同じトレーニングを同じ期間、同じ強度で行っても、得られる結果は人によって大きく違います。この観察自体は現場では常識に近いものですが、それがどの程度の大きさで、何によって決まり、そもそも「まったく反応しない人」が存在するのかどうかは、運動生理学のなかで最も長く議論されてきた問いのひとつです。

結論を先に述べると、反応の大きさに個人差があることは確立している。しかし「非反応者」という固定的な属性が存在するかどうかは、いまも決着していない——これが現時点での最も正確な要約です。同じ人でも、運動の量を増やすと反応が現れ、種目を変えると反応が現れ、別の指標で見ると反応が現れる。そうした報告が積み上がっているためです。

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出発点:481名を20週間訓練した HERITAGE Family Study

この領域の基礎データを作ったのは、米国・カナダの5つの研究機関が参加した HERITAGE Family Study です。二世代にわたる家族単位で座位中心の成人を募り、全員にまったく同じ自転車エルゴメータの訓練プログラムを20週間、監督下で実施しました。

Bouchard C, An P, Rice T, Skinner JS, Wilmore JH, Gagnon J, Pérusse L, Leon AS, Rao DC. Familial aggregation of VO2max response to exercise training: results from the HERITAGE Family Study. Journal of Applied Physiology. 1999;87(3):1003–1008.

98家族・481名の白人成人が対象でした。最大酸素摂取量(VO2max)は訓練の前後にそれぞれ2回ずつ測定されています。1回ではなく2回測るのは、測定そのもののばらつきを見積もるためです。

平均の増加はおよそ400 mL/分でした。しかし著者らが強調したのは平均ではなく、その周りの散らばりです。ほとんど、あるいはまったく増えなかった者がいる一方で、1.0 L/分を超えて増えた者もいました。同じ監督下で、同じ処方を、同じ期間受けてです。

散らばりは家族単位でまとまっていた

この研究の独自性は、対象が家族だったことにあります。分散分析の結果、VO2max の反応のばらつきは家族間のほうが家族内より2.5倍大きいという構造を示しました。同じ家族のメンバーは似たような反応を示し、別の家族とは違う、ということです。

モデル適合の手続きから推定された遺伝率(heritability)は、年齢と性別で調整したうえで最大47%でした。つまり訓練への反応しやすさの半分近くが、家族性の——その多くは遺伝的な——要因で説明されることになります。

年齢・性別・人種・開始時の体力では説明できない

では、反応の良し悪しは誰でも見分けられる特徴と結びついているのでしょうか。同じコホートで検討されています。

Skinner JS, Jaskólski A, Jaskólska A, Krasnoff J, Gagnon J, Leon AS, Rao DC, Wilmore JH, Bouchard C. Age, sex, race, initial fitness, and response to training: the HERITAGE Family Study. Journal of Applied Physiology. 2001;90(5):1770–1776.

白人435名・黒人198名(男性287名・女性346名)、17歳から65歳を対象とした解析です。結果は次のとおりでした。

  • VO2max はすべての群で有意に増加した
  • 男女差は絶対値の変化では見られなかった。女性は開始時の値が低く、相対的な増加率は大きかった
  • 黒人は開始時の値が低かったが、反応の大きさは同程度だった
  • 高齢者は絶対値の増加が小さかったが、変化率は同程度だった
  • 開始時の VO2max と変化量の相関は有意でなかった(変化率とは有意)

著者らの結論は明快です。「高反応者・中反応者・低反応者は、すべての年齢層、両性、両人種、あらゆる開始時体力の水準に存在した」。つまり、見た目や属性から反応性を予測することはできません。

遺伝子はどこまで説明するか

遺伝率47%という推定を受けて、実際の塩基配列の違いを探索する研究が行われました。

Bouchard C, Sarzynski MA, Rice TK, Kraus WE, Church TS, Sung YJ, Rao DC, Rankinen T. Genomic predictors of the maximal O2 uptake response to standardized exercise training programs. Journal of Applied Physiology. 2011;110(5):1160–1170.

324,611個の一塩基多型(SNP)を対象としたゲノムワイド関連解析から、段階的重回帰によって21個のSNPのパネルが選び出され、これが VO2max の訓練反応の分散の49%を説明しました。

21個のSNPのうち有利な対立遺伝子の数VO2max の平均増加
9個以下221 mL/分
19個以上604 mL/分

およそ3倍の差です。最も強い関連を示したのは長鎖アシルCoA合成酵素1(ACSL1)遺伝子内の rs6552828 で、これ単独で反応の約6%を説明しました。

ただし、この種の予測モデルには注意が必要です。同一コホートで変数を選んで同一コホートで検証すると、説明率は過大に出ます。著者ら自身が大規模な再現研究の必要性を述べており、21個のうち一部は別コホート(STRRIDE、DREW、HERITAGE の黒人集団)で再現されたものの、すべてではありません。

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反論:「非反応者」は訓練量を増やせば消える

ここまでの議論は、反応性が個人に内在する固定的な性質であることを前提にしています。この前提を正面から検証した研究があります。

Montero D, Lundby C. Refuting the myth of non-response to exercise training: ‘non-responders’ do respond to higher dose of training. The Journal of Physiology. 2017;595(11):3377–3387.

健康な成人78名を5群に分け、週1回から週5回まで(それぞれ60分)、それ以外は同一の6週間の持久性トレーニングを行わせました。非反応は「変化が測定の典型誤差(±3.96%)の範囲内に収まること」と定義されています。

第1期の結果は、訓練量が多い群ほど非反応者の割合が段階的に低下するというものでした。そして、この時点で非反応者に分類された参加者に対し、週2回分(120分)を上乗せした同じ6週間の第2期を実施したところ——

非反応は例外なく消失した(universally abolished)。改善の大きさは主にヘモグロビン量の変化で説明された。

著者らの結論は「適切な運動刺激を与えれば、健康な個人において例外なく心肺体力の改善の余地は存在する」というものです。もしこれが正しければ、「非反応者」という言葉は個人の属性ではなく、与えられた刺激がその人にとって不足していた状態を指すことになります。

種目を変えた場合も同じことが起きる

用量ではなく様式を変えた検証もあります。

Bonafiglia JT, Rotundo MP, Whittall JP, Scribbans TD, Graham RB, Gurd BJ. Inter-Individual Variability in the Adaptive Responses to Endurance and Sprint Interval Training: A Randomized Crossover Study. PLoS ONE. 2016;11(12):e0167790.

21名が、持久性トレーニング(END)とスプリントインターバル(SIT)の両方を、3か月の洗い出し期間をはさんで無作為な順序で3週間ずつ行いました。同じ人が両方を経験する交差デザインです。

VO2peak、乳酸閾値、最大下心拍のいずれについても、END と SIT の個人内の変化量のあいだに有意な正の相関はありませんでした。ある様式で反応が小さかった人が、別の様式でも小さいとは限らなかったということです。そして——

両方の様式を経験した場合、すべての参加者が少なくとも1つの変数で反応を示した。

そもそも「個人差」と「測定誤差」は分けられるのか

ここは方法論の核心です。訓練前と訓練後を1回ずつ測って差を取ると、その差には真の適応と測定のばらつきが混ざります。個人単位の反応を論じるには、この2つを分離しなければなりません。

Hecksteden A, Pitsch W, Rosenberger F, Meyer T. Repeated testing for the assessment of individual response to exercise training. Journal of Applied Physiology. 2018;124(6):1499–1515.

著者らは、健康な非鍛錬者36名(平均46歳)に1年間の歩行・ジョギング(週3回45分、心拍予備能の60%)を行わせ、3・6・9か月時点でも VO2max を追加測定する設計を採りました。反復測定によって、各個人の測定のばらつきを推定しようという試みです。

この論文が冒頭で述べている問題認識が重要です。「ランダム誤差と真の個人間差のそれぞれの寄与、および非反応者の相対的な頻度については、議論がある」。加えて、非反応の定義そのものが研究間で著しく不統一であることも指摘されています。

実際、定義次第で結論は変わります。時間効率型のスプリントインターバル(REHIT)を6週間行った117名のプール解析では、個人反応の標準偏差が 2.39 mL·kg−1·min−1 で、これは測定の技術的・生物学的・ランダムな変動を超えていました(Metcalfe ら, 2021, Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism)。つまりこの研究では、真の個人差が存在すると結論されています。

この論争を受けて、国際的な専門家グループが合意声明をまとめています。

Ross R, Goodpaster BH, Koch LG, et al. Precision exercise medicine: understanding exercise response variability. British Journal of Sports Medicine. 2019;53(18):1141–1153.

声明は、ヒトの双生児・家族研究と、齧歯類の選択交配実験の双方から「与えられた運動プログラムに対する反応には相当な個人間差があり、遺伝的な寄与が存在する」ことを認めたうえで、研究デザインと統計モデルの選び方——複数回の事前事後測定、交差デザイン、反復測定——を整理しています。個人差の存在自体は合意されているが、その測り方はまだ標準化されていない、というのが現在地です。

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指標によって「反応の良し悪し」は揃わない

もうひとつ、実務上重要な知見があります。ある人が「反応が良い人」だとして、それはあらゆる指標について良いという意味なのでしょうか。

Barber JL, Zhang S, Ross R, et al. Regular exercise and patterns of response across multiple cardiometabolic traits: the HERITAGE family study. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(2):95–100.

HERITAGE の564名について、20週間の訓練前後で7つの心血管代謝指標——VO2max、体脂肪率、内臓脂肪、空腹時インスリン、HDLコレステロール、小型LDL粒子、炎症マーカー GlycA——の変化を調べ、各指標について上位20パーセンタイルを「高反応」、下位20パーセンタイルを「低反応」と定義しました。

パターン該当した割合
7指標すべてで高反応、またはすべてで低反応564名中1名
高反応と低反応の両方を持つ約49%
高反応はあるが低反応はない約24%
低反応はあるが高反応はない約24%
すべて平均的約2.5%

著者らの結論は「反応性は同じ個人のなかで一貫して集積しなかった」というものです。そして次の一文が続きます。「運動処方の遵守が健康上の便益をもたらすことは知られているが、標的とした危険因子が改善するとは限らない。」

処方の仕方が、ばらつきの一部を作っている

ここまでは生物学的な要因の話でした。しかし、ばらつきには方法論的な要因も混ざっています。

Meyler S, Bottoms L, Muniz-Pumares D. Biological and methodological factors affecting VO2max response variability to endurance training and the influence of exercise intensity prescription. Experimental Physiology. 2021;106(7):1410–1424.

この総説が指摘するのは、強度の処方方法そのものが反応率に影響するという点です。最大値に対する割合(たとえば最大心拍の70%)で処方すると、同じ「70%」でも人によって生理学的な負荷は異なります。一方、換気閾値や乳酸閾値といった生理学的な閾値を基準に処方すると、参加者間の急性反応が均一になり、それを反復した結果として慢性適応のばらつきも小さくなると報告されています。

実際、6週間の高強度インターバルと中強度持続を仕事量を揃えて比較した試験では、中強度群で約50%が「非反応者」または「判定不能」に分類されたのに対し、高強度群では非反応者が1人も出ませんでした(Maturana ら, 2021, European Journal of Applied Physiology、42名)。刺激が弱いほど、個人差は大きく見えます。

いま言えること

整理すると、次のようになります。

  • 反応の大きさに大きな個人差があること自体は、複数の独立したコホートで確認されている。HERITAGE の481名では、ほぼゼロから1.0 L/分超までの幅があった
  • 家族性・遺伝的な寄与は実在する。遺伝率の推定は47%、21個のSNPで分散の49%という報告がある。ただし再現は部分的
  • 年齢・性別・人種・開始時体力から反応性を予測することはできない。どの層にも高反応者と低反応者がいる
  • 「非反応者」が固定的な属性かどうかは決着していない。用量を増やせば消えたという報告と、測定誤差を超える真の個人差があるという報告が併存している
  • 反応性は指標をまたいで一貫しない。7指標すべてで一貫した人は564名中1名だった
  • ばらつきの一部は処方方法に由来する。閾値基準の強度処方は、ばらつきを小さくする方向に働く

実務的な含意はひとつに収束します。ある指標が動かないことは、その人が運動に反応しないことを意味しない。量を増やす、様式を変える、別の指標を見る——この3つのいずれかで状況が変わる可能性が、それぞれ実験的に示されています。逆に、あらかじめ「自分は反応しにくい体質だ」と判断できる材料は、現時点では存在しません。

出典

  1. Bouchard C, An P, Rice T, Skinner JS, Wilmore JH, Gagnon J, Pérusse L, Leon AS, Rao DC. Familial aggregation of VO2max response to exercise training: results from the HERITAGE Family Study. Journal of Applied Physiology. 1999;87(3):1003–1008.
  2. Skinner JS, Jaskólski A, Jaskólska A, Krasnoff J, Gagnon J, Leon AS, Rao DC, Wilmore JH, Bouchard C. Age, sex, race, initial fitness, and response to training: the HERITAGE Family Study. Journal of Applied Physiology. 2001;90(5):1770–1776.
  3. Bouchard C, Sarzynski MA, Rice TK, Kraus WE, Church TS, Sung YJ, Rao DC, Rankinen T. Genomic predictors of the maximal O2 uptake response to standardized exercise training programs. Journal of Applied Physiology. 2011;110(5):1160–1170.
  4. Montero D, Lundby C. Refuting the myth of non-response to exercise training: ‘non-responders’ do respond to higher dose of training. The Journal of Physiology. 2017;595(11):3377–3387.
  5. Bonafiglia JT, Rotundo MP, Whittall JP, Scribbans TD, Graham RB, Gurd BJ. Inter-Individual Variability in the Adaptive Responses to Endurance and Sprint Interval Training: A Randomized Crossover Study. PLoS ONE. 2016;11(12):e0167790.
  6. Hecksteden A, Pitsch W, Rosenberger F, Meyer T. Repeated testing for the assessment of individual response to exercise training. Journal of Applied Physiology. 2018;124(6):1499–1515.
  7. Metcalfe RS, Atef H, Mackintosh K, McNarry M, Ryan G, Hallsworth K, Avery L, Thom G, Ruddock A, Vollaard NBJ. Heterogeneity and incidence of non-response for changes in cardiorespiratory fitness following time-efficient sprint interval exercise training. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2021;46(4):380–388.
  8. Ross R, Goodpaster BH, Koch LG, et al. Precision exercise medicine: understanding exercise response variability. British Journal of Sports Medicine. 2019;53(18):1141–1153.
  9. Barber JL, Zhang S, Ross R, et al. Regular exercise and patterns of response across multiple cardiometabolic traits: the HERITAGE family study. British Journal of Sports Medicine. 2022;56(2):95–100.
  10. Meyler S, Bottoms L, Muniz-Pumares D. Biological and methodological factors affecting VO2max response variability to endurance training and the influence of exercise intensity prescription. Experimental Physiology. 2021;106(7):1410–1424.
  11. Maturana FM, Schellhorn P, Erz G, Burgstahler C, Widmann M, Munz B, Soares RN, Murias JM, Thiel A, Nieß AM. Individual cardiovascular responsiveness to work-matched exercise within the moderate- and severe-intensity domains. European Journal of Applied Physiology. 2021;121(7):2039–2059.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動の可否や強度、持病がある場合の注意については医療機関にご相談ください。

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