「学校の体育は、生涯にわたる運動習慣の土台をつくる」——体育の目的として、ほぼ必ず掲げられる目標です。学習指導要領にも、諸外国の教育政策にも、同種の文言が入っています。
この主張は、検証されているのでしょうか。答えは「一部は検証されており、結果は控えめで、しかも追跡期間を延ばすと消えることがある」です。
最も劇的な例を先に示します。同じコホートを、35歳の時点で調べたときには効果が見つかり、44歳の時点で調べたときには消えていました。

まず、子どもの運動は大人の運動をどれだけ予測するか
体育の効果を論じる前に、そもそも「子どもの頃に動いていた人は大人になっても動くのか」を確認します。
García-Hermoso A, et al. Tracking of physical activity and sport from childhood and adolescence to adulthood: a systematic review and meta-analysis. Translational Pediatrics. 2025. DOI: 10.21037/tp-2025-89
6〜18歳を対象とし、小児期・青年期から成人期までの追跡を検討した研究を集めた統合です。38研究・63,158名、平均追跡期間20.9年が対象になりました。
| 指標 | 相関係数 r | 95%信頼区間 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 身体活動の追跡性 | 0.14 | 0.11〜0.16 | 低い |
| スポーツ参加の追跡性 | 0.26 | 0.20〜0.31 | 低い |
r = 0.14 は、決定係数に直せば 約2%です。つまり大人の身体活動量のばらつきのうち、子どもの頃の身体活動量で説明できるのは2%程度ということになります。スポーツ参加でも約7%です。
この値は性別・年齢群を通じて一貫していましたが、若年成人期のほうが成人期より追跡性が高く(身体活動 P < 0.001、スポーツ参加 P = 0.03)、追跡期間が長いほど相関係数は緩やかに低下していくことも報告されています。
領域別に検討した20年追跡の研究も、同じ方向です。1985年に9〜15歳だった6,412名を対象に、2004〜2006年(26〜36歳)に2,201名を追跡したものでは、子どもと大人の活動量の相関は r = −0.08〜0.14 と弱く、「子ども時代の週あたり総身体活動量は、成人期の活動量を予測しなかった」と報告されました(Cleland ら, 2011, British Journal of Sports Medicine)。
ただしこの研究では、学校体育だけは成人期の週あたり総身体活動量と歩数を予測した(年長女性において)という所見もあります。学校スポーツの関連は一貫しませんでした。
同じコホートで、結論が反転した
ここからが本題です。カナダのトロワリヴィエール成長発達研究は、この問いを直接扱える数少ないデータです。1970年代前半に、小学校6年間を通じて週5回の専門教員による体育を受けた実験群と、週40分の学級担任による体育を受けた対照群がありました。
1999年の報告(実験群の成人期)
Trudeau F, et al. Daily primary school physical education: effects on physical activity during adult life. Medicine and Science in Sports and Exercise. 1999;31(1):111–117. DOI: 10.1097/00005768-199901000-00018
実験群147名と、年齢・性別・社会経済的プロフィールでマッチさせたケベック健康調査からの対照群720名を比較したものです。
- 実験群の女性は、対照群の女性より身体活動の頻度が高かった
- 運動への意図・態度は両群で同様。運動の機会や家族・友人からの支援にも差なし
- 実験群の男性は、常習喫煙者の割合が低かった
著者らの結論は「小学校での毎日の体育は、女性の運動習慣に有意な長期的正の効果を及ぼしたことを強く示唆する」というものでした。注目すべきは、態度や意図には差がないのに行動に差が出ている点です。
2004年の報告(35歳時点)
Trudeau F, et al. Tracking of physical activity from childhood to adulthood. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2004;36(11):1937–1943. DOI: 10.1249/01.mss.0000145525.29140.3b
10〜12歳時のデータと、34.9±1.1歳時のデータを166名について突き合わせたものです。
| 子ども時代の指標 | 成人期の身体活動との相関 r |
|---|---|
| 総身体活動 | 0.20 |
| 高強度身体活動 | 0.18 |
| 組織的な低強度活動 | 0.12 |
| 非組織的活動 | 0.19 |
男性(n = 79)では、子ども時代の組織的身体活動の総時間が成人期の活動と関連し(r = 0.26、P < 0.05)、それは強化体育を受けた学生によるものでした(r = 0.34)。女性でも、成人期の活動頻度の高さが強化体育と有意に関連していました。
著者らの結論は「初期の必修体育が成人期の身体活動に正の影響を及ぼすことを示唆する」。ただし同時に「子ども時代の他の種類の身体活動に費やした時間と、成人期の身体活動とのあいだの全般的な関連については、ほとんど証拠を提供しない」とも述べています。
2015年の報告(44歳時点)
Larouche R, et al. Daily physical education in primary school and physical activity in midlife: the Trois-Rivières study. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2015;55(5):527–534.
2008年に、同じ研究の参加者86名(女性44名・男性42名、44.0±1.2歳)が追跡されました。現在の身体活動水準と、その規定因(運動する意図、楽しさの知覚、有用性、容易さ、社会的支援、社会規範)が調べられています。
「現時点で、実験群と対照群のあいだに、身体活動の頻度・時間・量のいずれについても差はなかった。さらに、検討したどの身体活動の規定因についても群間差は認められなかった。」
著者らの結論は率直です。「小学校を通じて毎日の体育を提供することは、個人が中年期に活動的であり続けることを保証するには不十分であると思われる。したがって、身体活動促進に対するライフコース・アプローチの開発が求められる。」
この3つをどう読むか
同じ介入、同じ参加者です。35歳では効果があり、44歳では消えました。考えられる読み方は複数あります。
| 読み方 | 内容 |
|---|---|
| 効果が時間とともに減衰した | 追跡性の相関が追跡期間とともに低下するという統合研究の所見と整合する |
| 2015年の標本が小さすぎた | 86名。差を検出する検出力が不足していた可能性 |
| 脱落によるバイアス | 1999年147名 → 2004年166名 → 2015年86名。残った人の性質が変わった可能性 |
| 中年期のライフイベントが上書きした | 就労・育児・介護などの制約が、幼少期の経験の差を飲み込んだ |
どれが正しいかは、このデータだけでは決められません。確かなのは、「子どもの頃の体育が生涯の習慣をつくる」という主張が、少なくとも中年期まで追ったときには支持されなかったという事実です。

効果を報告している研究もある
公平を期すために、肯定的な結果も見ます。
Lahti A, et al. Long-term effects of daily physical education throughout compulsory school on duration of physical activity in young adulthood: an 11-year prospective controlled study. BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2018;4:e000360. DOI: 10.1136/bmjsem-2018-000360
スウェーデンで、7.7±0.6歳の子ども124名(介入群81名・対照群43名)を、7年間の介入期間中と、介入終了4年後(18.7±0.3歳)まで追跡したものです。介入群は週200分の体育、対照群はスウェーデンの標準である週60分でした。
| 時点 | 身体活動(介入群 − 対照群) | 座位活動 |
|---|---|---|
| ベースライン | 両群で同様 | 両群で同様 |
| 介入7年後 | +4.5時間/週(2.9〜6.0) | +0.6時間/週(−2.5〜3.9)差なし |
| 介入終了4年後 | +2.7時間/週(0.8〜4.7) | −3.9時間/週(−9.7〜1.7)差なし |
介入終了から4年後でも差が残っています。ただし差は 4.5時間/週 から 2.7時間/週 へと縮小しており、信頼区間の下限は 0.8 とゼロに近づいています。そして追跡時点の年齢は18.7歳——トロワリヴィエール研究で効果が消えた44歳とは、はるかに手前です。
20年後を見た研究
Kulinna PH, et al. Effectiveness of Secondary School Conceptual Physical Education: A 20-Year Longitudinal Study. Journal of Physical Activity and Health. 2018. DOI: 10.1123/jpah.2018-0091
高校で「概念的体育(conceptual physical education)」——スポーツ技能ではなく活動的な生活様式の原理を教える授業——を受けた参加者を、高校卒業20年後・受講24年後に追跡したものです。
| 比較 | 結果 |
|---|---|
| 高校時代の自分と比べて | 不活動である可能性が低く、中強度で活動的である可能性が高い |
| 同年齢の全国標本と比べて | 不活動である可能性が低く、中強度で活動的である可能性が高い |
| 高強度の身体活動 | 比較群より多くはなかった |
「不活動を減らし、中強度の活動を促進する」という限定された効果です。高強度では差がありませんでした。なお、この研究には無作為化された対照群がなく、全国標本との比較にとどまる点には注意が必要です。
大規模な縦断データ
García-Hermoso A, et al. Association Between Daily Physical Education Attendance and Meeting 24-Hour Movement Guidelines in Adolescence and Adulthood. Journal of Adolescent Health. 2023. DOI: 10.1016/j.jadohealth.2023.06.014
米国の National Longitudinal Study of Adolescent Health の第1波(1994–1995、12〜17歳)と第5波(2016–2018、33〜39歳)を用いたものです。24時間行動ガイドライン(身体活動・スクリーンタイム・睡眠時間)の3つすべてを満たす確率を検討しています。
| 時期 | 毎日の体育(週0日との比較) | 体育が週1時間増えるごと |
|---|---|---|
| 青年期 | 男性 IRR 1.70(1.02〜3.12) | 男性 IRR 1.11(1.05〜1.35) |
| 女性 IRR 3.81(1.65〜8.77) | 女性 IRR 1.67(1.27〜2.24) | |
| 成人期(33〜39歳) | 男性 IRR 1.04(1.01〜1.07) | 男性 IRR 1.02(1.01〜1.05) |
| 女性 IRR 1.07(1.00〜1.11) | 女性 IRR 1.03(1.01〜1.06) |
青年期の効果量(女性 IRR 3.81)と成人期の効果量(女性 IRR 1.07)を比べてください。桁が違います。成人期の女性の信頼区間の下限は 1.00 で、ちょうど境界に接しています。著者らは「これらの便益は成人期にまで及ぶ可能性がある(could extend)」と、慎重な表現を使っています。
より大きな標本を用いた後ろ向き研究もあります。19〜70歳の258,146名(女性49%)を対象に、20歳未満時点の体育授業参加と校外の身体活動を自己申告で収集したものです。
| 群 | 体育授業に参加していた場合のオッズ比 |
|---|---|
| 女性(悪い主観的健康、全般性肥満、高い拡張期血圧) | 0.81〜0.87 |
| 女性(定期的な運動、正常〜高い推定最大酸素摂取量) | 1.17〜1.23 |
| 男性(悪い主観的健康、全般性肥満、腹部肥満) | 0.66〜0.86 |
関連は70歳まで認められました。しかし著者らは重要な但し書きをつけています。「放課後の身体活動を増やすことのほうが、さらに強い有益な関連を示した。」そして共同解析では、若年期の身体活動と現在の身体活動の両方が重要でした(Ekblom-Bak ら, 2018, Journal of Physical Activity and Health)。
この研究は後ろ向きの自己申告であり、数十年前の体育授業参加を思い出して答えたものです。想起バイアスは避けられません。
効いているのは授業時間ではなく、経験の質かもしれない
近年の研究は、体育の「量」ではなく「どう記憶されているか」に注目しています。
Brand R, et al. Affective memories of school physical education, life-phase timing of formative experiences, and adult sport and exercise participation: a quota-representative study in Germany. BMC Public Health. 2026. DOI: 10.1186/s12889-026-28587-4
ドイツ在住成人の割当代表標本 N = 2,201 を対象に、体育の記憶の感情的な価(PEMV)と、自己申告による形成的なスポーツ経験の時期(FSEE)が、成人期のスポーツ・運動行動と関連するかを検討したものです。行動を3層(参加するか/どれだけ時間を使うか/週のなかでどう組み立てるか)に分けています。
「体育の記憶の感情的な価は、成人がスポーツ・運動に参加しているかどうかと最も強く関連しており、これはゲートキーピング(門番)のパターンを示している。」
つまり体育の記憶は「やるかやらないか」を左右するが、「どれだけやるか」はあまり左右しないということです。
そしてもうひとつ、重要な所見があります。形成的な経験の時期を「成人期」と答えた少数の集団では、体育の記憶と参加の関連が切り離されていました。著者らはこう述べています。
「体育の否定的な記憶が、生涯にわたる不参加と結びついたままである必要はない。自分の好みによりよく合う運動の形式を選ぶ後年の機会が、参加への第二の入口を提供しうる。」
何が記憶を悪くするのか
Limmeroth J, et al. Last in Line, Lasting in Mind? A Retrospective Investigation of the Relationship Between Physical Education Experiences and Adult Physical Activity. Journal of Sport & Exercise Psychology. 2026. DOI: 10.1123/jsep.2025-0008
ドイツの成人 N = 692 を対象とした後ろ向き研究です。
| 体育の記憶 | 成人期の行動との相関 |
|---|---|
| 体育を楽しかったと記憶している | 中〜高強度身体活動 r = .15(p < .001) |
| 体育を楽しかったと記憶している | 座位時間 r = −.14(p < .001) |
| チーム分けで最後に選ばれた | 身体活動 r = −.11(p = .004) |
回帰分析では、チーム分けの経験と成人期の身体活動のあいだを、体育の楽しさが媒介していました。
31の一次研究(累計 N ≈ 42,000)を統合した系統的レビューも、同じ方向を示しています。
| 体育の経験 | 効果量 r | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 体育の楽しさ → 身体活動への好意的態度 | 0.37 | 0.31〜0.43 |
| 体育の楽しさ → 座位行動の少なさ | −0.14 | −0.21〜−0.07 |
| 体育における社会的排除 → 成人期の不活動 | −0.22 | −0.30〜−0.14 |
| 小児期から成人期への身体活動の追跡性 | 0.14〜0.19 | — |
著者らは「女性はより否定的な体育経験を報告し、成人期の不活動も大きいという性差が一貫していた」と報告しています(Arroyo-Jofré ら, 2026, Retos)。
興味深いことに、体育における「楽しさ」や「自律的動機づけ」が将来の身体活動を予測しなかったという報告もあります。フィンランドの333名を6年間追跡した研究では、中学1年時点の「知覚された身体的有能感」が6年後の総MET(β = .28)、中強度(β = .18)、高強度(β = .29)を有意に予測した一方、体育における自律的動機づけと楽しさは有意な予測因子ではありませんでした(Jaakkola ら, 2016, Journal of Science and Medicine in Sport)。
「楽しかった記憶」と「自分はできるという感覚」は別物であり、後者のほうが強い予測因子だった、ということになります。

そもそも「体育の効果」を取り出せるのか
この領域には、方法論そのものへの根本的な批判があります。
Green K. Mission impossible? Reflecting upon the relationship between physical education, youth sport and lifelong participation. Sport, Education and Society. 2014;19(4):357–375. DOI: 10.1080/13573322.2012.683781
著者の指摘は次のとおりです。「そうした信念が広く行き渡っているにもかかわらず、『体育効果』を実証する証拠は乏しいままである。実際、体育・青少年スポーツ・生涯参加のあいだの関係の正確な性質が探究されることはめったになく、たいていは暗黙裡に、しばしば思弁的・言説的な形で、前者が後者に及ぼす正の効果を単に当然視している。」
そのうえで著者は、「体育効果」を同定し特徴づけ確立しようとする試みに内在する問題を指摘し、若者のスポーツ経歴とスポーツ・ハビトゥスを探究する縦断的・伝記的研究がより必要であると論じています。
38年追跡が示したもの
この批判に応える形の研究があります。
Engström LM. Who is physically active? Cultural capital and sports participation from adolescence to middle age—a 38-year follow-up study. Physical Education and Sport Pedagogy. 2008;13(4):319–343. DOI: 10.1080/17408980802400510
1968年に15歳だったスウェーデンの生徒(4つの県から無作為抽出した91学級)を、2007年まで38年間追跡したものです。到達可能群の77%にあたる1,518名から回答を得ています。ブルデューの概念枠組みを出発点としています。
| 15歳時点の要因 | 中年期の運動習慣との関連 |
|---|---|
| スポーツクラブへの所属 | 有意な関連なし(スポーツ経験の幅を同時に統制した場合) |
| スポーツ活動に費やした時間 | 有意な関連なし(同上) |
| スポーツ経験の幅 | 有意な関連あり |
| 体育の成績 | 有意な関連あり |
| 非常に高い文化資本(社会的背景と理論科目の成績で定義) | 38年後に運動を続けている確率が、非常に低い群の約5倍 |
著者の結論はこうです。「中年の個人の運動水準は、その人の社会的地位、したがって教育資本と密接に結びついている。この中産階級的地位を達成する可能性が最も高い子ども・青年は、比較的高い社会的地位を持つ家庭の出身か、理論科目で高い成績を収めた者であった。加えて強いスポーツ・ハビトゥスを持っていれば、その人の運動への傾向はさらに強められた。」
この所見は、身体活動の社会階層格差の研究と正面から接続します。体育の効果として観察されているものの少なくとも一部は、文化資本の効果かもしれないということです。
いま言えること
- 小児期から成人期への身体活動の追跡性は低い。38研究・63,158名・平均追跡20.9年で r = 0.14(決定係数にして約2%)。スポーツ参加でも r = 0.26
- 追跡期間が長いほど相関は緩やかに低下する
- トロワリヴィエール研究では、35歳時点で見つかった強化体育の効果(男性 r = 0.34)が、44歳時点では消えていた。頻度・時間・量のいずれにも群間差なし、規定因にも群間差なし
- ただしこの44歳時点の標本は86名であり、検出力の問題を排除できない
- スウェーデンの11年追跡では、介入終了4年後(18.7歳)でも +2.7時間/週 の差が残った。ただし介入中の +4.5時間/週 からは縮小
- 20年後の追跡では、不活動である可能性が低く中強度の活動が多い一方、高強度では差がなかった
- 大規模縦断データでは、青年期の効果量(女性 IRR 3.81)に対し成人期は IRR 1.07 と桁が違う
- 258,146名の後ろ向き研究では体育授業参加に関連が認められたが、著者らは「放課後の身体活動のほうがさらに強い関連を示した」と明記
- 体育の記憶の感情的な価は「参加するかどうか」と最も強く関連する(ゲートキーピング)が、「どれだけやるか」はあまり左右しない
- チーム分けで最後に選ばれた経験は成人期の身体活動と負の関連(r = −.11)。体育における社会的排除は成人期の不活動を予測(r = −0.22)
- 体育の楽しさと自律的動機づけは6年後の身体活動を予測しなかったが、「知覚された身体的有能感」は予測した(β = .28)
- 38年追跡では、スポーツクラブ所属もスポーツ時間も中年期の運動習慣と有意に関連せず、スポーツ経験の幅と体育の成績、そして文化資本が関連した。文化資本が非常に高い群は非常に低い群の約5倍
- 体育の記憶が否定的でも、成人期に好みに合う運動形式を選ぶ「第二の入口」がありうる
これらを総合すると、「学校体育は生涯の運動習慣をつくる」という命題は、そのままでは支持されません。支持されるのは、もっと限定的な次の形です。
学校体育は、運動を「する側」に入るかどうかの門番として働きうる。しかし入った後にどれだけ続くかは、その後のライフコースと、その人が使える資源(時間・文化資本・社会的地位)のほうが強く規定する。
実務的な含意として比較的確からしいのは、「体育の時間を増やす」ことよりも「体育で嫌な思いをさせない」ことのほうが、証拠との整合性が高いという点です。社会的排除の効果量(r = −0.22)は、追跡性そのもの(r = 0.14)より大きく出ています。
そしてもうひとつ、Brand らの「第二の入口」という所見は実務的に重要です。体育が嫌いだった大人が運動を始められないわけではありません。むしろ、学校で与えられた形式とは違う運動の形を選べるかどうかが分かれ目になる、という示唆です。
出典
- García-Hermoso A, et al. Tracking of physical activity and sport from childhood and adolescence to adulthood: a systematic review and meta-analysis. Translational Pediatrics. 2025. DOI: 10.21037/tp-2025-89
- Cleland V, et al. Which domains of childhood physical activity predict physical activity in adulthood? A 20-year prospective tracking study. British Journal of Sports Medicine. 2011. DOI: 10.1136/bjsports-2011-090508
- Trudeau F, et al. Daily primary school physical education: effects on physical activity during adult life. Medicine and Science in Sports and Exercise. 1999;31(1):111–117. DOI: 10.1097/00005768-199901000-00018
- Trudeau F, et al. Tracking of physical activity from childhood to adulthood. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2004. DOI: 10.1249/01.mss.0000145525.29140.3b
- Larouche R, et al. Daily physical education in primary school and physical activity in midlife: the Trois-Rivières study. Journal of Sports Medicine and Physical Fitness. 2015.
- Lahti A, et al. Long-term effects of daily physical education throughout compulsory school on duration of physical activity in young adulthood: an 11-year prospective controlled study. BMJ Open Sport & Exercise Medicine. 2018;4:e000360. DOI: 10.1136/bmjsem-2018-000360
- Kulinna PH, et al. Effectiveness of Secondary School Conceptual Physical Education: A 20-Year Longitudinal Study. Journal of Physical Activity and Health. 2018. DOI: 10.1123/jpah.2018-0091
- García-Hermoso A, et al. Association Between Daily Physical Education Attendance and Meeting 24-Hour Movement Guidelines in Adolescence and Adulthood. Journal of Adolescent Health. 2023. DOI: 10.1016/j.jadohealth.2023.06.014
- Ekblom-Bak E, et al. Physical Education and Leisure-Time Physical Activity in Youth Are Both Important for Adulthood Activity, Physical Performance, and Health. Journal of Physical Activity and Health. 2018. DOI: 10.1123/jpah.2017-0083
- Brand R, et al. Affective memories of school physical education, life-phase timing of formative experiences, and adult sport and exercise participation: a quota-representative study in Germany. BMC Public Health. 2026. DOI: 10.1186/s12889-026-28587-4
- Limmeroth J, et al. Last in Line, Lasting in Mind? A Retrospective Investigation of the Relationship Between Physical Education Experiences and Adult Physical Activity. Journal of Sport & Exercise Psychology. 2026. DOI: 10.1123/jsep.2025-0008
- Arroyo-Jofré P, et al. La educación física que recordamos: experiencias escolares y actividad física en adultos: una revisión sistemática. Retos. 2026;82. DOI: 10.47197/retos.v82.119399
- Jaakkola T, et al. Perceived physical competence towards physical activity, and motivation and enjoyment in physical education as longitudinal predictors of adolescents’ self-reported physical activity. Journal of Science and Medicine in Sport. 2016. DOI: 10.1016/j.jsams.2015.11.003
- Green K. Mission impossible? Reflecting upon the relationship between physical education, youth sport and lifelong participation. Sport, Education and Society. 2014. DOI: 10.1080/13573322.2012.683781
- Engström LM. Who is physically active? Cultural capital and sports participation from adolescence to middle age—a 38-year follow-up study. Physical Education and Sport Pedagogy. 2008. DOI: 10.1080/17408980802400510
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで扱った研究の多くは観察研究または対照群を伴わない縦断研究であり、集団レベルの関連を示すものです。






