イメージトレーニング、セルフトーク、マインドフルネス——心理的スキルの訓練は、競技力を高める手段として広く普及しています。効果を報告するメタ分析も多数あり、効果量は中程度と要約されるのが一般的です。
ところが、この領域で最も包括的なレビューは、次のように結論しています。「有意な中程度の効果は安定していない(not stable)」。研究デザインの質で選別すると、効果が消えたためです。
そして重要なのは、これが一本の論文の特殊な結果ではないことです。同じ形——「全体では効くが、質の高い研究だけに絞ると消える」——が、この領域の複数の独立したレビューで繰り返し観察されています。ここでは、何がどこまで示されているのかを、感度分析と出版バイアス補正の結果まで含めて整理します。

まず全体像:30のメタ分析を束ねると
個別の研究に入る前に、この領域全体がどう見えているかを確認します。
Lochbaum M, et al. Sport psychology and performance meta-analyses: A systematic review of the literature. PLoS ONE. 2022;17(2):e0263408. DOI: 10.1371/journal.pone.0263408
1983年から2021年に発表された30のメタ分析を対象とし、16の異なるスポーツ心理学の概念を扱ったレビューです。結果は次のとおりでした。
| 種別 | 効果量(d) |
|---|---|
| 成績を高めると仮定された要因(凝集性、自信、マインドフルネスなど) | +0.51(中程度) |
| 成績を損なうと仮定された要因(認知的不安、抑うつ、自我志向的風土など) | −0.21(小) |
興味深いのは、著者らが「メタ分析の質の評価」も「元研究の研究デザイン(介入か相関か)」も、観察された効果の大きさを有意に調整しなかったと報告していることです。つまり俯瞰したレベルでは、研究の質と効果量のあいだにはっきりした関係は見えなかったということになります。
しかし個別のレビューに降りていくと、話は変わります。
最も包括的なレビューが出した結論
Reinebo G, Alfonsson S, Jansson-Fröjmark M, Rozental A, Lundgren T. Effects of Psychological Interventions to Enhance Athletic Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2024;54(2):347–373. DOI: 10.1007/s40279-023-01931-z
地域レベル以上で競技する選手を対象に、定量的な成績アウトカムを持つ心理的介入研究を網羅した系統的レビューです。111研究が適格基準を満たし、そのうち介入の種類・比較対照・実験デザインが類似した25研究(37効果)が5つのメタ分析に統合されました。
| メタ分析 | 効果量(Hedges’ g) | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| I. 多面的な心理スキル訓練 対 対照 | 0.83 | 0.21〜1.45 |
| II. マインドフルネス・アクセプタンス系 対 対照 | 0.67 | 0.01〜1.32 |
| III. イメージ 対 対照 | 0.75 | 0.14〜1.36 |
| IV. 注意の焦点(外的 対 内的) | 有意でない | |
| V. 制御焦点の指示(予防 対 促進) | 有意でない | |
3つの介入で中程度の有意な効果が出ています。ここまでなら、心理的介入は有効だという結論になります。しかし著者らは感度分析を行いました。
「非無作為化試験と主観的な成績アウトカムを取り除いた感度分析では、どの統合においても効果量の全体推定値はもはや有意ではなかった。」
信頼区間の下限を見ると、この結果はある程度予想できるものでもあります。マインドフルネス系の下限は 0.01、イメージは 0.14、心理スキル訓練は 0.21。いずれもゼロのすぐ上にあります。研究をいくつか除けば、区間はゼロをまたぎます。
著者らの結論は「心理スキル訓練、マインドフルネス・アクセプタンス系、イメージの有意な中程度の効果は安定していない。競技者の成績向上を目的とするすべての種類の心理的介入について、無作為化比較試験のような頑健な研究方法によるさらなる試験が求められる」というものでした。

同じ形が、別の対象でも繰り返される
これが Reinebo らの研究に特有の結果なら、その一本を割り引けば済みます。しかし同じパターンが、別のアウトカム・別の技法でも観察されています。
エリート選手の精神的ウェルビーイング
Wang W, et al. Psychological Interventions to Improve Elite Athlete Mental Wellbeing: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. 2025. DOI: 10.1007/s40279-024-02173-3
27研究(うち15研究をメタ分析)を対象に、エリート選手の精神的ウェルビーイングへの介入効果を検討したものです。
| 介入 | 効果量(SMD) | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| 心理スキル訓練 | 0.78 | 0.24〜1.32 |
| 第三世代の介入(マインドフルネス系など) | 0.32 | 0.01〜0.63 |
| ポジティブ心理学的介入 | 0.58 | 0.31〜0.85 |
ここでも著者らは感度分析を行いました。「第三世代の介入について準実験研究を除外した感度分析では、効果はもはや有意ではなかった。」結論は「より頑健な実験デザインによる研究が今後必要」というものです。
Reinebo らと Wang らは、対象も(競技成績とウェルビーイング)、含まれる研究も異なります。それでも同じ操作——質の低いデザインを除く——で、同じことが起きました。
左手握りという単一技法
Luan M, et al. A Systematic Meta-Analysis of the Effectiveness of (Left) Hand Contractions on Motor Performance. Sport, Exercise, and Performance Psychology. 2024. DOI: 10.1037/spy0000353
プレッシャー下での失敗を防ぐ手法として提案されている「左手の握り込み」について、10研究・12効果量を統合したものです。全体で中程度の効果(g = 0.59、95%CI 0.14〜1.03)が得られ、調整変数の解析では実験デザインの研究、準エリート〜エリート選手、高プレッシャー条件で有意でした。
そして著者らは出版バイアスを推定・補正するために Trim and Fill 法を実施しました。結果は「介入効果は当初見えたほど頑健ではないかもしれない」というものです。結論は「この中程度の効果は慎重に解釈すべきである」。
3つの独立したレビューが、異なる方法(感度分析/出版バイアス補正)で、同じ方向の警告を出しています。これは偶然の一致として片付けにくい規則性です。
イメージトレーニング:効果量の変遷
ここから個別の技法を見ていきます。まずイメージ(mental imagery/mental practice)です。
Simonsmeier BA, Andronie M, Buecker S, Frank C. The effects of imagery interventions in sports: a meta-analysis. International Review of Sport and Exercise Psychology. 2021;14(1):186–207. DOI: 10.1080/1750984X.2020.1780627
スポーツ特異的なあらゆるアウトカムを対象とした統合で、全体の効果はd = 0.431(95%CI 0.298〜0.563)と中程度でした。イメージは運動成績、動機づけ、感情のいずれも有意に高め、身体練習にイメージを加えたほうが身体練習単独より効果的という結果です。効果はイメージ訓練の強度と正に関連していました。
ただし、出版バイアスを扱った再現研究では値が下がります。
Toth AJ, et al. Does mental practice still enhance performance? A 24 Year follow-up and meta-analytic replication and extension. Psychology of Sport and Exercise. 2020;48:101672.
1994年の古典的なメタ分析を、1995年から2018年に発表された37研究で方法論的に再現したものです。出版バイアスの分析を行った後、全体の効果は r = 0.131 と小さいながら有意でした。調整変数は、練習の期間、課題の種類、用いたイメージの種類でした。
スポーツ特異的な運動技能に絞ると
Lindsay R, et al. Mental imagery training programs for developing sport-specific motor skills: a systematic review and meta-analysis. Physical Education and Sport Pedagogy. 2021. DOI: 10.1080/17408989.2021.1991297
36研究(n = 1,449)を対象に、スポーツ特異的な運動技能の習得に絞って統合したものです。当初135の効果量が得られ、統計的な依存関係を処理して58効果に整理されました。
| 条件 | 効果量(Hedges’ g) |
|---|---|
| 全体 | 0.476 |
| イメージ + 身体練習 | 0.579 |
| イメージ単独 | 0.298 |
効果は技能の複雑さ、技能の構成要素、イメージの提供方法によって調整されました。この研究は Trim and Fill 法で出版バイアスを補正した値を報告しています。
著者らは実務的な含意として、「イメージ単独の有効性は、身体練習が不可能なとき、あるいは身体的なトレーニング量を減らす必要があるとき(シーズン中の競技期など)に、有用な道具となりうる」と述べています。一方で、複雑な技能への効果、および体育・指導の現場での効果については研究が乏しいことも明記されています。
何が改善して、何が改善しないか
種目を絞ると、改善する指標としない指標が分かれます。
Deng N, et al. Does Motor Imagery Training Improve Service Performance in Tennis Players? A Systematic Review and Meta-Analysis. Behavioral Sciences. 2024;14(3):207.
テニスのサーブに関する統合です。結果は次のとおりでした。
| 指標 | 効果 |
|---|---|
| サーブの正確性 | 改善 |
| サーブの技術 | 改善 |
| サーブの速度 | 影響なし |
| リターンの正確性 | 影響なし |
著者らは GRADE でエビデンスの確実性を評価し、「低いから非常に低い」としています。「より強い結論を得るには、さらなる実験的研究が必要」という留保付きの結果です。
この「一部の指標だけが動く」という所見は、実務上は重要です。「サーブが良くなる」と一括りにせず、「正確性は動くが速度は動かない」と分けて捉える必要があります。

セルフトーク
セルフトークについては、効く条件を細かく特定したメタ分析があります。
Hatzigeorgiadis A, et al. Self-Talk and Sports Performance: A Meta-Analysis. Perspectives on Psychological Science. 2011;6(4):348–356.
32研究・62効果量を統合した結果、全体で中程度の正の効果(ES = 0.48)が得られました。調整変数の解析からは、次の条件が浮かび上がっています。
- 細かい運動を要する課題のほうが、粗大な運動の課題より効果的
- 新規の課題のほうが、十分に習熟した課題より効果的
- 細かい課題では、指示的セルフトーク(何をするかを言葉にする)のほうが動機づけ的セルフトーク(自分を励ます)より効果的
- セルフトークの訓練を含む介入のほうが、含まない介入より効果的
最後の点は実務上重要です。「心のなかでこう言いなさい」と指示するだけでなく、その使い方を練習する過程そのものが効果に寄与していたということになります。
なぜ効くのか
効果の経路を検討した研究もあります。
Hatzigeorgiadis A, et al. Mechanisms underlying the self-talk–performance relationship: The effects of motivational self-talk on self-confidence and anxiety. Psychology of Sport and Exercise. 2009;10(1):186–192. DOI: 10.1016/j.psychsport.2008.07.009
テニス選手72名を実験群と対照群に無作為に割り付け、同じ練習プログラムを行ったうえで実験群だけがセルフトークの使用を練習しました。結果は次のとおりです。
- 課題成績は実験群で改善(p < .01)、対照群は変化なし
- 自信は実験群で上昇(p < .01)
- 認知的不安は実験群で低下(p < .05)
- 課題成績の変化と自信の変化のあいだに中程度の相関(p < .05)
著者らは「自信の上昇が、セルフトークの成績促進効果を説明しうる経路のひとつと考えられる」と述べています。ただしこれは相関であり、因果の順序を確定したものではありません。
技法を組み合わせるとどうなるか
イメージとセルフトークを組み合わせた介入は、比較的一貫した結果を出しています。
Hidayat Y, et al. The effect of the combined self-talk and mental imagery program on the badminton motor skills and self-confidence of youth beginner student-athletes. BMC Psychology. 2023;11:35. DOI: 10.1186/s40359-023-01073-x
10〜12歳のバドミントン初心者80名(男女各40名)を、指示的/動機づけ的セルフトーク × 認知的/動機づけ的イメージの4つの実験群と対照群に分け、8週間・週3回・計24回の介入を行った研究です。
結果は、セルフトークとイメージが運動技能と自信の習得に有意な効果を持つ一方、それぞれが独立に働いた場合には自信に有意な効果がなかったというものでした。運動技能に対しては指示的セルフトーク>動機づけ的セルフトーク、認知的イメージ>動機づけ的イメージでした。
同じ研究グループは、セルフトーク単独の効果も検討しています。10〜12歳のバドミントン初心者64名を対象とした研究では、指示的・動機づけ的・両者の組み合わせの3条件のうち、組み合わせ条件が技能習得と自信の両方で最も高く、指示的セルフトークは技能習得で、動機づけ的セルフトークは自信で、それぞれ優位でした(Hidayat Y, et al., 2014, Asian Social Science)。
技能水準によって、動く指標が違う
同じ研究者による2つのテニス研究を並べると、興味深い差が見えます。
| 初心者(若年) | 熟練者(地域〜全国レベル) | |
|---|---|---|
| 研究 | Robin N, et al. 2022, J Motor Learning and Development | Robin N, et al. 2022, Frontiers in Psychology |
| 人数・条件 | 対照/イメージ/イメージ+セルフトークの3群 | 33名を同じ3群に割り付け |
| 成功率 | イメージ群・組み合わせ群で改善 | イメージ群・組み合わせ群で改善(p < 0.01) |
| 技術・効率 | 改善。組み合わせ群が最も高い | 改善。組み合わせ群が最も高い |
| サーブ速度 | 組み合わせ群が対照群・イメージ単独群より高い | 群間差なし |
正確性と技術はどちらでも改善し、組み合わせが最も効果的でした。しかし速度は初心者では改善し、熟練者では改善しませんでした。これは Deng らのメタ分析(速度に影響なし)とも整合します。熟練者のサーブ速度はすでに身体的な上限に近く、注意や意図の操作で動く余地が小さい、という解釈が可能です。
用量
Liu Y, et al. The Effects of Imagery Practice on Athletes’ Performance: A Multilevel Meta-Analysis with Systematic Review. Behavioral Sciences. 2025;15(5):685.
86研究・3,593名を統合した多水準メタ分析です。イメージ練習を1〜2個の他の心理スキル訓練と統合したほうが、イメージ単独より効果が高いという結果が得られています。調整変数の解析からは、およそ10分間を週3回、100日程度という用量が最も大きい成績向上と関連していました。
ただし、この種の「最適用量」は研究間の比較(研究レベルの調整変数解析)から導かれたものであり、用量を無作為に割り付けて比較した結果ではありません。用量の違いと、その用量を採用した研究の他の特徴とを分離できていない点には注意が必要です。
プレッシャー下での成績
心理的介入がもっとも期待されるのは、本番で実力を出せない——いわゆるチョーキングへの対処です。
Zeng Z, et al. Counteracting choking under pressure in sport: A meta-analysis of interventions. Psychology of Sport and Exercise. 2026;79:103130. DOI: 10.1016/j.psychsport.2026.103130
21研究を統合した結果です。介入にはクワイエット・アイ訓練、プレパフォーマンス・ルーティン、マインドフルネス、左手握り、セルフトーク、論理情動行動療法が含まれます。
| アウトカム/課題 | 効果量(Hedges’ g) |
|---|---|
| 運動の正確性 | 0.660 |
| 遂行の成功 | 0.444 |
| 標的からのずれ | 0.301 |
| クローズドスキル競技 | 0.455(より大きく一貫) |
| オープンスキル課題 | 出版バイアス調整後は小さく頑健性を欠く |
ここでも同じ構図が現れます。環境が安定している競技(射撃、ゴルフのパットなど)では効果が確認されるが、相手や状況が変化する競技では調整後に効果が小さくなる。著者らは「変化し続ける競技環境のなかでこれらの介入がどう働くかを理解するには、生態学的妥当性の高いデザインによる研究がさらに必要」と述べています。
効かないと報告されているもの
「何が効くか」と同じくらい重要なのが「何が効かないか」です。
Gröpel P, et al. Choking interventions in sports: A systematic review. International Review of Sport and Exercise Psychology. 2019;12(1):176–201. DOI: 10.1080/1750984X.2017.1408134
2017年4月までに発表された47の実証研究を対象に、13種類の介入を検討したレビューです。
| 評価 | 介入 |
|---|---|
| 効果が報告されている | プレパフォーマンス・ルーティン、クワイエット・アイ訓練、左手握り、順化訓練 |
| 条件つき | 二重課題(プレッシャー下の成績には有益だが、訓練中に用いると有害) |
| 証拠が割れている | アナロジー学習 |
| 効果なしと報告 | 目標設定、ニューロフィードバック訓練、再評価の手がかり |
目標設定は指導現場で最も広く使われている手法のひとつですが、「プレッシャー下での成績低下を防ぐ」という特定の目的に限れば、効果が報告されていません。目標設定に他の効用(動機づけ、練習の構造化)があることとは、別の話です。
二重課題の扱いも実務的に重要です。本番で使うと助けになるが、練習で使うと学習を妨げる。同じ操作が文脈によって逆の符号を持つ例です。
競技不安への効果
成績そのものではなく、不安を下げる効果に絞ると、結果はやや安定します。
Ong N, et al. Effects of psychological interventions on competitive anxiety in sport: A meta-analysis. Psychology of Sport and Exercise. 2021;52:101836. DOI: 10.1016/j.psychsport.2020.101836
37研究が適格となり、外れ値を除いた34研究でメタ分析が行われました。全体で小〜中程度の効果(g = −0.42、95%CI −0.58〜−0.25)です。
注目すべきは、著者らが「この所見は実験デザイン、不安の測定尺度、不安の種類、性別、国、競技、介入の構成要素、介入の提供方法、介入期間にかかわらず頑健であった」と報告している点です。下位アウトカムでは、認知的不安 g = −0.54、自信 g = 0.55(いずれも中〜大)、身体的不安 g = −0.36(小〜中)でした。
成績アウトカムでは感度分析に耐えなかった一方、不安アウトカムでは下位群解析に対して頑健だった——この対比は、この領域を理解するうえで重要です。
どの介入が最も効くか
Li L, et al. The Effect of Different Psychological Interventions on Athletes’ Competitive Anxiety: A Systematic Review and Bayesian Network Meta-Analysis. Sports Medicine – Open. 2026;12. DOI: 10.1186/s40798-026-01007-y
46試験・2,049名を対象としたベイズ型ネットワークメタ分析です。マインドフルネス・アクセプタンス・コミットメント(MAC)が全体で最大の点推定値を示しました(SMD −1.33、95%信用区間 −2.31〜−0.43)。競技水準による違いも報告されています。
| 層 | 最大の点推定値を示した介入 | SMD(95%信用区間) |
|---|---|---|
| エリート選手 | イメージ | −0.88(−1.84〜0.14) |
| 準エリート選手 | MAC | −1.37(−3.11〜−0.17) |
| ジュニア選手 | バイオフィードバック | −1.07(−2.26〜0) |
| 認知的不安 | リラクセーション | −1.54(−3.31〜0.21) |
| 身体的不安 | MAC | −1.24(−1.57〜−0.90) |
信用区間を見ると、エリート選手のイメージ、認知的不安のリラクセーション、ジュニア選手のバイオフィードバックはいずれも上限がゼロを含むか、ゼロに接しています。著者ら自身が「信用区間が広く、いくつかの介入ノードでデータが限られているため、相当の不確実性が残る」と明記しています。
この論文からは「MAC が最も効く」ではなく、「現時点では介入間の優劣を決めるだけのデータが揃っていない」と読むほうが妥当です。
この領域に共通する問題
ここまでの整理から、繰り返し現れる4つの構造が見えてきます。
1. 主観的アウトカムの比率が高い。自己申告の自信、不安、満足度は介入への期待によって動きやすく、盲検化も困難です。Reinebo らがこれを除くと効果が消えたのは偶然ではありません。
2. 無作為化されていない研究が多い。同じ感度分析で、これも除外の対象になりました。Wang らの第三世代介入でも、同じ操作で効果が消えています。
3. 出版バイアスの補正で効果量が下がる。24年越しの再現研究で r = 0.131。左手握りも Trim and Fill で頑健性を失いました。
4. 効く条件が狭い。クローズドスキル、細かい運動課題、新規の課題——効果が確認されているのはこうした条件下であり、実際の競技場面の多くはこれに当てはまりません。
とはいえ、これは「心理的介入に効果がない」という結論ではありません。効果が存在しないことを示した研究があるわけではなく、効果があると言い切るだけの頑健な証拠がまだ揃っていない——という状態です。この2つはまったく別のことです。
また、不安アウトカムに関しては下位群解析に対して頑健な効果が報告されています。「本番で不安が下がる」ことと「本番で成績が上がる」ことでは、証拠の強さが違うという理解が実情に近いと言えます。
いま言えること
- 30のメタ分析を束ねると、成績を高める側の要因は d = 0.51(中程度)
- しかし111研究を網羅したレビューの感度分析では、非無作為化試験と主観的アウトカムを除くと、すべての統合で効果が有意でなくなった
- 同じ現象がエリート選手のウェルビーイング(準実験研究を除くと消失)と左手握り(出版バイアス補正で頑健性喪失)でも観察されている
- 出版バイアスを補正した再現研究では、メンタルプラクティスの効果は r = 0.131 と小さい
- イメージ単独(g = 0.298)より、身体練習と組み合わせたほう(g = 0.579)が効果的
- セルフトークは、細かい運動を要する課題と、新規の課題で効果が大きい。指示的セルフトークが細かい課題に向く
- 技法を組み合わせたほうが単独より効果が高いという報告は、初心者・熟練者の両方で一貫している
- 改善する指標は限定的。テニスのサーブでは正確性と技術は改善したが速度は変わらなかった(確実性は低い〜非常に低い)。ただし初心者では速度も改善した
- クローズドスキル競技のほうが効果が大きく一貫している
- 目標設定、ニューロフィードバック、再評価の手がかりは、プレッシャー下の成績低下を防ぐという目的に関しては効果なしと報告されている
- 二重課題は、本番で用いると有益だが、訓練中に用いると有害
- 競技不安への効果(g = −0.42)は、成績への効果と違って下位群解析に対して頑健
実務的な含意として比較的確からしいのは、次の3点です。
心理的な技法を「身体練習の代わり」ではなく「上乗せ」として使うこと。複数の統合が同じ方向を示しています。
単独の技法より、組み合わせること。初心者でも熟練者でも、組み合わせ条件が最も高い効果を示しています。
技法そのものを練習の対象にすること。訓練を含む介入のほうが、指示だけの介入より効果が大きいという所見があります。
一方、効果量の絶対値については慎重であるべきです。報告されている中程度の効果は、研究デザインの質で選別すると残らない可能性が、複数の独立したレビューから繰り返し指摘されています。
出典
- Lochbaum M, et al. Sport psychology and performance meta-analyses: A systematic review of the literature. PLoS ONE. 2022;17(2):e0263408. DOI: 10.1371/journal.pone.0263408
- Reinebo G, Alfonsson S, Jansson-Fröjmark M, Rozental A, Lundgren T. Effects of Psychological Interventions to Enhance Athletic Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2024;54(2):347–373. DOI: 10.1007/s40279-023-01931-z
- Wang W, et al. Psychological Interventions to Improve Elite Athlete Mental Wellbeing: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. 2025. DOI: 10.1007/s40279-024-02173-3
- Luan M, et al. A Systematic Meta-Analysis of the Effectiveness of (Left) Hand Contractions on Motor Performance. Sport, Exercise, and Performance Psychology. 2024. DOI: 10.1037/spy0000353
- Simonsmeier BA, Andronie M, Buecker S, Frank C. The effects of imagery interventions in sports: a meta-analysis. International Review of Sport and Exercise Psychology. 2021;14(1):186–207. DOI: 10.1080/1750984X.2020.1780627
- Toth AJ, et al. Does mental practice still enhance performance? A 24 Year follow-up and meta-analytic replication and extension. Psychology of Sport and Exercise. 2020;48:101672.
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- Deng N, et al. Does Motor Imagery Training Improve Service Performance in Tennis Players? A Systematic Review and Meta-Analysis. Behavioral Sciences. 2024;14(3):207.
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- Hatzigeorgiadis A, et al. Mechanisms underlying the self-talk–performance relationship: The effects of motivational self-talk on self-confidence and anxiety. Psychology of Sport and Exercise. 2009;10(1):186–192. DOI: 10.1016/j.psychsport.2008.07.009
- Hidayat Y, et al. The effect of the combined self-talk and mental imagery program on the badminton motor skills and self-confidence of youth beginner student-athletes. BMC Psychology. 2023;11:35. DOI: 10.1186/s40359-023-01073-x
- Hidayat Y, et al. The Influence of Self-Talk on Learning Achievement and Self Confidence. Asian Social Science. 2014;10(5):186. DOI: 10.5539/ass.v10n5p186
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- Robin N, Dominique L, Guillet-Descas E, Hue O. Beneficial Effects of Motor Imagery and Self-Talk on Service Performance in Skilled Tennis Players. Frontiers in Psychology. 2022;13:778468. DOI: 10.3389/fpsyg.2022.778468
- Liu Y, et al. The Effects of Imagery Practice on Athletes’ Performance: A Multilevel Meta-Analysis with Systematic Review. Behavioral Sciences. 2025;15(5):685.
- Zeng Z, et al. Counteracting choking under pressure in sport: A meta-analysis of interventions. Psychology of Sport and Exercise. 2026;79:103130. DOI: 10.1016/j.psychsport.2026.103130
- Gröpel P, et al. Choking interventions in sports: A systematic review. International Review of Sport and Exercise Psychology. 2019;12(1):176–201. DOI: 10.1080/1750984X.2017.1408134
- Ong N, et al. Effects of psychological interventions on competitive anxiety in sport: A meta-analysis. Psychology of Sport and Exercise. 2021;52:101836. DOI: 10.1016/j.psychsport.2020.101836
- Li L, et al. The Effect of Different Psychological Interventions on Athletes’ Competitive Anxiety: A Systematic Review and Bayesian Network Meta-Analysis. Sports Medicine – Open. 2026;12. DOI: 10.1186/s40798-026-01007-y
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。不安や抑うつが日常生活に支障をきたしている場合は、心理的スキル訓練ではなく医療機関にご相談ください。






