禁煙にヨガが役立つか。この問いには、7つの無作為化比較試験を統合した2025年の解析があります。主要評価項目は、治療終了時点での7日間時点禁煙率です。
| 統合結果 | 値 |
|---|---|
| オッズ比(95%CI) | 1.50(0.60〜3.73) |
| 異質性 | I² = 65%(p = .07) |
| 高リスク試験を除外した感度分析 | I² が 65% → 16% に低下 |
信頼区間が 0.60 から 3.73 まで広がり、1をまたいでいます。著者らはこれを「肯定的だが一貫しない効果」と表現しました。
一方、個別の試験には明確に肯定的なものがあります。227名を対象とした厳密な試験では、ヨガ群の禁煙達成のオッズが37%高い結果でした。
この食い違いを整理します。

統合解析:有意にならない
Singh S, et al. Efficacy of yoga on tobacco cessation. A systematic review and meta-analysis. Nicotine & Tobacco Research. 2025. DOI: 10.1093/ntr/ntaf236
2024年9月までを4つのデータベースで検索し、7つの無作為化比較試験が基準を満たし、5件が統合可能でした(PROSPERO登録 CRD42025643806)。対象は18歳以上、電子タバコを除くあらゆる形態のタバコ使用者です。
感度分析の結果が示唆的です。高リスクの試験を除くと、異質性が 65% から 16% に落ちました。研究間のばらつきの大半が、質の低い試験に由来していたことになります。
著者らは、ヨガのスタイルによる違いにも言及しています。
| スタイル | 報告された効果 |
|---|---|
| 動きのあるヨガ(ハタ、ヴィンヤサ、アイアンガー) | ストレスと抑うつの低減を通じて7日間時点禁煙率を改善 |
| プラーナーヤーマ(呼吸法) | 渇望と否定的感情を低減 |
抑うつ、不安、生活の質については改善が報告されています。ただし禁煙という主要アウトカムは、統合すると有意になりませんでした。
個別の試験:最も厳密なもの
Bock BC, et al. Yoga as a Complementary Therapy for Smoking Cessation: Results from BreathEasy, a Randomized Clinical Trial. Nicotine & Tobacco Research. 2018. DOI: 10.1093/ntr/nty212
成人喫煙者227名(女性55.5%、平均46.2歳、1日17.3本)を、8週間の認知行動療法による禁煙プログラムに加えて、週2回のアイアンガーヨガまたは一般的なウェルネスクラス(対照)に無作為化したものです。
この試験の設計で重要なのは、対照群が「何もしない」ではない点です。接触時間と参加負担をそろえたウェルネスクラスが対照になっています。また禁煙は唾液コチニンで検証され、自己申告に頼っていません。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 治療終了時点 | ヨガ群の禁煙達成オッズが37%高い |
| 軽度喫煙者(1日10本以下) | OR 2.43(1.09〜6.30) |
| 用量効果 | ヨガのクラスに1回出るごとに禁煙オッズが12%上昇(OR 1.12、1.09〜1.26) |
| 対照群の用量効果 | 認められず |
用量効果がヨガ群にのみ認められ、対照群には認められなかった——この非対称性は、単なる「通った人ほど意欲が高い」という説明では片づかない可能性を示します。ウェルネスクラスにも同じように通えば同じ効果が出るなら、両群で用量効果が出るはずです。
著者らの結論は「ヨガは禁煙成功のオッズを高めると思われる、とくに軽度喫煙者において」です。「とくに軽度喫煙者において」という限定は重要です。有意な信頼区間が得られたのは、この部分集団でした。
この試験の設計論文では、主要アウトカムを intention-to-treat による持続的禁煙とし、盲検データ収集を用いた複数の内部・外部監査で治療忠実度と結果の信頼性を確保するとしています(Bock ら, 2014, Contemporary Clinical Trials)。方法論的には、この分野で最も入念に設計された試験のひとつです。
追跡すると、差が消える
同じ研究グループによる先行のパイロット試験(女性55名)が、追跡の問題を示しています。
| 時点 | オッズ比(95%CI) | 判定 |
|---|---|---|
| 治療終了時 | 4.56(1.1〜18.6) | 有意 |
| 6か月後 | 1.54(0.34〜6.92) | 有意でない |
治療終了時の OR 4.56 は大きな数字ですが、信頼区間は 1.1〜18.6 と極端に広い。55名という規模では、この程度の精度しか出ません。そして6か月後には有意でなくなっています(Bock ら, 2012, Journal of Women’s Health)。
禁煙の研究で重要なのは長期の禁煙維持です。治療終了時に差があっても、半年後に差がなければ、臨床的な価値は限られます。

アルコール:3群を比べた試験
Gunillasdotter V, et al. Effects of exercise in non-treatment seeking adults with alcohol use disorder: A three-armed randomized controlled trial (FitForChange). Drug and Alcohol Dependence. 2022. DOI: 10.1016/j.drugalcdep.2022.109266
アルコール使用障害と診断された、治療を求めていない18〜75歳の非活動的な成人140名を、有酸素運動49名・ヨガ46名・通常治療(電話による支援)45名に無作為化し、12週間行ったものです。主要アウトカムは13週目の週あたり飲酒量です。
| 群 | 週あたり飲酒量の変化(95%CI) |
|---|---|
| 有酸素運動 | 平均 −5.0(−10.3〜−3.5) |
| ヨガ | 平均 −6.9(−10.3〜−3.5) |
| 通常治療(電話支援) | 平均 −6.6(−8.8〜−4.4) |
| 群間差 | 統計的に有意でない |
3群すべてで飲酒量が減り、群間に差はありませんでした。
ただしプロトコル遵守者のみの解析では、様相が変わります。通常治療(−7.1)とヨガ(−8.7)のほうが、有酸素運動(−1.7)より大きく減少しました(F(2, 55) = 4.9、p = 0.011)。
著者らの結論は、ヨガの優位ではなく、運動プログラム全般の価値を述べたものです——「12週間の単独運動プログラムへの参加は、アルコール治療専門家による通常ケア(電話カウンセリング)に匹敵する、臨床的に意味のある飲酒量の減少と関連していた。」
「専門家の電話カウンセリングと同程度」という位置づけは、控えめなようで実は重要です。治療を求めていない人に届く選択肢としての価値があります。
物質使用障害全体では
Walia N, et al. Yoga for Substance Use: A Systematic Review. The Journal of the American Board of Family Medicine. 2021. DOI: 10.3122/jabfm.2021.05.210175
5つのデータベースを検索し、8つの無作為化比較試験が基準を満たしました。ヨガを他の介入と組み合わせた研究は除外されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象物質 | タバコ、アルコール、オピオイド(2件は物質が未定義) |
| 有意な結果 | 8件中7件 |
| 他の薬理学的治療との併用で有意 | 8件中7件 |
| バイアスリスク | 6件が低い懸念、2件がいくつかの懸念 |
7件が「オピオイド置換療法などの薬理学的治療と併用して」有意でした。単独の治療としてではありません。
より古い2014年の総説も、同じ構図を示しています。8つの無作為化比較試験のうち7件が肯定的でしたが、「これらの無作為化比較試験の大半は小規模で、深刻な方法論的欠陥があった」とされています。そして1件はメタドン維持療法+ハタヨガが、メタドン維持療法+心理療法と比べて薬物使用と犯罪行為に効果がなかったと報告しています(Posadzki ら, 2014, Focus on Alternative and Complementary Therapies)。
呼吸法に基づく介入に絞った総説では、396件から14研究が選定されました。
| 対象 | エビデンスの状況 |
|---|---|
| タバコ・オピオイド使用障害 | 効果のエビデンスあり。ただし短期のアウトカムのみ |
| アルコール・コカイン使用障害 | 文献が乏しい |
報告されたアウトカムは、禁断、生活の質、気分、渇望、離脱症状です。著者らの結論は「標準治療との効果の比較と、長期の有効性の評価には、さらなる研究が必要であり、治療戦略として強く推奨されるには至らない」というものです(Gupta ら, 2021, Substance Use & Misuse)。
女性に特化した総説では、9つのデータベースから10試験(混合8件、女性中心2件)が該当しました。「これらの無作為化比較試験の大半は小規模から中規模で、さまざまな方法論的・解析的な欠陥と不足があった」とされ、女性に特化した結果は限られると結論されています(Brooks ら, 2020, International Journal of Yoga Therapy)。
物質使用障害の16研究(うち12件が無作為化比較試験、標本サイズ18〜624名)を対象とした総説も、ニコチン依存についての研究が大半を占め、短期の効果は示されるが、長期効果の実証にはさらなる研究が必要としています(Kuppili ら, 2018, Journal of Neurosciences in Rural Practice)。

研究に参加しない人が半分以上いる
この分野には、効果量の議論とは別に、見落とされやすい問題があります。
Sevda P, et al. A Systematic Review Investigating the Nonparticipation Rate and Recruitment Challenges in Yoga Trials for Addictive Disorders. International Journal of Yoga. 2026. DOI: 10.4103/ijoy.ijoy_25_25
依存症を対象としたヨガの無作為化比較試験で、参加候補者のうち54%が組み入れられなかったことを明らかにした総説です(統合効果量 0.544、95%CI 0.301〜0.787、I² = 99.797)。
| 不参加の理由 | 内容 |
|---|---|
| 除外基準に該当 | 身体疾患、精神的問題、PTSD、抑うつ、心疾患 |
| 参加拒否 | 無作為化への抵抗、研究そのものへの関心のなさ |
| 日程の都合 | 頻繁に報告された重大な障害 |
これが意味することは重大です。PTSD、抑うつ、心疾患のある人が除外されているということは、試験に参加したのは「比較的状態の良い」依存症の人たちだったということになります。物質使用障害では、これらの併存はむしろ一般的です。
試験の結果を、実際の患者にそのまま当てはめられるとは限りません。
予防としては
使い始める前の段階ではどうか。中学1年生を対象に、通常の体育の代わりに32回のヨガを行う群(117名)と、通常の体育を続ける群(94名)にクラス単位で無作為化した試験があります。
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 喫煙を試すことへの意思 | 対照群のほうが有意に高かった(=ヨガ群で低い) |
| 感情の自己調整、知覚ストレス、気分の障害、衝動性、物質使用への意思、実際の物質使用 | 介入直後の群間差なし |
| 長期追跡(6か月・1年) | 女子はヨガ群、男子は対照群で感情の自己統制が改善という遅延効果のパターン |
6つのアウトカムのうち、直後に差が出たのは1つだけでした。しかも「実際の物質使用」ではなく「喫煙を試す意思」です。長期追跡では性別によって逆の結果が出ており、解釈は困難です(Butzer ら, 2016, Journal of Youth and Adolescence)。
実践者は何を経験しているか
数字だけでは見えない部分について、質的研究があります。物質使用歴のある5名への半構造化面接から、3つの上位テーマが抽出されました。
| テーマ | 内容 |
|---|---|
| 身体・心・感情への気づきの増大 | 筋緊張への気づき、身体的ストレスの軽減、肯定的感情の増加、否定的感情への耐性の構築 |
| ヨガが肯定的な生き方を開く | — |
| ヨガと12ステップ回復の世界を融合させる | 断酒・断薬を基本とする生活様式と両立し、社会的ネットワークを広げた |
とくに感覚の制御(八支則の制感)が、再発の内的な引き金——否定的な思考や感情——に対抗するのに役立ったと報告されています(Miller, 2024, Counselling and Psychotherapy Research)。5名の面接であり、一般化はできませんが、作用の仕組みを考える手がかりになります。
理論的な整理としては、2013年の総説が「ヨガとマインドフルネスの実践を通じて学ばれる技能、洞察、自己認識は、依存と再発に関与する複数の心理的・神経的・生理的・行動的過程を標的としうる」という枠組みを示しています。ただし同じ総説は「依存の治療や予防におけるヨガの特異的な役割を検討した研究はごくわずかである」とも明記しています(Khanna & Greeson, 2013, Complementary Therapies in Medicine)。
いま言えること
- 禁煙について、7試験を統合した2025年の解析はオッズ比 1.50(0.60〜3.73)で有意でない
- 高リスク試験を除くと異質性が 65% から 16% に低下した。ばらつきの多くは研究の質に由来する
- 227名の最も厳密な試験では、ヨガ群の禁煙オッズが37%高く、クラス1回ごとに12%上昇という用量効果があった。対照群には用量効果なし
- 有意な信頼区間が得られたのは、1日10本以下の軽度喫煙者(OR 2.43、1.09〜6.30)
- 55名のパイロット試験では、治療終了時 OR 4.56 が6か月後には 1.54(0.34〜6.92)と有意でなくなった
- アルコールでは、有酸素運動・ヨガ・電話支援の3群すべてが飲酒量を減らし、群間差はなかった
- 物質使用障害8試験のうち7件は、薬理学的治療との併用で有意だった
- 呼吸法に基づく介入は、タバコとオピオイドについて短期のアウトカムのみエビデンスあり。アルコールとコカインは文献が乏しい
- 依存症のヨガ試験では、参加候補者の54%が組み入れられていない。除外理由にPTSD・抑うつ・心疾患が含まれる
- 予防を目的とした中学生の試験では、6つのアウトカムのうち直後に差が出たのは「喫煙を試す意思」1つのみ
読み方をまとめます。
統合すると有意にならない。禁煙のオッズ比は 1.50 で、信頼区間が1をまたぎます。
しかし最も厳密な単一試験では、用量効果を伴う肯定的な結果が出ています。接触時間をそろえた対照群と比べて、です。
効果があるとしても、それは軽度の喫煙者において、そして短期において、という限定がつきます。
そしてほぼすべての研究で、ヨガは標準治療への追加として検討されています。置き換えではありません。
実務的な意味を整理します。
禁煙を目指す人が、認知行動療法や禁煙補助薬に加えてヨガを行うことには、否定する理由がありません。抑うつ、不安、生活の質の改善は比較的一貫して報告されており、禁煙時の負担——ストレス、否定的感情、体重増加への懸念——に働きかけうる筋も通っています。
ただしヨガだけで禁煙する、という期待は支持されていません。統合解析では有意にならず、長期の維持も示されていません。
そして最も重要な点として、禁煙補助薬や依存症治療の代わりにはなりません。効果を示した研究の大半は、薬理学的治療との併用でした。オピオイド置換療法を受けている方が、それをやめてヨガに切り替えることを支持するデータはありません。
出典
- Singh S, et al. Efficacy of yoga on tobacco cessation. A systematic review and meta-analysis. Nicotine & Tobacco Research. 2025. DOI: 10.1093/ntr/ntaf236
- Bock BC, et al. Yoga as a Complementary Therapy for Smoking Cessation: Results from BreathEasy, a Randomized Clinical Trial. Nicotine & Tobacco Research. 2018. DOI: 10.1093/ntr/nty212
- Bock BC, et al. Testing the efficacy of Yoga as a Complementary Therapy for Smoking Cessation: Design and Methods of the BreathEasy trial. Contemporary Clinical Trials. 2014. DOI: 10.1016/j.cct.2014.06.003
- Bock BC, et al. Yoga as a Complementary Treatment for Smoking Cessation in Women. Journal of Women’s Health. 2012. DOI: 10.1089/jwh.2011.2963
- Gunillasdotter V, et al. Effects of exercise in non-treatment seeking adults with alcohol use disorder: A three-armed randomized controlled trial (FitForChange). Drug and Alcohol Dependence. 2022. DOI: 10.1016/j.drugalcdep.2022.109266
- Walia N, et al. Yoga for Substance Use: A Systematic Review. The Journal of the American Board of Family Medicine. 2021. DOI: 10.3122/jabfm.2021.05.210175
- Posadzki P, et al. Yoga for addictions: a systematic review of randomised clinical trials. Focus on Alternative and Complementary Therapies. 2014. DOI: 10.1111/fct.12080
- Gupta S, et al. Effectiveness of Interventions Based on Yogic Breathing Practices (IB-YBP) on Substance Use Disorders—A Systematic Review of the Randomized Control Trials and Quasi-Experimental Trials. Substance Use & Misuse. 2021. DOI: 10.1080/10826084.2021.1942056
- Brooks J, et al. Yoga for Substance Use Disorder in Women: A Systematic Review. International Journal of Yoga Therapy. 2020. DOI: 10.1016/j.apmr.2020.09.349
- Kuppili PP, et al. Role of Yoga in Management of Substance-use Disorders: A Narrative Review. Journal of Neurosciences in Rural Practice. 2018. DOI: 10.4103/jnrp.jnrp_243_17
- Sevda P, et al. A Systematic Review Investigating the Nonparticipation Rate and Recruitment Challenges in Yoga Trials for Addictive Disorders. International Journal of Yoga. 2026. DOI: 10.4103/ijoy.ijoy_25_25
- Butzer B, et al. Evaluation of Yoga for Preventing Adolescent Substance Use Risk Factors in a Middle School Setting: A Preliminary Group-Randomized Controlled Trial. Journal of Youth and Adolescence. 2016. DOI: 10.1007/s10964-016-0513-3
- Miller NM. ‘Yoga is a way of life’ exploring experiences of yoga as a treatment for substance use: An interpretative phenomenological analysis. Counselling and Psychotherapy Research. 2024. DOI: 10.1002/capr.12817
- Khanna S, Greeson JM. A Narrative Review of Yoga and Mindfulness as Complementary Therapies for Addiction. Complementary Therapies in Medicine. 2013. DOI: 10.1016/j.ctim.2013.01.008
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。禁煙や依存症の治療については、禁煙外来、精神科、依存症専門医療機関など専門の医療機関に相談してください。ここで扱った研究の大半は、標準的な薬物療法や心理療法に追加する形で行われたものです。禁煙補助薬、オピオイド置換療法、その他の処方薬を自己判断で中止・変更しないでください。離脱症状は身体的に危険な場合があり、とくにアルコールやベンゾジアゼピンでは医学的管理が必要です。






