「子どもが筋トレをすると身長が伸びなくなる」——この説は、繰り返し検証され、繰り返し否定されてきました。
前思春期・思春期初期の若者を対象とした22の実験的研究を検討した評価が、根拠を示しています。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 身長・体重の成長への影響 | 影響しなかった |
| 体組成の変化 | ばらつきがあり、いずれも小さい |
| 傷害を系統的に監視した研究 | 22研究のうち10研究のみ |
| 報告された傷害 | 3件 |
| 推定傷害率 | 参加者100時間あたり 0.176 / 0.053 / 0.055 件 |
著者の結論は、条件つきです。「重量と抵抗マシンを用い、監督があり、指導者と参加者の比率が低い実験的トレーニングプロトコルは、比較的安全であり、前思春期・思春期初期の若者の成長と成熟に負の影響を与えない。」(Malina, 2006, Clinical Journal of Sport Medicine)
ただし、この安全性は監督があることを前提にしています。そして効果のほうには、あまり知られていない条件があります。

思春期前には、有意な効果が出ない
Moran J, et al. A meta-analysis of maturation-related variation in adolescent boy athletes’ adaptations to short-term resistance training. Journal of Sports Sciences. 2017. DOI: 10.1080/02640414.2016.1209306
10〜18歳の健康な男子アスリートを対象に、4〜16週間のプログラムを検討した19研究の統合です。身長発育速度がピークになる時期(PHV)を基準に、3群に分けています。
| 成熟段階 | 効果量(95%CI) | 判定 |
|---|---|---|
| 全体 | 0.98(0.70〜1.27) | 有意 |
| PHV の最中 | 1.11(0.67〜1.54) | 有意 |
| PHV の後 | 1.01(0.56〜1.46) | 有意 |
| PHV の前 | 0.50(−0.06〜1.07) | 信頼区間がゼロをまたぐ |
思春期前の群だけ、信頼区間の下限がマイナスです。効果がないとは言えませんが、この19研究の範囲では確認できていません。
より大規模な統合も、同じ方向を示します。前思春期と後思春期を比べた解析では、全体の効果量が 1.12(0.9〜1.3)で、「成熟」が有意な調整因子でした(z = 2.50、p = .01)。
ただしこの解析は、通説に反する所見も報告しています。
「筋力を得る能力は年齢と成熟の状態とともに増加するように見えるが、思春期に顕著な急増はない。」(Behringer ら, 2010, Pediatrics)
性ホルモンが急増する思春期に、トレーニング効果も跳ね上がる——という直感的な予想は支持されませんでした。効果は連続的に上がるだけです。
同じ解析では、研究期間(r = 0.28、p = .02)と頻度(r = 0.26、p = .03)が効果と正の相関を示しました。
女子に絞った統合では、効果量はやや小さくなります。8〜18歳を対象とした解析で、主効果は「小さい」(0.54、0.23〜0.85)でした。効果量は15歳超、身長163cm超、体重54kg未満の参加者で大きい傾向がありました(Moran ら, 2018, Sports Medicine)。
効果の全体像
Lesinski M, et al. Effects of Resistance Training on Physical Fitness in Healthy Children and Adolescents: An Umbrella Review. Sports Medicine. 2020. DOI: 10.1007/s40279-020-01327-3
14の統合解析を集めたアンブレラレビューです。そのうち11が、成長と成熟によるバイアスを除くために重要な「群間の効果量」を報告していました。
| アウトカム | 効果の大きさ |
|---|---|
| 筋力 | 中〜大 |
| 筋パワー | 小〜大 |
| 投球パフォーマンス | 小〜大 |
| 敏捷性・方向転換速度 | 中 |
| 競技特異的な向上 | 中 |
| 直線スプリント | 小〜中 |
効果はトレーニングの特異性の原則に従う——筋力トレーニングをすれば筋力が最も伸び、スプリントへの波及は小さい、ということです。
ここで注意すべきは、著者らの評価です。「分析された統合解析は、低〜中程度の方法論的質(AMSTAR2)を示し、また低〜極めて低い質のエビデンス(GRADE)を提示していた。」
「若者の筋力トレーニングは有効である」という結論自体は確立していますが、個々の効果量の推定は確かではありません。
若年アスリートに絞った43研究の解析では、筋力と垂直跳びに中程度の効果(SMD 0.8〜1.09)、直線スプリント・敏捷性・競技特異的パフォーマンスに小さな効果(0.58〜0.75)が示され、性別とトレーニング種別が調整因子でした(Lesinski ら, 2016, British Journal of Sports Medicine)。
6〜16歳を対象とした22研究の解析でも、すべての変数で有意な改善が見られ、最も効果的なプログラムは6〜12週間・週2〜3回とされました。最も改善が大きかったのは最大酸素摂取量で、次いで上肢・下肢の筋力、スプリントの順です(Moreno-Torres ら, 2025, Journal of Functional Morphology and Kinesiology)。

どれだけやればよいか
43研究の解析は、独立に算出した用量反応関係を示しています。筋力を最大化するための条件です。
| パラメータ | 最適値 |
|---|---|
| 期間 | 23週間超 |
| セット数 | 1種目あたり5セット |
| 反復回数 | 1セット6〜8回 |
| 強度 | 1RMの80〜89% |
| セット間の休息 | 3〜4分 |
| その条件での効果量 | SMD 2.09〜3.40 |
著者らは「若者の指導者は、より少ない反復回数とより高い強度のプログラムを優先的に実施すべきである」と述べています。
「子どもには軽い負荷で回数を多く」という一般的な指導とは、逆の推奨です。ただしこれは若年アスリートを対象とした解析であり、技術指導と監督が前提になります。
順序についても、明確な知見があります。107研究を対象に、筋力トレーニングとパワートレーニング(プライオメトリクスなど)を比較した解析です。
| アウトカム | より有効だったのは |
|---|---|
| 跳躍高 | パワートレーニング |
| スプリント | 筋力トレーニング |
| 下肢筋力 | 筋力トレーニング(一貫して大きな効果) |
著者らの結論は「パワートレーニングの活動のために十分な筋力の土台を確立するべく、パワートレーニングの前に筋力トレーニングを組み込むべきである」というものです(Behm ら, 2017, Frontiers in Physiology)。
傷害予防としての価値
若者の筋力トレーニングを勧める最大の理由は、競技力ではなく傷害予防かもしれません。
関連研究を検討した臨床レビューは、「これらのリスクの高い集団におけるレジスタンストレーニングは、傷害リスクを最大68%減らすことが示されている」としています。とくにリスクが高いのは早期専門化した子ども、身体活動が不足している子ども、そして女子です(Zwolski ら, 2017, Sports Health)。
若年アスリートの傷害疫学を検討した総説も、同じ方向です。「シーズン前に開始し、動作のバイオメカニクスに関する指導を含む多面的なレジスタンストレーニングプログラムへの定期的な参加は、スポーツ関連傷害のリスクを減らすかもしれない。」
同じ総説は、実際に起きた傷害の原因も分析しています。
「若いリフターに傷害が起きているが、その大半は偶発的なものに分類できる。適切な指導の欠如——それが不適切な運動技術と不適切なトレーニング負荷の根底にある——が、報告された傷害のいくつかを少なくとも部分的に説明しうる。」(Faigenbaum ら, 2009, British Journal of Sports Medicine)
骨端線骨折や腰部の傷害の症例報告は存在します。ただしそれらは「器具の誤用、不適切な重量、不適切な技術、あるいは資格のある成人の監督の欠如」に主に帰されています(Dahab & McCambridge, 2009, Sports Health)。
同じ総説によれば、よく設計されたプログラムを8〜12週間行うだけで、子どもの筋力は30〜50%向上します。ただし維持には週2回以上の継続が必要です。前出の評価でも、トレーニングをやめると筋力の増加は失われたと報告されています。

公式な推奨と、実際の指導
米国小児科学会は2020年に方針声明を改訂し、レジスタンストレーニングを「包括的なスポーツトレーニング、学校の体育の授業、放課後のフィットネスプログラムの不可欠な一部」として位置づけています。背景には「現代の若者における筋のフィットネス指標の長期的な低下」があります(Stricker ら, 2020, Pediatrics)。
7〜18歳を対象とした実践ガイドも、自重運動、フリーウェイト、レジスタンスバンド、マシン、サスペンションシステムを選択肢として挙げ、「発達段階に適した形であれば、筋力と筋持久力だけでなく、健全な成長、運動協調性、骨の健康、全般的な身体発達を支える」としています(Rabin ら, 2025, Current Problems in Pediatric and Adolescent Health Care)。
一方、用語の問題も指摘されています。ある文献レビューは「一部の研究者は、骨格の成熟に達するまで若者のウエイトリフティングを避けるよう助言する文献の合意にもかかわらず、ウエイトリフティングを若者の筋力トレーニングの構成要素として断続的に含めていた」と述べ、定義の明確化を求めています(Dawes, 2021, International Journal of Integrated Care)。
「レジスタンストレーニング」と「競技としてのウエイトリフティング・パワーリフティング」は別のものです。前者の安全性は、後者を含意しません。
29研究を検討した総説 “Risks and Recommendations for Resistance Training in Youth Athletes” も、「傷害の発生率は、よく設計され、漸進的で、監督があり、技術を重視したレジスタンストレーニングプログラムにおいては、低く、懸念は少なかった」としつつ、若年アスリートにおける筋肥大の発生については「文献はなお決定的でない」と留保しています(Journal of Science in Sport and Exercise, 2023。この文献は検索した書誌に著者名の記載がないため、誌名・年・DOIで示します)。この総説が根拠としたのは、非アスリート集団での7研究にすぎません。
いま言えること
- 実験的なレジスタンストレーニングは、前思春期・思春期初期の身長・体重の成長に影響しなかった
- 推定傷害率は参加者100時間あたり 0.05〜0.18件。ただし22研究中10研究しか傷害を監視していない
- 思春期前(PHV前)の効果量は 0.50 で、信頼区間がゼロをまたぐ
- 筋力を得る能力は年齢と成熟とともに増すが、思春期に急増はしない
- 女子の効果量は「小さい」(0.54)。15歳超で大きくなる傾向
- 効果は筋力に最も大きく、スプリントへの波及は小さい(特異性の原則)
- 14の統合解析の質は「低〜中程度」、エビデンスは「低〜極めて低い」(GRADE)
- 筋力最大化の条件は 23週間超・5セット・6〜8回・1RMの80〜89%
- パワートレーニングの前に、筋力トレーニングで土台を作るべき
- 傷害リスクを最大68%減らすという報告がある
- 報告された傷害の大半は、器具の誤用・不適切な重量・不適切な技術・監督の欠如に帰される
- 8〜12週間で筋力は30〜50%向上するが、やめると失われる
安全性の根拠は、「監督がある」ことに条件づけられています。無条件に安全なのではありません。
思春期前の子どもでは、筋力向上の効果がまだ確認されていません。この時期の価値は、筋力そのものより動作の習得にあります。
そして最大の価値は、競技力ではなく傷害予防です。とくに早期に競技を専門化した子ども、運動不足の子ども、女子で意味があります。
実務的には、資格のある指導者が、少人数で、技術を先に教える——これが、安全性を報告したすべての研究に共通する前提です。負荷を上げるのは、動作が正確に反復できるようになってからになります。
出典
- Malina RM. Weight Training in Youth-Growth, Maturation, and Safety: An Evidence-Based Review. Clinical Journal of Sport Medicine. 2006. DOI: 10.1097/01.jsm.0000248843.31874.be
- Moran J, et al. A meta-analysis of maturation-related variation in adolescent boy athletes’ adaptations to short-term resistance training. Journal of Sports Sciences. 2017. DOI: 10.1080/02640414.2016.1209306
- Behringer M, et al. Effects of Resistance Training in Children and Adolescents: A Meta-analysis. Pediatrics. 2010. DOI: 10.1542/peds.2010-0445
- Moran J, et al. A Meta-Analysis of Resistance Training in Female Youth: Its Effect on Muscular Strength, and Shortcomings in the Literature. Sports Medicine. 2018. DOI: 10.1007/s40279-018-0914-4
- Lesinski M, et al. Effects of Resistance Training on Physical Fitness in Healthy Children and Adolescents: An Umbrella Review. Sports Medicine. 2020. DOI: 10.1007/s40279-020-01327-3
- Lesinski M, et al. Effects and dose–response relationships of resistance training on physical performance in youth athletes: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine. 2016. DOI: 10.1136/bjsports-2015-095497
- Moreno-Torres JM, et al. Effects of Supervised Strength Training on Physical Fitness in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Functional Morphology and Kinesiology. 2025. DOI: 10.3390/jfmk10020162
- Behm DG, et al. Effectiveness of Traditional Strength vs. Power Training on Muscle Strength, Power and Speed with Youth: A Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Physiology. 2017. DOI: 10.3389/fphys.2017.00423
- Zwolski CM, et al. Resistance Training in Youth: Laying the Foundation for Injury Prevention and Physical Literacy. Sports Health. 2017. DOI: 10.1177/1941738117704153
- Faigenbaum AD, Myer GD. Resistance training among young athletes: safety, efficacy and injury prevention effects. British Journal of Sports Medicine. 2009. DOI: 10.1136/bjsm.2009.068098
- Dahab KS, McCambridge TM. Strength Training in Children and Adolescents. Sports Health. 2009. DOI: 10.1177/1941738109334215
- Stricker PR, et al. Resistance Training for Children and Adolescents. Pediatrics. 2020. DOI: 10.1542/peds.2020-1011
- Rabin J, et al. A practical guide to strength/resistance training in pediatrics ages 7 through 18 years old. Current Problems in Pediatric and Adolescent Health Care. 2025. DOI: 10.1016/j.cppeds.2025.101885
- Dawes SM. Exploring the role of strength training for enhancing physical performance testing and injury prevention in children and adolescents: A Literature Review and Narrative. International Journal of Integrated Care. 2021. DOI: 10.5334/ijic.icic20496
- Risks and Recommendations for Resistance Training in Youth Athletes: A Narrative Review with Emphasis on Muscular Fitness and Hypertrophic Responses. Journal of Science in Sport and Exercise. 2023. DOI: 10.1007/s42978-023-00251-y
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。お子さんが筋力トレーニングを始める際は、かかりつけの小児科医に相談し、資格のある指導者の監督のもとで行ってください。ここで扱った研究の安全性の結論は、いずれも「監督があること」を前提としています。競技としてのウエイトリフティング・パワーリフティングは別の活動であり、骨格の成熟前は推奨されていません。痛み(とくに関節や腰の痛み)、成長期特有の症状が出た場合は、直ちに中止して受診してください。






