ヨガの歴史と変遷

1 ヨガの歴史

ヨガは4500年前ころ、哲学・儀式・祈る・奉仕活動として行われ、身体トレーニングは伴わなかったようです。やがて瞑想中心のラージャ・ヨガが生まれます。パタンジャリはヨガの手引書を初めて著わし、瞑想とヨガの稽古について述べている。

瞑想する際の座法「結跏趺坐」が日本において、座禅の際の座法として今も行われている。その姿勢で「心身一体」が訪れるのを待つためには、脊柱を整え、腰、膝足首の関節が柔軟で筋力がなければ難しいことは想像に難くない。長く座り続けるための筋力を整えるために、簡単なアーサナ(坐法。ポーズ。座る動作との混合をさけるために、今後アーサナを使用する。)があったようであるが、具体的には示されいません。

さらに、時代がすすみ、動くヨガ(図中下段)、ハタ・ヨガといわれる身体トレーニングが登場する。現在ではハタ・ヨガの中でもさらに変化し、アシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨガやアイアンガー・ヨガ、イン・ヨガなど、さまざまなスタイルがある。そして、ヨガが生まれた頃の哲学としてのヨガ、祈祷、奉仕活動などのヨガをはじめ、下図に示したヨガのスタイルはすべて現存し、実施されています。

立川発のイタリア溶岩ホットヨガ&ピラティス『オンザショア』オンザショア
ヨガの歴史

2 ヨガの内容と指針の変遷

下の図は、ヨガの内容と指針を示しています。ヨガの根幹をなす指針は、パタンジャリによってまとめられている「ヨーガ・スートラ」の中の八支則が有名です(下の図中左)。8段階に分けられたトレーニング方法のうち、身体部門は3から6番目と考えてよいだろう。さらに時代が進み、身体部門だけのハタ・ヨガが登場するが、その指針となるのがハタ・ヨーガ・プラディピカーで、4つの内容で示されている。現在では、八支則を基本にしてハタ・ヨガの4つの内容を実施することが多い。現在の内容(図の右)には、具体的な運動の特徴も示している。

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ヨガの内容と指針

上の図は、ヨガのトレーニングプログラムと古代から現代までのヨガの身体トレーニングとプログラムの内容についてその変遷を示している。

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ヨガの八支則について

ところで、ヨガの八支則は、「ヤマ」、「ニヤマ」、「アーサナ」、「プラーナヤーマ」、「プラティヤハーラ」、「ダーラナ」、「ディアーナ」、「サマーディ」と8段階に分けられていますが、それぞれが8本の枝のように支え合って成り立っているといわれています。

ヤマ Yama(禁戒)

日常生活の中で、他人や物に対して慎むべき5つの心得。環境や人間が良い関係を保つために自制すべきことが記されています。

アヒムサAhimsa

非暴力、非殺生。肉体的な暴力だけでなく、精神的な暴力、言葉の暴力も振るってはいけないとされています。他人だけでなく、自分自身に対しても同様で、何事に対しても思慮深くあることが大切。

サティヤ Satya 

正直、誠実であること。自分の利益を守るためや、見栄を張って嘘をつかないこと。心穏やかに、自分に正直に生きていれば嘘をつく必要もありません。

アステーヤ Asteya 

盗まないこと。他人の所有物を奪わないこと。また、独り占めしたり、欲張って必要以上に所有しようとしないこと。

ブラーマチャリヤ Brahmacharya

性欲や物欲、食欲、名誉欲などのあらゆる欲望と快楽に惑わされ、エネルギーを消耗しないようにすること。

アパリグラハ Aparigraha

執着しないこと。次から次に沸き起こってくる欲望に翻弄されず、何かを必要以上に所有しないこと。必要以上に所有し執着がわくことで、失うことへの恐怖や奪われるかもしれないという疑い、他人への嫉妬や怒りも自分の中に沸き起こってくるといわれて言われています。

3 ヨガのプログラムの変遷について

さて、アーサナは、最初は座る形であったようですが、動物や自然界の物など視覚的にとらえられる形で、しかし、ほぼ日常生活では行わない姿勢の形をとることが多く、普段の生活では全く使用しない筋肉や部位を使用します。その数はハタ・ヨーガ・プラディピカーに示された15から、現代では、無数と言われるほどに増加しています。

運動の種類は、移動運動を伴わないことから柔軟性・筋力・調整力がほとんどであったと考えられるが、現代では、速い動作で動くような工夫がなされ、有酸素的な要素も加わっている。運動の強度では、古代においては長時間の結跏趺坐をとれるだけの筋力・柔軟性さえ得られるだけの強さで良かったようであるが、アーサナの数が増え保持時間が長く回数が多くなるとともに、強度は増加していると考えられる。

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ヨガのプログラム内容の変遷

1回あたりの運動時間については不明である。約束事はなかったようだ。ひとつのアーサナの保持時間は近代になって3~5呼吸程度になっている。1呼吸約6秒と言われ、5呼吸は30秒ほどになる。

ヨギック・アーツ創始者のダンカン・ウォン氏によれば、1アーサナあたりの呼吸は様々であるが、体を温めたい場合や冬季は5~8呼吸と多くなる。しかし、実践ではそれ以上の場合もあり、筋への負荷、熱の産出など、指導者がその時の目的に合わせて選択し、実施されている。

イン・ヨーガでは、1アーサナ3~5分と長く保持するのが特徴で、筋や腱により強い負荷がかかる。頻度については、できれば毎日行う。また、アーサナは胴体をねじること、頭と足が逆転するなどもあることから空腹状態で実施することが好ましく、この件については古代から変化していない。

1回のプログラムの長さは様々で、5分から2時間程度である。プログラムの構成は、マントラから始まる。呼吸法やバンダの取り方を練習し、アーサナを行う。練習の順序や、アーサナの組み方は指導者により様々であるが、最後にシャバ・アーサナ(死体のアーサナ)と呼ばれる仰臥してリラックスするアーサナをとる。

さらに、座法(結跏趺坐、困難な場合は簡略形)をとり、瞑想する。指導者によるヨガ哲学の短い講和がある。そしてマントラを唱え、プログラムを終了する。

現代ではヨガは大衆化し、ヨガ道場、スポーツジム、あるいは自宅でと、誰でもどこでも実施されている。スポーツジムで行われる場合、フィットネス運動の要素が大きく取り上げられることが多く、万人向けにするために宗教的なイメージを取り払い、マントラを唱えないことが多い。

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マントラとヨガ

同じ理由から八支則の道徳部門やヨガ哲学については触れなくなっている場合も多いようだ。ヨガとはいうものの、内容は様々である。表には示していないが、古代においてヨガを実施していたのは裕福な階層の人々、あるいは修行者であり、一般の人は行っていなかった。

師と修行者との1対1、口伝を用いた密教スタイルでプログラムが伝えてきたようだ。大衆化されたのはこの50年ほどであり、それに伴い1人の師が多人数を指導する現在のスタイルへと変化してきている。

アーサナの実施方法は、1~数種続けて実施した後、休息のアーサナをとり、また数種アーサナを実施して休息のアーサナという進行が多い。現代では、ビンヤーサと呼ばれる流れるようなアーサナの連続を行うヨーガが増えてきた。「太陽礼拝」と言われる1つのビンヤーサは特に有名である。アシュタンガ・ヴィンヤーサ・ヨーガが有名であるが、他にもジバムクティ・ヨーガ、ヨギック・アーツなども知られている。

アーサナの取り方では、現代においてアイアンガーが機能解剖学やバイオメカニクス理論にもとづいて厳密に実施者の骨格と筋の働きをとらえ、骨盤、手や足の位置など確認の上、筋肉の伸ばし方に注意を払いながらアーサナをとることを示し、安全でより大きな負荷を与えることが可能となった。

呼吸はアーサナが取れ、静止して深い呼吸を行うのが基本であったが、ビンヤーサ・ヨーガでは動きが連続していることから、動きながらの呼吸についても示されている。吸いながら伸び、吐きながら屈するというように。また、速い動作の時は速い呼吸、ゆっくりとした動作の時にはゆっくりと呼吸を行い、動きと呼吸を連動させている。

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アーサナ

アーサナ中は、呼吸法とバンダ(締め付け)を行いながら姿勢を整え、深部筋肉群を収縮させ、表層筋を開放して動作を行う工夫がなされている。バンダは、身体の正中線上にあるチャクラと言われる部分を収縮させるのであるが、現在では手のひらや足の裏にもチャクラの存在を想像しながらバンダを実施する。

このバンダを意識することで、今まで使っていなかった筋肉を使うように働きかけることができる。チャクラの1つ、喉を締め呼吸をすると吸う時も吐く時も摩擦音がする。スワンソンは「映画スターウォーズの登場人物、ダースベイダーの呼吸」のようにと表現しており、ウジャイ(勝利)の呼吸と呼ばれている。

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ダースベイダーの呼吸

運動中の意識の集中は、作動している部分、呼吸、身体の位置、目の方向などに向けることで心と体を一体化させている。そうすることで、他のことを考える余地を与えない。

また、アーサナ保持時間が長い場合、意識は身体の中を内観する。実践中はアーサナ中の自分を内観しやすくするために「自分を一歩引いたところから眺めてみる」、「湧き上がってくる感情を抑えるのではなく、ただ眺めるようにする」、「吸いながら自分が満たされ、吐きながら浄化する」、「不要な力は手放し、最小限の力で最大の効果を生む」などと指導者が言葉で指導する。

ヨガの実施中は、指導者の声や音楽以外は、呼吸の音がするだけで歓声があがったり、掛け声があがったりすることはない。静かに自分とずっと向き合う。このように自分の意識と身体への集中が高まっていくとアーサナ中にも瞑想状態が生まれる。その他、現代になって滑らない個人用のマット上で実施することや、補助具を利用して安全性や運動の効果を高める工夫がアイアンガーによって考案された。

また、アジャストメントと呼ばれる補助者(指導者)によって体の正しいアライメントを整え、圧を加えることで、より強い筋肉の伸展や収縮を行い、自力では不可能だった運動を体感し、それを次の目標にすることを可能としている。また、実施環境は、古代や近代では言及されていないが、現代では人工的に高温・多湿化下で実施する傾向がみられるようになった。

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アジャストメントの効果

ヨガの身体トレーニングとプログラムと内容の変遷についてお話ししてきましたが、ヨガの身体トレーニングはアーサナ数の増加に加え、身体操作の方法、プログラムの展開方法の工夫、補助法、実施環境すべてにおいて、時代を下り現在に近づくほど、機能解剖学、バイオメカニクスや運動生理学など運動科学を背景に増加・強化・厳密化傾向が見られます。

この運動量の増加は、人間が心身一体に至るには、身体全体を使用し「ある運動量」を確保することが条件の1つであり、その活動量を確保するための補足が現代のスタイルではないかと考えられます。

禅の修行僧は、古代のヨーガの姿に最も近いといわれているが、座禅以外の活動はほとんど身体活動で過ごしていることからも裏付けられよう。したがって、ヨガの身体トレーニングの増加・強化・厳密化による運動量の増加は、現代人の運動不足を反映しているとも考えられます。

4 ヨガの運動量

ところで、心身一体となるトレーニング量とはどの程度であろうか。健康づくりのための運動基準2006では、健康づくりのために1日当たり8,000~10,000歩、運動を実施する人では1時間の速歩を目安に運動すること奨励している。

それよりも強い強度のジョギングやマラソンのような有酸素運動中に β エンドルフィンが分泌され、爽快感を得「ジョガ―ズ・ハイ」と呼ばれる快感に満たされることが知られているが、その状態を心身一体とは呼ばない。

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ヨガの運動量

またそのような状態が来る前に心身一体となったということもないであろう。とすれば、心身一体となるための運動量は、現在の健康づくりのための運動量よりも大きな強度であることが推測できる。禅修行僧生活は疲労と睡魔との闘いと言われることからも、押してはかるべきだろう。

また、示唆されることは、心と体を一体としてとらえるには、運動量を確保し、全身くまなく使用すること、動作中の意識の向け方に対する言葉がけ、呼吸法とバンダによる身体の使い方の指導が挙げられる。

特に動作中の意識の向け方では、日ごろ意識されない部分を機能解剖学の知識を合わせて実施者に視覚化させるとともに、運動中の身体の各部位の位置や力の配分を意識させるような指導の工夫が重要であると考えられる。また、指導者の運動者への身体的サポートにより、未知なる次の課題を体感させることで興味や可能性を引き出し、課題への意欲につながる可能性もあるだろう。