ヨガと摂食障害の関係について、2019年の系統的レビューは冒頭で次のように問題を立てています。
「ヨガの実践が摂食障害を改善するのか、それとも悪化させるのかという問いは、現在議論の途上にある。」(Ostermann ら, 2019, Complementary Therapies in Medicine)
「悪化させる」という可能性が、まじめに検討されています。理由があります。ヨガは身体への注意を高める実践であり、その注意が体型の監視に向かえば、症状を強めうるからです。
そして2025年の大規模な集団調査は、この懸念を裏づける所見を報告しました。

実践者のほうが、症状が多いという調査
Neumark-Sztainer D, et al. The Practice of Yoga and Associations with Embodiment, Body Image, Internalized Weight Stigma, and Disordered Eating in a Population-Based Sample of Young Adults. Body Image. 2025. DOI: 10.1016/j.bodyim.2025.101928
24〜35歳(平均27.6歳)の994名を対象とした集団ベースの調査で、横断分析と5年間の縦断分析が行われました。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| ヨガの実践率 | 過去1年で18.6%、定期的(週30分以上)は11.8% |
| 定期的な実践と関連していたもの | より高いエンボディメント、多くの分析でより低い内面化された体重スティグマとより高い身体満足度 |
| 不健康な摂食行動 | 定期的な実践者のほうが、非実践者と同程度か、それ以上に高かった |
身体との関係は良好なのに、摂食行動の問題は減っていない——むしろ多い。横断的な観察なので、因果の向きは不明です。摂食の問題を抱えている人がヨガを選んでいる、という逆の因果も考えられます。
著者らの結論は、条件つきです——「エンボディメントを促すヨガは、不健康な摂食を減らすのに役立つ可能性が高い。」「エンボディメントを促す」という限定が入っています。
統合すると、効果は出る。ただし幅が極端
Borden AB, Cook-Cottone C. Yoga and eating disorder prevention and treatment: A comprehensive review and meta-analysis. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1798172
43研究を検討し、無作為化比較試験11件・754名を統合したものです。
| アウトカム | 効果 |
|---|---|
| 摂食障害の全般的な精神病理 | 小さいが有意 |
| 過食と神経性過食症 | 中程度から大きい |
| 身体イメージの懸念 | 小さい |
| 食事制限(ダイエタリー・リストレイント) | どちらの方向にも統計的に有意な効果なし |
効果が最も大きかったのは過食です。逆に食事を制限する行動には効果がありませんでした——これは神経性やせ症の中核症状にあたります。
一方、8つの無作為化試験と4つの非対照試験・計495名を検討した別のレビューは、効果量の幅を報告しています。
「無治療対照群と比べた効果量は、d = 0.02 という無視できるものから、d = 2.15 という極めて大きなものまで幅があった。しかしながら、ほとんどの効果は小〜中程度の大きさで、多くの場合において有意でなかった。」
そして——「安全性に関するデータは報告されなかった。」(Ostermann ら, 2019)
結論は「摂食障害の患者におけるヨガの有効性と安全性についてのエビデンスは限られている。ヨガは、多面的な精神科治療プログラムにおける追加的な治療選択肢として、暫定的に考慮されうる」とされています。

臨床集団での試験
実際に診断のついた患者を対象とした無作為化比較試験は、数が限られます。
Carei TR, et al. Randomized Controlled Clinical Trial of Yoga in the Treatment of Eating Disorders. Journal of Adolescent Health. 2009. DOI: 10.1016/j.jadohealth.2009.08.007
神経性やせ症、神経性過食症、特定不能の摂食障害と診断された11〜21歳の54名(女子50名・男子4名)を、標準治療のみ(27名)と個別化されたヨガ+標準治療(26名)に無作為化した8週間の試験です。
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 摂食障害検査(EDE)スコア | ヨガ群で経時的に低下。対照群は初期に低下した後、12週でベースラインに戻った |
| 食物へのとらわれ | 各ヨガセッションの直後に有意に低下 |
| BMI | 両群とも維持された(ヨガは BMI に負の影響を与えなかった) |
| 不安・抑うつ | 両群とも経時的に低下 |
「ヨガ治療は BMI に負の影響を与えなかった」という記述は、この領域では重要な安全性の所見です。体重増加が治療目標となる患者において、運動が体重を減らす方向に働かなかったということです。
過食症状のある女性53名を対象に、8週間のクリパルヨガを行った試験では、過食の頻度、感情調節の困難、自己批判が減少し、セルフコンパッションとマインドフルネスのスキルが増加しました。ただし著者らは「これらの結果は励みになるが、その暫定的な性質を強調することが重要である」としています(Brennan ら, 2020, Eating Disorders)。
外来治療中の67名を対象とした8週間のパイロット研究では、身体イメージの懸念に関する平均得点が5点尺度で 0.3〜0.8点改善しました。自由回答では、自己受容、自己認識、自信、感情的・身体的な強さの改善が語られる一方、「ヨガプログラムの身体的・感情的な困難さが、自己判断、脆弱性、不快な感情との対峙にどう寄与したか」も語られています(Diers ら, 2020, Eating Disorders)。
予防・非臨床集団では
診断のついていない人を対象とした研究のほうが、数は多くあります。
Estey EE, et al. Efficacy of Eat Breathe Thrive: A randomized controlled trial of a yoga-based program. Body Image. 2022. DOI: 10.1016/j.bodyim.2022.07.009
米国と英国の地域住民168名(93.5%が女性、18〜65歳)を、週2時間・7週間のプログラムと待機対照に無作為化した試験です。
対照群と比べて、摂食障害行動、抑うつ、感情調節の困難が有意に減少し、内受容感覚の気づき、マインドフルなセルフケア、マインドフルな食事といったスキルの使用が有意に増加しました。効果の大半は6か月後の追跡でも維持されています。
12週間・週2回のヨガを行った大学生女性の試験でも、外見評価と特定の身体部位への満足度が有意に改善し、外見にとらわれる時間とエネルギーが減少しました(Ariel-Donges ら, 2018, Sex Roles)。
4セッションという短い介入でも効果が出ています。若い女性44名を対象とした試験では、身体への感謝、身体とのつながり、身体満足度、肯定的な気分が事後と4週後の追跡で有意に増加しました。ただし否定的な気分と身体監視には有意な変化がありませんでした(Halliwell ら, 2019, Body Image)。
ところが、うまくいかなかった試験もある
予防を目的とした試験には、期待どおりにならなかったものもあります。
女子大学生52名を、週3回・50分・10週間のヨガと対照群に無作為化した試験では、有意だったのは外見志向の低下と肯定的感情の増加のみ。身体不満足感、否定的感情、孤独感、セルフコンパッション、マインドフルネスの変化は、対照群と比べて有意でありませんでした(Pacanowski ら, 2020, Eating Disorders)。参加率は30回中平均20回です。
114名を10週間のハタヨガと待機対照に無作為化した試験では、さらに明確です。
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 自己客体化 | 中間評価でヨガ群が低い |
| エンボディメント | 経時的にヨガ群で大きい |
| 身体への感謝、身体へのコンパッション、外見評価 | 群にかかわらず、全参加者が経時的に改善 |
| 機能への感謝 | ヨガは増加させなかった |
著者らは「予想に反して、ヨガは機能への感謝を増加させず、機能への感謝はヨガが肯定的身体イメージに与える影響の媒介因子でもなかった。むしろ自己客体化の低下とエンボディメントの向上が、肯定的身体イメージの改善を駆動していた」と報告しています(Alleva ら, 2020, Body Image)。なお脱落が多く、追跡データは解析できませんでした。

子ども・思春期では
29研究を検討した成人対象の総説は、「ヨガは身体満足度と身体への感謝の改善、身体不満足感の低下と関連している」としつつ、「盲検化の欠如と不十分な報告といった方法論的な弱さによって、エビデンスは限定されている」と評価しています。用量反応関係を示唆する研究もありました(Rupani ら, 2024, Body Image)。
小児・思春期に絞ると、結果はより不揃いです。6研究を検討した総説では、「ヨガは身体尊重と身体満足度を改善しうる、とくに摂食障害のある思春期において」とされる一方、「体型への懸念、体重への懸念、身体監視、身体への感謝を含む他のアウトカムについては、所見が不揃いだった」と報告されています(Bullard ら, 2025, Journal of Eating Disorders)。
11研究1,082名を対象としたより新しい総説は、決定的な指摘をしています。
「ヨガ単独の介入では、身体イメージへの効果は概ね肯定的だが、小さく、一貫しなかった。」
「多要素介入のほうが、身体不満足感、痩せ願望、(一部の研究では)過食症のリスク因子の低下を含め、より一貫した便益を示した。」
そして——「現在の研究デザインでは、ヨガ固有の寄与を分離することができない。」(Schneider ら, 2026, Body Image)
なぜ効くのか、という理論
この分野には、比較的整備された理論があります。エンボディメント(身体に宿る感覚)を介するという考え方です。
ヨガ実践者193名(アイアンガー124名、ビクラム69名)と非実践者127名を比較した研究では、実践者のほうが肯定的身体イメージとエンボディメントが高く、自己客体化が低いという結果でした。そしてヨガ参加と肯定的身体イメージの関係は、エンボディメントと自己客体化の低下によって連続的に媒介されていました。
興味深いことに、ビクラムの実践者はアイアンガーの実践者より「外見に関連する理由」でヨガに参加していたにもかかわらず、身体イメージの変数に有意差はありませんでした(Mahlo & Tiggemann, 2016, Body Image)。
174名の大学生を対象とした媒介分析では、ヨガの自己効力感が、マインドフルネスの増加 → セルフコンパッションの向上 → 身体への感謝、という経路を通じて、身体不満足感と摂食障害症状の低下を予測していました(Perry ら, 2025, Eating Disorders)。
理論的な枠組みとしては、エンボディメントの発達理論に基づき、身体とのつながりと快適さ、主体性と機能性、調和のとれたセルフケア、主観的没入(客体化への抵抗)、欲求の経験と表現という5つの次元が提示されています(Piran, 2020, Eating Disorders)。摂食障害・エンボディメント・ヨガの概念的整理も行われています(Perey & Cook-Cottone, 2020, Eating Disorders)。
実装の工夫としては、体重の重い大学生女性を対象に、オンラインのサイズ包摂的ヨガと身体への感謝のジャーナリングを4週間組み合わせたパイロット試験があります。内的な身体恥の有意な低下と、身体への感謝・機能的身体満足度・身体活動への行動的コミットメントの向上が示されました。ただし脱落率36%です(Webb ら, 2022, Frontiers in Global Women’s Health)。
大学のヨガ講座を受けた99名(77.8%が女性)の前後比較では、身体不満足感と摂食障害の病理が低下し、身体への感謝・セルフコンパッション・ヨガ自己効力感が上昇しました。男性のほうが女性より、体重への懸念の減少と身体満足度の改善が大きいという性差も報告されています(Kramer & Cuccolo, 2019, Eating Disorders)。
いま言えること
- 「ヨガが摂食障害を改善するのか悪化させるのか」は、なお議論の途上にある
- 994名の集団調査で、定期的な実践者のほうが不健康な摂食行動が同程度か多かった
- 同じ調査で、エンボディメント・体重スティグマ・身体満足度は良好だった
- 11試験754名の統合で、最も効果が大きいのは過食(中〜大)。食事制限には効果なし
- 12研究495名のレビューでは、効果量が d = 0.02 から 2.15 まで幅があり、多くは有意でなかった
- 安全性に関するデータは報告されていない
- 54名の臨床試験で、ヨガは BMI に負の影響を与えなかった
- 168名の予防プログラムで、摂食障害行動・抑うつ・感情調節が改善し、6か月後も維持
- 一方、52名と114名の試験では、多くの指標で群間差が出なかった
- 11研究1,082名の総説は「ヨガ固有の寄与を分離できない」と結論
- 多要素介入(ヨガ+構造化された省察・心理教育・グループ討論)のほうが、一貫した効果を示す
ヨガだけで摂食障害が良くなるという根拠は、ありません。効果が一貫するのは、心理教育や省察と組み合わせた多要素のプログラムです。
効果が出やすいのは過食で、食事制限には効きません。
そして「悪化させうる」という懸念は、まだ否定されていません。安全性のデータが報告されていないからです。
鍵は、何に注意を向けるかのようです。外見ではなく感覚に向かうとき(エンボディメント)、効果が現れています。
実務的な含意は、はっきりしています。鏡張りのスタジオで、外見や体型に言及しながら行うヨガは、この分野の研究が支持するものとは違います。効果を示したプログラムは、内受容感覚(身体の内側の感覚)への気づき、セルフコンパッション、身体の機能への注目を明示的に扱っていました。
そして摂食障害の診断がある方は、必ず主治医に相談してから始めてください。低体重の時期には運動そのものが禁忌となることがあり、また運動が「排出行動」として使われるリスクもあります。研究で効果が示されたのは、いずれも標準治療を受けながらの追加としてのヨガです。
出典
- Ostermann T, et al. Effects of yoga on eating disorders—A systematic review. Complementary Therapies in Medicine. 2019. DOI: 10.1016/j.ctim.2019.07.021
- Neumark-Sztainer D, et al. The Practice of Yoga and Associations with Embodiment, Body Image, Internalized Weight Stigma, and Disordered Eating in a Population-Based Sample of Young Adults. Body Image. 2025. DOI: 10.1016/j.bodyim.2025.101928
- Borden AB, Cook-Cottone C. Yoga and eating disorder prevention and treatment: A comprehensive review and meta-analysis. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1798172
- Carei TR, et al. Randomized Controlled Clinical Trial of Yoga in the Treatment of Eating Disorders. Journal of Adolescent Health. 2009. DOI: 10.1016/j.jadohealth.2009.08.007
- Brennan MA, et al. Benefits of yoga in the treatment of eating disorders: Results of a randomized controlled trial. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1731921
- Diers L, et al. A yoga-based therapy program designed to improve body image among an outpatient eating disordered population: program description and results from a mixed-methods pilot study. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1740912
- Estey EE, et al. Efficacy of Eat Breathe Thrive: A randomized controlled trial of a yoga-based program. Body Image. 2022. DOI: 10.1016/j.bodyim.2022.07.009
- Ariel-Donges AH, et al. Does Yoga Help College-Aged Women with Body-Image Dissatisfaction Feel Better About Their Bodies? Sex Roles. 2018. DOI: 10.1007/s11199-018-0917-5
- Halliwell E, et al. A randomized experimental evaluation of a yoga-based body image intervention. Body Image. 2019. DOI: 10.1016/j.bodyim.2018.12.005
- Pacanowski CR, et al. Yoga’s impact on risk and protective factors for disordered eating: a pilot prevention trial. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1763110
- Alleva JM, et al. The effects of yoga on functionality appreciation and additional facets of positive body image. Body Image. 2020. DOI: 10.1016/j.bodyim.2020.06.003
- Rupani N, et al. The impact of yoga on body image in adults: A systematic review of quantitative studies. Body Image. 2024. DOI: 10.1016/j.bodyim.2024.101772
- Bullard N, et al. Yoga as a therapeutic intervention for body image in the pediatric population: a systematic review. Journal of Eating Disorders. 2025. DOI: 10.1186/s40337-025-01386-9
- Schneider J, et al. A mixed-methods systematic review of the impact of yoga on body image outcomes among children and adolescents. Body Image. 2026. DOI: 10.1016/j.bodyim.2026.102093
- Mahlo L, Tiggemann M. Yoga and positive body image: A test of the Embodiment Model. Body Image. 2016. DOI: 10.1016/j.bodyim.2016.06.008
- Perry J, et al. A mediational model on how yoga self-efficacy may improve eating disorder symptoms: the roles of mindfulness, self-compassion, and body appreciation. Eating Disorders. 2025. DOI: 10.1080/10640266.2025.2551457
- Piran N. Yoga and the experience of embodiment: A discussion of possible links. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2019.1701350
- Perey I, Cook-Cottone C. Eating disorders, embodiment, and yoga: a conceptual overview. Eating Disorders. 2020. DOI: 10.1080/10640266.2020.1771167
- Webb JB, et al. Yoga at Every Size: A Preliminary Evaluation of a Brief Online Size-Inclusive Yoga and Body Gratitude Journaling Intervention to Enhance Positive Embodiment in Higher Weight College Women. Frontiers in Global Women’s Health. 2022. DOI: 10.3389/fgwh.2022.852854
- Kramer R, Cuccolo K. Yoga Practice in a College Sample: Associated Changes in Eating Disorder, Body Image, and Related Factors Over Time. Eating Disorders. 2019. DOI: 10.1080/10640266.2019.1688007
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。摂食障害の治療については、必ず精神科・心療内科など専門の医療機関に相談してください。ヨガは標準的な治療の代わりになるものではありません。低体重の時期には運動そのものが身体に危険をもたらすことがあり、医師の許可なく運動を行わないでください。運動が体重や体型のコントロール手段として使われている場合、症状を悪化させる可能性があります。外見や体型に言及するクラスは避け、内側の感覚に注意を向ける内容を選んでください。ご自身やご家族のことで心配がある場合は、摂食障害支援拠点病院や相談窓口があります。






