椎回旋は、始めた姿勢で変わる

胸椎の軸回旋そのものも、中立・屈曲・伸展のどこから回すかで変わります。

Edmondston SJ, Aggerholm M, Elfving S, Flores N, Ng C, Smith R, Netto K. Influence of posture on the range of axial rotation and coupled lateral flexion of the thoracic spine. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2007;30(3):193-199.

無症状52名(18-43歳)を光学式動作解析で測ると、屈曲位からの胸椎回旋は、中立位・伸展位より有意に減少しました(P < .001)。伴う側屈の平均は、軸回旋可動域に対して中立で 8.9%、伸展で 14.3%、屈曲で 23.2% でした。カップリングの左右パターンは個人差が大きく、屈曲位では同側パターン、中立・伸展では対側パターンが多い、と報告されています。

ここで分けるべきは二層です。統計的有意(P < .001)は「屈曲位だと胸椎回旋が減る」方向の差を支持します。臨床的重要性は別問題で、クラス内の「あと数度深くねじる」が、測定誤差や個人差を超えて意味を持つかは、この研究だけでは言えません。座位ねじりで腰椎を丸めてから回す形は、Edmondstonの屈曲条件に近づきうる一方、ポーズ条件そのものの再現ではありません。伴走する側屈の比率が姿勢で変わる事実は、ねじりを「純粋な回旋」として教える説明を弱めます。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

仙腸関節は動くのか——度とミリの桁

仙腸関節の可動性は、徒手療法の文脈で大きく語られがちです。金属マーカを骨に埋め込み、二方向X線で三次元運動を測るラジオステレオメトリ(RSA)は、その語りを小さく測り直す方法です。

Sturesson B, Selvik G, Udén A. Movements of the sacroiliac joints. A roentgen stereophotogrammetric analysis. Spine. 1989;14(2):162-165.

仙腸関節障害が疑われる25名(女性21・男性4)を、生理的肢位とその極端位で解析しました。回旋は小さく、肢位間の平均は 2.5 degrees(範囲 0.8 degree-3.9 degrees)、並進は平均 0.7 mm(0.1-1.6 mm)でした。症状のある側とない側で差はなかった、と抄録は述べます。つまり「痛い側だけが大きく動く」という単純図式は、この標本では支持されません。

三次元運動の文献を、誤差報告や座標系の条件で絞った系統的レビューもあります。

Goode A, Hegedus EJ, Sizer P, Brismee JM, Linberg A, Cook CE. Three-dimensional movements of the sacroiliac joint: a systematic review of the literature and assessment of clinical utility. The Journal of Manual & Manipulative Therapy. 2008;16(1):25-38.

適格は7報でした。回旋は X軸 -1.1 to 2.2 degrees、Y軸 -0.8 to 4.0 degrees、Z軸 -0.5 to 8.0 degrees、並進は各軸でおおよそサブミリから数ミリの範囲(X -0.3 to 8.0 mm、Y -0.2 to 7.0 mm、Z -0.3 to 6.0 mm)に収まりました。著者らの含意は明確で、仙腸関節の運動は微小であり、触診で病理を診断する方法の臨床的有用性は限られうる、というものです。信頼区間を伴うメタアナリシス形式の統合効果量ではなく、範囲の合成である点には注意が要ります。出版バイアスの定量(Eggerなど)も、抄録上は示されていません。

機能テスト中の動きも、同程度に小さいです。長期の骨盤帯痛で仙腸関節固定術が予定された12名にタンタルマーカを入れ、Active Straight Leg Raise(ASLR)中のRSAを行った研究では、休脚側の仙腸関節に平均 0.8° の後方回旋と 0.3° の内方傾斜が見られました。挙脚側より休脚側の方が大きかった、という結果で、古典的な「挙脚側腸骨が前傾する」理解とは食い違います(Kibsgård TJ, Röhrl SM, Røise O, Sturesson B, Stuge B, 2017)。

研究間で結論が割れる点もあります。Sturesson 1989 は症状の有無で差なし、Kibsgård 2017 は重症例の機能テストで小さな非対称を検出、Goode 2008 は触診の有用性に懐疑的——方向は「大きい可動」ではなく「小さい可動」で揃いつつ、臨床テストの解釈では一致しません。ヨガのねじりが仙腸関節可動域を増やすかどうかを、RSAで追った試験は見つかりませんでした。水増しせず、研究が乏しいと書きます。

限界、有害事象、練習する人への含意

確実性を整理します。腰椎分節の軸回旋が小さいこと(Pearcy・Yamamoto・Ochia)は、方法は違えど方向が一致し、中等度の確度で言えます。立位での体幹回旋に胸椎と骨盤が大きく寄与すること(Narimani)は、単一研究・健常若年寄り標本に依存し、確度は低めです。仙腸関節運動が度・ミリの桁であること(Sturesson・Goode・Kibsgård)は RSA 系で繰り返し出ますが、対象の多くは疼痛例や手術予定例で、無症状のヨガ実践者そのものではありません。

効果が示されていない領域を明示します。ねじりポーズの介入が腰痛や仙腸関節痛を減らすか。ねじりで椎間板内圧がどう変わるか(第2回で見た前屈+回旋の古典的相対%は、ヨガ条件の再測定ではありません)。深いねじりが柔軟性の感覚以外の転帰を変えるか。これらについて、本テーマに直接つながる無作為化比較試験は乏しいです。効果が小さい、または未測定の領域として、分節回旋そのものの「改善」を目標にすることの意味も挙げられます——そもそも健常でも数度しか動かない部位の「可動性向上」は、測定誤差と区別しにくい。

有害事象について、今回の一次文献は傷害率を主要アウトカムにしていません。急な腰・殿部痛、下肢の放散痛・しびれ、妊娠後期の骨盤帯痛の悪化などは、数値ではなく臨床判断の領域です。ヨガ全体の安全性の疫学は傷害と安全性の記事に譲ります。仙腸関節の触診所見だけで「ずれているからねじれ」と進める根拠は、Goodeらの合成からは弱い、と読むのが堅実です。

研究の限界を列挙します。サンプルサイズの小ささ(Ochia 15名、Narimani 22名、Kibsgård 12名など)。盲検の欠如(動作課題ではほぼ不可避)。追跡期間の短さ(単回計測が中心)。出版バイアス(古典的可動域研究は「動いた」報告が残りやすい)。皮膚マーカと骨マーカの差。そして、ヨガのポーズ名で条件を揃えた分節・仙腸関節測定はほぼ無い。第1回で扱った骨格の個体差は、同じポーズでも胸椎・腰椎・股関節の分担を変えます。

練習する人への含意は三つです。第一に、大きなねじり角の本体は胸椎と骨盤側に寄りやすく、腰椎を「回し切る」イメージは分節データと合いません。第二に、仙腸関節は動くが、その大きさは触診で確実に追うには小さすぎる、という測定側の結論がある。第三に、丸めた姿勢からの回旋は胸椎の一次回旋を減らしうる(Edmondston)——深さの競いより、始めた姿勢と呼吸・股関節の余裕を見た方が、力学の記述と噛み合います。柔軟性の感覚機序は伸張耐性の記事も参照してください。

次回予告

第5回は「逆転——頸椎への荷重と頭部の圧」を扱う。ねじりで見た「どこが動くか」から一転し、頭が下になる形で頸椎と頭蓋に何がかかるのか、眼内圧や血圧の話とどう切り分けるかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「正しいポーズ」が決まらない理由——骨格の個体差と関節可動域
  2. 第2回|前屈——脊柱にかかる荷重とハムストリングの伸張
  3. 第3回|後屈——腰椎伸展と椎間関節の荷重
  4. 第4回|ねじり——脊柱回旋はどこで起きるか、仙腸関節は動くのか(この記事)
  5. 第5回|逆転——頸椎への荷重と頭部の圧
  6. 第6回|手で支える——手関節背屈角度と荷重
  7. 第7回|片脚立位——バランス制御と足部の力学
  8. 第8回|股関節——インピンジメントと深い外旋・開脚
  9. 第9回|呼吸——横隔膜と腹腔内圧の力学
  10. 第10回|総括——傷害の疫学から版面を逆算する

出典

  1. Pearcy MJ, Tibrewal SB. Axial rotation and lateral bending in the normal lumbar spine measured by three-dimensional radiography. Spine. 1984;9(6):582-587.
  2. Yamamoto I, Panjabi MM, Crisco T, Oxland T. Three-dimensional movements of the whole lumbar spine and lumbosacral joint. Spine. 1989;14(11):1256-1260.
  3. Ochia RS, Inoue N, Renner SM, Lorenz EP, Lim TH, Andersson GB, An HS. Three-dimensional in vivo measurement of lumbar spine segmental motion. Spine. 2006;31(18):2073-2078.
  4. Narimani M, Arjmand N. Three-dimensional primary and coupled range of motions and movement coordination of the pelvis, lumbar and thoracic spine in standing posture using inertial tracking device. Journal of Biomechanics. 2018;69:169-174.
  5. Edmondston SJ, Aggerholm M, Elfving S, Flores N, Ng C, Smith R, Netto K. Influence of posture on the range of axial rotation and coupled lateral flexion of the thoracic spine. Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics. 2007;30(3):193-199.
  6. Sturesson B, Selvik G, Udén A. Movements of the sacroiliac joints. A roentgen stereophotogrammetric analysis. Spine. 1989;14(2):162-165.
  7. Goode A, Hegedus EJ, Sizer P, Brismee JM, Linberg A, Cook CE. Three-dimensional movements of the sacroiliac joint: a systematic review of the literature and assessment of clinical utility. The Journal of Manual & Manipulative Therapy. 2008;16(1):25-38.
  8. Kibsgård TJ, Röhrl SM, Røise O, Sturesson B, Stuge B. Movement of the sacroiliac joint during the Active Straight Leg Raise test in patients with long-lasting severe sacroiliac joint pain. Clinical Biomechanics. 2017;47:40-45.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ねじり動作中やその後に腰・殿部・下肢の痛みやしびれが強まる場合、外傷直後の強い痛み、発熱や夜間痛を伴う場合は、自己判断でポーズを続けず医療機関にご相談ください。仙腸関節や骨盤帯の痛み、妊娠中・産後の骨盤痛、脊椎・骨盤の手術後など、診断を受けている方は、新しいねじりの深さや負荷のかけ方を変える前に主治医や適切な専門家に確認してください。

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

ご体験予約